96.記者会見
遺体には『冷シスト』の文字が書かれた紙が載っていました。新聞の切り抜きです。今、捜査は始まったばかりです。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
赤井悦夫・・・機動捜査隊の警部補。
神道助六・・・捜査二課課長。
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午前10時。警視庁。記者会見室。
「管理官。有名なコメンテーター王川亮氏は、何故殺されたんですか?」
「遺体には『冷シスト』の文字が書かれた紙が載っていました。新聞の切り抜きです。今、捜査は始まったばかりです。王川氏は、『敵』が多かったようですから。」
「国民は知りたがっています。彼が先日差別発言した民族に殺されたかどうかを。」
「国民は言っています。ジャーナリストやコメンテーターを選んだ覚えはない、と。『上から目線』でものを言いながら、その『国民を差別』している、と。加害者擁護ばかりして、被害者の『人権』を侵害している、と。あなた方は、彼が言った『差別発言』を正しく報道しましたか?先のO県での転覆事故、報道しなくなりましたね。当事者である筈の学校関係者の「参考人招致」を断った件も、あまり報道しませんでしたね?検察も文科省も動いているのに、報道しようとしませんね。この事件に関して、進展があったら、再度記者会見します。国民は確かに『知る権利』がある。でも、あなた方が先んじて情報を入手して『偏向報道』する権利はない。それと、司法に先んじて『ジャッジ』する権利もない。そうですよね、『会社員』または『フリー』の皆さん。」
午後1時。捜査一課横の大会議室。『コメンテーター殺人事件』本部。
大きな水槽が、管理官の前にある。
水を浸したその水槽に、村松が『盗聴器』を放り込んで行く。
井関が、水槽に向かって、手を合せて拝んだ。
皆も、それに習った。
「今回のガイシャは王川亮。辛口と言うより、出鱈目コメンテーターとして有名だ。発見者は、TV局社長。既成事実のようだが、王川は社長の犬飼太の家に居候している。朝起きたら、股間にナイフが突き刺さり、絶命していた。胸には、『冷シスト』の文字。『差別主義者』と『冷たい奴』を重ねたのだろう。先日の差別発言は、TV局は適当な謝罪テロップを流しただけ。視聴者がSNSで拡散した為、世界中の当該人種の擁護団体から苦情が集まってきた。国家で謝罪しなければ収まりがつかない程の大事件になった。海外の人間は、仁尾本のTVを観ない観られない。だが、SNSに国境はない。騒ぎが大きくなると、警察にSPを『発注』してきた。『警察は起こっていない事件』に関与出来ない。ご自分で守って貰える人を雇っては如何ですか?」と、本人にも、本人が送ってきたSNS投稿にも返事をしたよ。」
「自業自得じゃねえか。」大曲先輩の言葉を咎める者はいなかった。
「辻さん、今回は局ではなく、日頃SNSを亮じて非難している有識者に話を聞いてください。村松は、捜査本部の回りをうろつく者がいないか巡回しろ。こんなものを仕掛けようとしたら、現行犯逮捕しろ。眩目・大曲は、ガイシャ宅と社長宅の両方を当たれ。」
「「「「「「了解。」」」」」
午後2時。王川家。
「荷物、少ないな。殆ど、愛人、宅かな?」
一回りしてきて、俺は大曲先輩の仕事ぶりを見ていた。
先輩はいきなり、笑い出した。
PCは起動している。
「パスワードは、エフ、ユー、ティー、オー、エス、アイ。」
「ふ と し ですか。」
「前から噂あったんだよ、どんな時も、ちょこっとの謝罪で失言が無かったことになった。定年で会社退職した筈なのに、未だにえばって出ている。まるで役員待遇みたいに。『オサンズラブ』だから、当然の帰結さ。一応、ネットで、人種のことを調べたみたいだな。ヤバイと思って社長に相談して、安心した。相談する相手、間違えてない?お前ならどうする?」
「人種問題の専門家に相談しますね、謝罪の仕方含めて。」
「追い詰められて、行き場のない人間ほど愚行に走る、パターンそのものだな。でも、ホシは、そっち方面じゃない。」
「どっち方面です?」
午後3時半。犬飼家。
大曲先輩は、PCを難なく起動して、また笑った。
「ティー、オー、オー、アール、ユー。仲が良いなあ。」
暫くして、大曲先輩は、叫んだ。
「これかあ。」
午後6時。捜査一課横の大会議室。『コメンテーター殺人事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長は、すぐに出て行った。
「役員に事件のあらましを話してから、取り調べを行った。既に解雇されていたことにされた犬飼は、素直になったよ。政治家も絡んだ贈収賄事件に気づいた王川は、犬飼に『確認』をした。文字通り『飼い犬に手を噛まれた』犬飼は、反社の平和行進会に連絡した。実行犯は行進会の者だが、『共同正犯』だ。誰も、その人種の殺め方を知らない。だから、『愛人』とバレても、真実から乖離する。そんな計算だった。四課も地検特捜部も動いた。総理を追い詰めることに熱心になりすぎて出た失言は、会社自体を追い込んだ。」
管理官に続いて、蘭子が言った。
「『トカゲの尻尾切り』失敗。さて、どんな醜い報道をするかな?」
午後7時。眩目家。
「もうTV、要らないね。」
「ウチは置いてない。この間、お前が買物行っている間に、んHKの反社が来た。しつこいから、ICレコーダーと警察手帳を見せたら、逃げて帰った。舞から聞いたんだが、そいつらが集金に来たら、『警察と仲良し』なんだが、何か?って言ったら帰ったそうだ。液体零しながら。」
俺は、蘭子の視線の先を見て、逃げられないことを悟った。
―完―
※実際に起きた事件を題材にはしていますが、現実の個人・法人とは無関係です。
フィクションですので。
クライングフリーマン




