《時計亭》のカレー
そうこうしている間に、料理が届いた。
カレーと、兎肉とメイリグの炒め物である。
まず、カレーから食べてみた。
すると、俺の作るカレーより、ずいぶん辛みが抑えめである。
まろやかな甘さとカレーの旨みが相まって、これはこれで美味しい。
果実で甘さを作っているんだと思うが、結構甘い。
「カレーは甘口だね」
「ん。でも、美味しい。カレーは至高」
俺は肉料理を食べてみた。
ニンジンのごときメイリグは、甘く煮付けられている。
兎肉とニンジンのごときメイリグは、俺の知らないソースで炒められていた。
しょっぱさと甘さが相まって、これは思っていたより美味しい味わいだ。
「炒め物が美味しくて、びっくりしたよ。野菜を甘く煮付けるのは、《月影亭》と一緒だね」
「ん。とても美味しい。この店は、仲間とまた来る」
そうして料理を食べ終えて、菓子を頼んだ。
届いた菓子は、見た目は普通のサフア巻きだった。
一口食べてみると、マンゴーのような甘さと美味しさが口いっぱいに広がった。
メリボーというのは、どうやらマンゴーのことらしい。
マンゴーのジャムと生鮮のマンゴーを混ぜて、サフアの生地で巻いた料理であるようだ。
甘くてとても美味しい。
「メリボーが美味しいね。もう食べ終わったよ」
「とても美味しかった。このお店は当たり」
リリアは満足そうに笑ってくれたのだった。
店を出て、《竜の跳ね鳥亭》まで、戻ってきた。
「今日もリリアの仲間達へ、お土産を用意してるんだ。ちょっと待っていてくれるかい?」
「ん。仲間が喜ぶ」
俺は急いで取ってくると、リリアに風呂敷を渡した。
「チョコバナナパイだよ。さっきの菓子にも負けてないはずさ」
「ありがとう。じゃあ、次は3月7日だね」
「うん。気を付けて帰ってね」
リリアが、瞳を閉じる。
俺はそっと、唇に口づけした。
「じゃ、またね」
リリアに手を振り、家へ帰る。
部屋に帰ってからも、リリアのぬくもりが、忘れられなかった。
2月29日から3月6日まで、平穏に営業することがかなった。
露店も全て売り切り、順調である。
ダビとルルイエ、リリアとその仲間達、ローガン率いる騎士達も食べに来てくれた。
ウィルのことをリーズヘッグに相談したら、3月28日の料理の試食会は、快く許可された。
いつものメンバーに加えて、カトリーヌ、リエル、アディスの親友も参加をすることになった。
ファナとアディスの親友であるが、無事に付き合い始めたそうである。
2月14日に会った時は、いずれアディスに恋をするからと、フラれてしまったそうなのだ。
ファナはリベンジを誓い、2月28日に交際を申し込んだそうだ。
自分にとってのアディスは、絵画のようなものだとか、眺めるだけで十分とか、わかって貰えるまで言い寄って、やっと了承を貰えたのだそうだ。
休み明け、ファナは輝いていた。
「アディスの親友は、いかつい顔をしていたけど、あたしの好みの顔だったの。性格も真面目そうだし、押して押して押しまくるわよ!」
とは、本人談である。
ファナが気に入ったアディスの親友に会える日が楽しみだ。
3月7日。
今日は《まぼろし亭》へ行く予定だ。
午後4時前には、みんな集合した。
初対面が、アディスの親友である。
「初めまして。俺がアディスの親友のユーゴです。どうぞ宜しくお願いします」
顔は、任侠の人みたいにいかつい。
細い身体だが、身長が高い。
俺より10センチは大きいだろう。
髪は緑色の短髪で、瞳は金色だ。
「俺は料理番のキョウスケです。ユーゴ、今日は宜しくお願いします」
礼儀正しい、好青年のようである。
顔で人を判断してはいけない。
午後4時の鐘が鳴った。
エミューの車が2台到着する。
「リーズヘッグ様、全員で14名ですね。二手に分かれて頂けますか?」
「あたし達は向こうの車に乗るわぁ……」
「ユーゴ、アディス! あっちの車に乗ろう!」
リリアの仲間達の3名と、ファナ、ユーゴ、アディスが向こうの車に乗った。
俺達も順番に乗り込んでいく。
エミューの車が出発した。
俺はカトリーヌに話しかける。
「弟さんがこの間、店に来てくれたよ。結婚までもうすぐなのかな?」
「年内は無理ね。来年に間に合うように調整中よ。肝心のエンリコが頼りないから、サリーとよく言い合っているわ。あれで結構、仲が良いのよ」
「エンリコとサリーは、仲が良さそうだったね。これでサフア屋も安泰かな、と思ったよ」
「エンリコがフラフラしてるからねぇ。当分わたしも、サフア屋を離れられないわ」
「そうそう、3月28日の試食会にカトリーヌも参加するよね。お披露目する料理はサフアを使っているんだ。カトリーヌが気に入るか、興味深い所だね」
「またサフアの新しい料理なの? 興味深いわ。楽しみにしているわよ、キョウスケ」
やがて車は検問所に着いた。
リーズヘッグが通行証を出し、車を乗り換える。
そこから15分程揺られて、到着したようだった。




