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94.アイスピック殺人事件

「ガイシャは、上島隆三。発見者は、兄の隆二。」

「呼んだ?」と、神道課長が入って来た。

「丁度いい。神道課長からガイシャのこと、説明して貰おう。」


 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。


 赤井悦夫・・・機動捜査隊の警部補。

 神道助六・・・捜査二課課長。



 =================================


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『アイスピック殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、上島隆三。発見者は、兄の隆二。」

「呼んだ?」と、神道課長が入って来た。

「丁度いい。神道課長からガイシャのこと、説明して貰おう。」

「管理官のご指名とあらば。今回のガイシャの上島は、二課で探している、マエのある特殊詐欺犯。色んな特殊詐欺やってましたが、最近は『お荷物お預かりしてます』詐欺をやってたらしい。右の耳の下に大きなほくろがある。半グレの、『夕暮れ族協会』に属していましたが、電話詐欺ツールセットと、『お荷物お預かりしてます』CDを入手して騙していたらしい。被害届は今、20件。開光、これ、リストね。実際は、泣き寝入りが多いから、その10倍は被害があるはず。フィッシング詐欺のノウハウと、留守番電話の長さを調整してある録音を利用して、『煽る』文言でカモを待つ。折り返して電話したらアウト。生で電話してもアウト。着信履歴の悪用です。とにかく、『お荷物お預かりしてます』ってのは、百貨店や大手本屋なんかでよく放送する奴の応用の積りなんだけど、普通は『お伝えしたいことがございます』って言うのを勘違いして使っている。とにかく、独居の高齢者は、どこかで落とし物したか置き忘れしたか、と勘違いする。フィッシング詐欺の応用なんで、相手の番号を知ってて、ピッポッパしているのでなく、プログラムで片っ端から『0から9まで』の数字を桁数を順次作成して、通信回路に繋いで電話。ケータイ同様、登録していない番号には出ない、こちらから〇〇ですけど、って名乗らない、〇〇ちゃんかい?なんて確認の質問しないってのが『オレオレ詐欺』以降の電話応対マニュアル。」

 リストを受け取りながら、「神道は、このガイシャの親族か知り合いがホシだと思ってるんだ。」と蘭子は言った。

「え?違うの?」「いや、余談は禁物ってことさ、神道が間違いなんて言って無い。」

「だね。じゃ、ホシ引っ張ったら教えて。」

 そう言って、神道課長は出て行った。

「凶器なんだが、これもアイスピックなのかね、井関さん。」

「6本刃のアイスピック。昔は1本のしか無かったけどねえ。ホシは、ガイシャが心臓の病気のことを知ってたみたいだな。まっすぐ心臓に立てて、刺したまま逃走したようだ。メーカーは特定しにくい。ネット通販で簡単に手に入る。1000円くらいで。智子、今度買おうって思ったろ。」

「何で分かったの?」「あ。ゲロった。」


 午後2時。上島家。

「じゃあ、弟さんは、独居だったんですね。」と大曲先輩は、ガイシャの兄隆二に念押しした。

「ええ。嫁が愛想を尽かして離婚したのが、1年近く前。子供もいなかったので、あっさりしたものでした。じゃ、捜査が進んだら、これに。」と、隆二は名刺を先輩に渡した。

 隆二が帰った後、先輩は名刺を見せてくれた。

 「生命保険ですか。じゃ、嫌だったでしょうね、弟が詐欺犯だと。」

「ああ。前に特殊詐欺やった時は、グループの下っ端だったから、早く『出られ』た。」

「間違いなく、怨恨ですね。2階行って・・・あれ?」

「お隣さんの話だと、ボヤ出したことがあるらしい。それで2階あまり使っていないらしい。一応、点検して。」

 先輩、相変わらず早業だ。

 おしゃべり好きそうな奥さんに目をつけて、仲良くなって聞き出す。

 俺には無理かな?

 これは?

 俺は、手近な段ボールに詰めて、階下に降りた。

「先輩。これ。」

 段ボールの中には、どこかのスナックが写っている写真があった。

 写っているのは、隆二の奥さん、隆二、ガイシャ、ガイシャの奥さん。

 どう見ても、四人で経営のスナックだ。揃いのエプロンを身に着けているし。

「どこにあった?」

「炬燵の脚です。」

「でかした。こっちも収穫ありだ。その写真、ってこれだろ?」

 大曲先輩が指したそれは、俺が見付けた写真の電子データだ。

「それと、これ。」

 それは、ガイシャが騙した相手のリストだ。

「・・・ああ、秋野。神道さんが持ってきたリストと、今送ったリストをマッチングしてみてくれ。念の為だ。」


 午後3時半。捜査一課横の大会議室。『アイスピック殺人事件』本部。

 面談室から、管理官と蘭子が戻ってきた。

「一致したリストの人物は、言葉巧みに、クレジットカードを作らされたそうだ。生命保険の社員が間に入っているから、疑っていなかった。クレジットカードは、差し止めさせた。神道達が、ガサイレに向かった。」


 午後5時。捜査一課横の大会議室。『アイスピック殺人事件』本部。

 大曲先輩、蘭子、管理官が取り調べ室から出てきた。

「『夕暮れ族協会』の新しい住所が、生命保険の会社の、すぐ隣だった。生命保険の会社は所謂幽霊会社だった。『夕暮れ族協会』は解散していなかった。ガイシャの女房は、隆二の情婦だった。資金繰りが難しくなったので、半グレの言いなりだった隆二は社長に言われて、ガイシャに生命保険をかけ、強盗に見せかけ、殺害した。スナックが流行らなくなって、『夕暮れ族協会』に借金のカタに店も、自分達もとられた、と泣いている。尚、スナックでは、一本刃のアイスピックしか使ったことがないそうだ。」と、管理官は肩を落した。

 もう少しで捜査を撹乱させられるところだった。


 午後7時。眩目家。

「スナック、流行らなくしたの、『夕暮れ族協会』かな?」

 蘭子は、台所の全ての刃物を磨き。新しく買ったアイスピックを磨いた。

「今度は、お前を磨いてやろう。いひひ。」


 恐い。


 ―完―





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