90.目潰し殺人事件
ガイシャは、伊知地松子。美容整形外科の医療助手・受付だ。発見者は、同じ職場の看護師、佐藤治子。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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※「目潰し(めつぶし)」は、大きく分けて建築・土木用語(隙間を埋める砂利)、格闘技の反則技(目を突く・眩ませる)、照明用語(観客への強光)の3つの意味で使用される言葉です。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『目潰し殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、伊知地松子。美容整形外科の医療助手・受付だ。発見者は、同じ職場の看護師、佐藤治子。無断欠勤を心配してマンションにやってきた。赤井警部補が助手と看護師の違いを尋ねたが、よく分からなかったそうだ。で、現場写真で見る通り、目にはヘアピン、耳にヘアゴム。意味が分からない。ホシが何か伝えたいとしても、理解しがたい。井関さん。」
「ホシは何でも知っている・・・そんな歌があったが、これとは違う意味だ。解剖結果を待つまでもなく、目はパフォーマンスで、死因は絞殺だな。吉川線が一杯あった。耳にヘアゴムって流行ってんの?って赤井がつい言って、ウチのお嬢のご機嫌を損ねた。これもパフォーマンスだな。」
「じゃ、ホシはガイシャの死を持って、第三者に警告していることになるな。」と管理官が言い、「辻さん、村松連れて、従業員の評判と、患者の怨恨、調べてください。「大曲、ついでに、お隣さんにも聞いてこい。」と蘭子が言った。
午後2時。クルマの中。
「先輩。秋野君、命拾いしましたね。」
「どういうことふぁ、眩目。」大曲先輩は、欠伸を殺して尋ねた。
寝不足か?
「いえね、赤井さんが尋ねた質問、秋野君、言いそうだから。」
「言いそう、じゃないよ。言ってた。智子にじゃなくて、村松に。あいつなら、男のファッションも女のファッションも詳しいだろうし。『流行ってない。智チャンに言っちゃダメよ。』」
「先輩、聞いてたんですか?」「ああ、立ち聞きする積りは無かったけどな。」
「何のパフォーマンスですかね?」「ホシに聞くさ。間違いなく怨恨だし。客だよ、きっと。カスハラが嵩じたんだろうな。言うなよ、蘭子に。」
「先入観、持っていいのか?自信あるんだよな、推理とやらを聞かせて貰おうか。」
「お前、似すぎてて笑えないよ。」
午後2時半。伊知地のマンション。
区切り隣の、おしゃべり好きそうなおばさんに、大曲先輩は、言葉巧みに聞き出した。
「佐藤さんね、よく来られるわ。同期入社ってやつで仲いいみたい。他の人は尋ねて来ない、と思うわ。」
「じゃあ、オンナはオンナ同士っていう親友ですね。」
「そうそう。あ、コレ。警察の方ですよね。書類書かないと、いけないかしら。伊知地さんのと思うけど。ウチのドアの隙間に入ってたの。渡しそびれちゃってて。」
「お任せください、私が、責任持って、係の者に渡しておきますから。」そう言って、先輩は、ピアスを受け取った。
俺達、男にとって、ピアスとイヤリングは、どちらがどうとか判らない。
先輩は、「ピアス派かイヤリング派か、智子に聞いてみろ。」と俺に言うので、奥の部屋を確認に回る前に、智子に尋ねた。
PCを起動した先輩に、その成果を報告をした。
ピアスとイヤリングは、ピアスが耳に穴を開けるのに対して、イヤリングは挟んでぶら下げるだけ。後者の方が、耳の病気になりにくい。
「成程な。オンナはオンナ同士っていう親友ってのは、第一段階なのか。」
俺は、クローゼットの隠し引き出しから出したものを大曲先輩に見せると、唸って、そう言った。
PCの画面には、エロ画像が並んでいた。
よく、スケベオヤジが、こういうサイトからの不正請求詐欺に、引っかかるが、ちょっと違う。生写真だ。
午後5時過ぎ。捜査一課横の大会議室。『目潰し殺人事件』本部。
取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官が出てきた。
説明は、大曲先輩が受け持った。
「智子・・・智子さんの監察によると、ガイシャはピアス派だけど、殺される直前までイヤリングを使用していたようです。で、ピアスですが、片方はガイシャの部屋から、もう片方は、隣人が拾ったまま持っていた。大喧嘩の原因は、『おそろ』のピアス。紛失したガイシャを、『恋人』の佐藤は責めた。同期で、医療助手と看護師というコンビで仕事をする、いいお手本だった2人は、いつしかコンビ以上になった。それだけに、嫉妬心も人一倍だった。佐藤が、他のオンナ又は男のところで無くしたと思い込んでいたピアスは、隣家にあった。結果、偽装の為に目にヘアピンを刺し、ピアスを思い出すから、側にあったヘアゴムで覆った。隠す意図は無かった。眩目がクローゼットの隠し引き出しから見付けたのは、プレイの道具、PCのエロ画像は、『ゴミ箱』の中にあった。」
「もろいな、と思ったよ。大曲がピアス出して、画像のこと言ったら、すらすら話しだした。今は、放心状態。」と、蘭子は嗤った。
「社長に連絡したら、パンフ作り直さないとって言ってた。ドライな女医さんだ。ああ、パンフのモデルは、ガイシャとホシ。」管理官は、溜息をついた。
午後7時。眩目家。
「お願い。それ以上、綺麗にならないで、僕の奥さん。」と、大曲先輩に教えられた通りに言った。
パンフを持って帰ってきていたからだ。
「お前は、芝居は下手だが、AV男優は勤まりそうだ。来い!!!!!!!」
俺は、耳を引っ張られ、バスルームに直行させられた。
「まずはシャワーかな、いひひ。」
恐いよー。
―完―




