商談成立
リリアのテーブルには、お仲間の皆さんがいた。
「やあ、リリア。お気に入りの菓子はあったかな?」
「ん。どれも、すっごく美味しかったの。1つを選ぶのは至難の業。でも、ミルフィーユが一番!」
「そっか。気に入って貰えて、嬉しいよ。仲間の皆さんは、如何でしたか?」
「今日は呼んでくれて、ありがとうねぇ……。わたし達、菓子に目がないから、嬉しくって……。あたしは草団子が好きねぇ……」
「あたしは、ジュピターのシフォンケーキ! それと、大学芋が、美味しかった!」
「そのぉ……わたしは、白玉あんみつが好きです……」
「喜んで貰えて嬉しいです。ゆっくりしていって下さいね。じゃあ、またね。リリア」
「ん。お仕事、頑張って。それと……《まぼろし亭》に、仲間も招待してくれて、ありがとう。あとね、3月10日がわたしの誕生日なの。だがら……3月14日は、わたしと会ってくれる?」
「勿論だよ。3月10日が休みじゃなくて、ごめんね」
「いいの。3月10日は、仲間とお祝いする。じゃあ、3月14日、空けておいてね」
俺はリリアに頷いて、テーブルを離れた。
次のテーブルは、プリム、ジュレ、リーズヘッグ、カトリーヌのテーブルだ。
「やあ、リーズヘッグとみんな。カトリーヌも、菓子の食べ比べを楽しんで貰えたかな?」
「もっちろん、楽しかった! 見たことのない菓子も多くて、大満足だったよ! 白玉あんみつが美味しかったね!」
「ぼ、僕も楽しかったです。大学芋が好きでした」
「俺はネレボロのゼリーが1番だな」
「わたしはモンブランのタルトが気に入りましたわ。とっても楽しかった試食会だったわ」
プリム、ジュレ、リーズヘッグ、カトリーヌの順で感想を言ってくれた。
「どれも自信作だから嬉しいよ。俺もネレボロのゼリーが1番かな」
「リーズヘッグに、《竜の跳ね鳥亭》も甘味処を開いたら良いわ、って言ったら、まずは2号店が先だ、ですって。一体何年後になるのかしらね」
「あはは。店をやるには資金と人材が必要ですからね。おいそれと手を出さないのも、リーズヘッグの美徳です」
「まだキョウスケがうちに来て1年も経ってないのだぞ。新しい店などは、気が早いとしか言えん」
「わたしは新店舗、良い考えだと思うけどなぁ。まあ、良いわ。リーズヘッグがそう言うなら、機会を待つことにするわ」
カトリーヌは新規出店に、意欲的なようだ。
さすがやり手の女性だなぁと、感心する。
俺は次のテーブルに移動した。
ファナ、アディス、リエルのテーブルに赴き、挨拶をする。
「今日の試食会は楽しめたかな?」
「もう、すっごく楽しかった! どれも美味しくて、目移りしちゃった。栗蒸ようかんが好き!」
「俺もすごく楽しめました。モンブランのタルトが、美味しかったですねぇ」
「わたしも、すっごく楽しかったです。1つを選ぶのは難しいんですけど、草団子が美味しかったです」
ファナ、アディス、リエルの順に、感想を言ってくれた。
「楽しめたなら、良かったよ。ゆっくりしていってね」
後はリーズヘッグと《銀の匙》の面々で話し合うのだろう。
俺は後片付けをしながら、どれが選ばれるか、楽しみに待つことにした。
午後5時の鐘が鳴った。
そろそろお開きの刻限だ。
晩餐の準備も出来ている。
晩餐は、全員食べていく事になった。
今はリーズヘッグとカトリーヌ、《銀の匙》の面々で、話し合い中だ。
「どうしても3つに絞りきれません。5つ、買いましょう。出来れば値引きを期待したいところですねぇ」
「あら、リーズヘッグ、5つなら、いくつか無料でつけてあげたら?」
「では5つで銀貨150枚、無料で2つ料理帳をつけてやろう」
「では、その条件で料理帳を買いましょう。ガル大福と、白玉あんみつと、きんつばと、草団子。それと、ジュピターのシフォンケーキと、スコーンと、ネレボロのゼリーでお願いしますよぉ」
「わかった。キョウスケ、宜しく頼むぞ。いつ、料理帳を伝授する? 3月になるが、良いか?」
「ええ、勿論、大丈夫さ。2月末で料理屋を閉めるから、丁度良かったね。いつが、都合が良いんだい?」
「3月21日はどうだ?」
「わかった。じゃあ3月21日に、《竜の跳ね鳥亭》へお伺いします。代金もその時に持ってくるよ」
「うむ。では、商談成立だな。軽く晩餐を準備したので、食べていってくれ」
《銀の匙》の面々は、喜んで晩餐を食べてくれた。
充実した一日だった。
俺も食事を進めながら、リリアとの約束を振り返る。
3月14日の、誕生日のお祝いは、どんな日になるだろう。
俺はそれを楽しみにするのだった。
1月29日から、2月6日まで、平穏に営業することが出来た。
露店は全て売り切っていたし、客足も増えるばかりである。
ダビとルルイエ、リリアとその仲間達、ローガン率いる騎士達が来店してくれた。
常連さんが増えて、何よりである。
ファナが暗い顔をしていたお見合いであるが、無事にお断り出来たとのことだった。
「あたしは、アイツが嫌いだって、ずーっと言い続けたの。分かって貰うまで時間がかかったけど、やっと断って貰えたわ! これで心置きなくアディスの親友と会えるわ!」
ファナは、そのように言っていた。
2月14日に、アディス同伴で、会うそうだ。
素敵な出会いになれば良いと思う。
特筆すべき事は以上である。
さて、いよいよ2月7日の休日である。
城下町で1番の料理屋とは、どんな料理を出すだろう。
俺は明日を楽しみに待つのであった。




