《まぼろし亭》の料理
「ようこそ、《まぼろし亭》へ。ご予約のお名前を頂戴できますか?」
「リーズヘッグだ」
「かしこまりました。リーズヘッグ様とお連れ様の14名ですね。2階のお部屋へどうぞ」
俺達は大きなお店に入り、階段を登った。
突き当たりの部屋に通される。
中は広く、24人がけのテーブルが中央にある。
俺達は順番に着席した。
「お酒は何名で飲まれますか?」
「ユーゴ、リリアの仲間達。酒は飲むか?」
「ええ、頂きます」
「わたし達も飲むわぁ……」
「では、14名で頼む」
「かしこまりました」
その後、お茶と果実酒が速やかに配膳された。
「お料理は午後5時から、始めさせて頂きます。それまでご歓談下さい」
リーズヘッグは酒杯を掲げた。
「みんな、お疲れ様。今日は《まぼろし亭》の料理で、日頃の疲れを癒やしてくれ。女神アウローシアの加護に!」
「乾杯!」
みんなで乾杯をして、果実酒を飲み交わす。
今日は梅干しのごとき干しワズルで割っているようだ。
「リリアはお酒、強いの?」
「仲間内では、弱い方。でも、1本位なら、平気」
「俺は2本が限界かな。俺もそんなに強くないよ」
リリアは対面のユーゴに話しかけた。
「ユーゴ。改めて自己紹介するね。わたしはキョウスケの婚約者のリリア。どうぞ宜しくお願いします」
「ご丁寧にどうも。俺はユーゴ。アディスの親友です。キョウスケの料理は非常に美味だと聞いておりますよ。才能ある料理人は奪い合いだと聞きます。頑張って下さいね」
「ん。決して負けない。激励ありがとう」
リリアは闘志に燃えている。
そこで、午後5時の鐘が鳴った。
扉が開き、前菜が配膳されていく。
「前菜は、ヨノピネとテテトの和え物でございます。ごゆっくりお召し上がり下さい」
ホタテのごときテテトが、真っ黒いペーストで和えられている。
食べてみると、磯の香りが豊かで、テテトと合っている。
ヨノピネとは、海苔のごとき食材であったのだ。
出汁も丁度良い濃さで、食べにくい事は全くない。
「これは美味しいね」
「ん。テテトが甘めで、好きな味」
リリアも気に入ったようだ。
「3種の野菜の乳脂焼きでございます。ごゆっくりお楽しみ下さい」
野菜はニンジンのごときメイリグと、ジャガイモのごときフォンディと、アスパラガスのごときジェランが見えた。
俺はジャガイモのごときフォンディから頂いてみる事にした。
蒸し野菜だ、と思ったけれど、揚げられたフォンディも見える。
しかも、野菜の奥に茶色いペーストが隠れていた。
少しつけて、野菜を食すると、辛みはあるが、すうっと辛みは抜けて野菜の甘さが残る。
蒸し野菜と揚げ野菜を乳脂で炒めているようだけれど、このペーストを付けるともっと美味しい。
野菜の食感の変化も、好ましい限りだ。
「とても美味しい。リリアは?」
「辛い味付けが、わたしの好みだった」
リリアもご満悦のようだ。
「お次は、サフア料理でございます。フランスパンに具材を乗せてお召し上がり下さい」
斜めにスライスされたフランスパンが2枚と、具材の皿が置かれる。
フランスパンには乳脂が塗られているようだ。
具材はトマトのごときイノッサと、何かである。
俺は具材をひと掬い乗っけて、食べてみた。
はっきりとした酸味と、まろやかな甘みが感じられる。
甘さは果実で、酸味はワリアの酢だ。
具材はジャガイモのごときフォンディと、トマトのごときイノッサと、ホウレンソウのごときテーペである。
とても食べやすい味わいで、美味しい。
「これも美味しい。この店の料理は好きかもしれない」
「ん。美味しいね。次の料理も楽しみ」
リリアも笑顔で食べている。
俺も酒を楽しみながら、ゆっくり食べた。
「お次は汁物料理でございます。メイリグと兎肉の団子汁です。上に辛い味付けのマロイモがかけられております。煮汁に少量ずつ溶かしてお楽しみ下さい」
まず、見た目は普通の団子汁である。
ヤマイモのごときマロイモのクリームがかけられている部分だけ、黒ずんでいる。
俺はスープだけ飲んでみた。
これは、リューカの骨から取った出汁の味わいである。
これだけでも、十分に美味しい。
そこにマロイモのクリームを少量溶かして飲んでみる。
すると香草の辛みが舌に跳ね上がり、リューカの出汁の旨さと相まって、結構美味しい。
具材のメイリグは甘く煮付けられており、辛いスープと調和している。
肉団子は、タマネギのごときカペラとキャベツのごときノーマが練り込まれているようだった。
「この汁物料理も美味しいね。肉料理が楽しみだよ」
「うん。とっても美味しい」
リリアも上機嫌である。
「えっ。煮汁に全部マロイモを溶かし込んじゃったの? 結構辛くない?」
「俺は辛いものも得意なんだ。ファナは辛いものが苦手なんだな」
ファナとユーゴが、幸福そうに微笑む。
なんだ、この二人、良い感じじゃないか。




