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95.保冷剤殺人事件

「ガイシャは、相馬謙吉。発見者は、母親の愛子。母親が帰宅すると、妙なシーツがあった。めくり上げると、息子が冷たくなっていた。すぐに110番をした。機捜の赤井警部補が聞き出したところによると、町内会の一拍二日の旅行に行っていた。

 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。


 赤井悦夫・・・機動捜査隊の警部補。

 神道助六・・・捜査二課課長。



 =================================


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『保冷剤殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、相馬謙吉。発見者は、母親の愛子。母親が帰宅すると、妙なシーツがあった。めくり上げると、息子が冷たくなっていた。すぐに110番をした。機捜の赤井警部補が聞き出したところによると、町内会の一拍二日の旅行に行っていた。カギは施錠されていなかった。異常なのは、体中に保冷剤が貼られていたことだ。井関さん、心臓麻痺ですか?」「心臓麻痺には違い無いが、保冷剤で死んだんじゃない。どこかで殺されて、自宅に遺棄したんだ。可哀想に。」

「母親の話によると、高校の【社会学習】で、O県に行っている筈だったそうだ。それで、母親は町内会の琵琶湖旅行に行っていた。」

 そこへ、面談室に行っていた蘭子が帰ってきた。

「けしからん!あいつらがホシに違い無い!!」

「どうしたんだ、開光君。予断で決めつけるなんて、君らしくない。」

「知らぬ存ぜぬを通しているんです。昨日、同じ頃、O県で転覆事故がありました。各方面からの問い合わせに、気が立っているんでしょう。無断欠席した生徒のことなんか知らない。早く犯人を逮捕しろ、と威張ってやがる。」

「その事故に関しては、夕方、記者会見をするそうだ。」と、管理官は宥めた。

「えー、ガイシャは心臓に持病があることは、機捜が母親から聞き出しています。ホシは、別の場所の、犯行現場で心臓麻痺を起こさせ、ホシの自宅に遺棄したものと思われます。尚、擦過傷はありましたが、殴打や、首を締めた形跡はありません。」と、井関さんが割って入った。

「ガイシャの交遊関係を当たろう。辻さん、他の班からも応援を出します。徹底して当たってください。村松、お前はガイシャの通院していた医療機関を当たれ。大曲、眩目。PC・タブレット・スマホから手掛かりを探せ。」

「「「「了解。」」」」


 午後2時。クルマの中。

「眩目。今夜は覚悟した方がいいぞ。目が三角になってたからな。」

「判ってます。学校側は、酷いですね。お悔やみくらい言えばいいのに、社交辞令でも。」

「眩目選手。いい線行ってるんじゃない?」

「はあ?」


 午後2時半。相馬家。

 例によって、完璧な社交術で大曲先輩は、母親から事情を聞きだした。

「心筋梗塞ですか。よく助かりましたねえ。」

「ええ。軽度だったし、療養もしました。」

「ところで、謙吉君と同じ高校に行っている人はいませんか?」

「在校生でなくてもいいですか?」

「勿論、確か、角の家の小西さんのお子さんが今年卒業したと思います。」

「では、奥さん。こういう時になんですが、後でお話を伺いに行きたいので、『信用ある』奥さんから一言お口添え頂けませんか?いえね。警察と聞いて警戒心持つ方もおられますので。」

「判りました。何時頃行かれます?」

「そうですねえ。3時半でどうでしょう。」

「承知しました。」

 俺は、母親が電話を終えるのを待ち、2階の謙吉の部屋に案内して貰った。

 アルバムを見ている内、1人の人物に注目した。

「この人は、仲のいい、お友達でしたか?お母さん。」

「ええ。小学校からの親友の袴田くんです。お父さんが転勤されて、千葉県に転校しましたけど。」

 俺は、年賀状ホルダーを母親と一緒に探し、彼の住所をメモした。


 階下に折り、俺は簡単に成果を先輩に報告した。

 先輩は、自分の成果は話さず、2人で小西家に向かった。

「済みません、お忙しいところを。すぐに済みますから。あ、相馬さんの奥さんの力になってあげてください。我々も、早い犯人逮捕に全力で努力致します。」

「刑事さん、優しいのね。皆、恐い方だと思ってましたわ。それで?」

「恐縮です。立件館高校ですが、普通の学校ですか?」


 午後5時半。転覆事故の謝罪記者会見場。

 あまり、謝っているとは思えない会見に、司会者から、急遽中止する、と記者達に説明があった。


 午後6時半。捜査一課横の大会議室。『保冷剤殺人事件』本部。

 取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。

「急展開だ。ホシは、高校の体育教師辻元源太郎。殺人教唆は、校長の井村忠、虚産党代表大蔵益男、斜面党の党首伊倉江威子、新基地反対推進運動のメンバーだ。相馬君は、「政治活動」に旅行が利用されていることをネットで掴んで、学校のホームページURLに書きこんだ。それで、彼を葬る計画が練られた。転覆事故は、彼らにとって、『運命の悪戯』だった。相馬を見張っていた辻元は、千葉県内の池で相馬を溺死させた。持病があった相馬君は親友の元に行けなくなった。そして、自宅に運び、シリアルキラーの犯罪に偽装した。経緯は以上だ。辻元は、すぐに自供したよ。政府にも。副総監を通じて報告をあげた。これから記者会見だ。」

 そう言って、管理官は出て行った。


 午後8時。眩目家。

 お茶漬けを食べながら、蘭子は説明してくれた。

「小西くんも、辻さん達が調べた卒業生も、大曲が探し出した情報と一致することを言っていた。『思想の押しつけ』。今回は、『座り込み』もさせる積りだった。生徒はロボットじゃない。アナログの辻元は、ショートカットの一部を削除しただけで、証拠隠滅した積りらしい。政治家の『圧力』とやらが、どこまで通じるかな?SNSには国境がない。判っていなさ過ぎる。」

 言いながら、蘭子は眠りに入った。

 俺は毛布をかけてやり、洗い物に立った。


 ―完―


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