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《エリザベス》のカレー

「キョウスケって何の動物が好き?」


「俺は猫かな」


「わたしは、犬。ダンジョンで両方戦うけど、犬は賢い」


「へえ。猫はどうなんだい?」


「猫は小狡い」


「あはは。確かにね。そんなところも可愛いんだよ」


 リリアは俺をじっと見る。


「キョウスケの誕生日って、いつ?」


「6月24日。雨期になっちゃうね」


「覚えた。雨期が楽しみになっちゃった」


 リリアの嬉しそうな顔に、俺こそ幸せな心地になる。


「着いた。ここが《エリザベス》」


 俺達は、小洒落たお店に入った。

 給仕に案内されて、俺達は手前のテーブルに座った。


「メニューにカレーって書いてある。肉料理は、おまかせで良い?」


「うん。適当に頼んでおくれよ」


「すいませーん! 兎肉の包子2つと、カレー2つお願いします!」


「かしこまりましたぁ」


 給仕が下がっていく。


「包子はきっと、肉をサフアで包んだ料理。きっと美味しい」


「うん。楽しみだね」


 やがて、料理が届いた。

 カレーは言うまでもなく美味しそう。

 兎肉の包子は、どうやら肉まんのような料理である。

 俺はカレーから食べ始めた。


「これは……辛いね。あと、香りが独特だ」


「これはきっとキノコの香り。辛くて美味しい」


 具材は基本の3種類の他に、キノコが数種類入っていた。

 

「カレーとキノコは合うねぇ。この香りも慣れれば香ばしいね」


「普通、肉料理にかける香り。わたしは嫌いじゃない」


 リリアって守備範囲広いな。

 俺はこの香り、苦手かもしれない。

 兎肉の包子を食べてみる。

 見た目は肉まんみたいだ。

 具材は、肉と野菜を煮込んである。

 ただ、具材がぐずぐずになってしまっている。

 こうなるのは、火加減が原因だ。

 全てを強火で煮てしまっているのだろう。

 塩の加減も甘い。


「包子は、もうちょっと、なんとかなりそうな味だね」


「本当? わたしは十分美味しいよ」


「俺がリリアに、とびきり美味しい包子を作ってあげる。約束するよ」


「じゃあ、3月14日に作って」


「うん。勿論作るけど、それって……」


「ん。夜は宿に帰らない。……良いよね?」


「勿論だよ。6種の料理でおもてなしするよ」


 リリアが俺の部屋に泊まっていくと言っているのだ。

 ここは奮起せねばならなかった。


「料理の希望は何かあるかい?」


「汁物料理は、カレーが良い。あとは、おまかせで良い。今から楽しみすぎて、胸が高鳴っちゃう」


「俺の方こそ、すごく幸せだよ。リリアをきっと、幸せにするからね」


「ん。わたしは幸せだよ。でも、誕生日を祝って貰う夜は、もっと幸せ」


 俺達は料理を食べ進め、微笑み合ったのだった。


 店を出てすぐに、リリアが宣言した。

 

「甘味屋に行きたい」


「うん、行こうか。どんな菓子を出すお店?」


「内緒。キョウスケは気に入るかな?」


「すごく楽しみだよ、リリア」


 俺とリリアは、手をつないで、連れ立って歩く。

 何気ない雑談も心から楽しい。

 俺達は15分程歩いた後、あるお店の前に立った。


「ここが、《メロウの庭》。さぁ、入ろう」


 店に入ると、給仕に案内されて、奥のテーブルに座った。

 

「わたしが選んだ菓子で良い?」


「うん。宜しく頼むよ」


「すいませーん! 3色の団子汁を2つと、お茶も2つ、お願いします!」


「かしこまりました」


 給仕が下がっていく。


「この間の試食会の時にさ、カトリーヌが甘味屋を開きたいって言ってたんだよね」


「それは良い考え。キョウスケの菓子は売りに出すべき」


「あはは。リーズヘッグは2号店が先だって、言っていたよ。何年か経ったら、アイロスも独立するのかもしれないね」


「この間の食事会の時も、リエルはアイロスに一生懸命話しかけてたよ。あの二人、うまくいくと良いね」


「うん。アイロスは無口だけど、良い男だと思うよ。リエルが本気なら、うまくいくかもしれないね」


 リリアはにっこり笑って、俺を見る。


「サフア屋の晩餐会でね、カトリーヌの弟のエンリコと婚約者のサリーにも挨拶したんだけどね。キョウスケを狙う女性は多いって聞かされたの。実際、嫌な感じの人もいたしね。財宝漁りは、蔑まれやすいから、覚悟してた。わたしは、本気。負けないから、覚悟してね、キョウスケ」


「ありがとう。リリアに負けないくらい、俺も奮起しているよ」


 リリアを幸せにしたい。

 俺は更に強くそう誓うのだった。

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