87.絵本作家らんこ
ガイシャは、出目蘭子。絵本作家だそうだ。今、村松が配った作品が、その一部だ。発見者は出版社の社員大下めぐみ。所謂『編集さん』だ。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
藤島昭人・・・交通課警部補。
=================================
午後1時。捜査一課横の大会議室。『絵本作家殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、出目蘭子。絵本作家だそうだ。今、村松が配った作品が、その一部だ。発見者は出版社の社員大下めぐみ。所謂『編集さん』だ。絵本作家と言ったが、出目氏は、文章担当らしい。出版社の提携イラストレーターが絵を担当する。大下は、出目氏から原稿を受け取り、イラストレーターに橋渡しする。それで、凶器だが、鋏だ。所謂洋裁鋏ではなく、粗大ゴミ用の万能はさみだ。井関さん。」
「長年鑑識やってるけど、初めてのケースだな。まあ、販売されだしたのが、分別が五月蠅く言われてから大分経ってからだけどねえ。ガイシャの私物で、挿したまま、ホシは逃げた。所謂「栓」になったので、流血は少なかった。」
「強盗じゃないよなあ。」と、大曲先輩はつい言った。
「私も『大曲探偵』の意見に賛成だ。怨恨だな。辻さん。発見者の大下さんと、出版社の社員に詳しく聞いてください。村松。機捜の赤井警部補によると、庭に大きな倉庫があるそうだ。その中を隈なく探してくれ。あ、熱中症に気をつけてな。私があげた帽子被って行け。」
「了解しました。」
午後2時。出目家。
「変わった苗字ですね。」
「愛媛県の人だろう。実は、知り合いに愛媛出身の出目さんがいる。」
「先輩、交際範囲広いですねえ・・・ひょっとしたら、女性?」
「悪かったな。お前、2階担当な。PC2台とタブレットか。珍しいな。こりゃ大事だ。」
俺が2階に行くと、手前が寝室で、奥が衣装部屋だった。まあ、女性1人で、お金持ちなら・・・え???
「せんぱーい。」
「何だ、大声出して。押し入れか?外・・・見えてるな。」
俺達は、慌てて表に出た。
建物の構造上か?隣家の近くからは、その押し入れは見えない。
大曲先輩は、隣家のチャイムを押した。
丁寧に挨拶した後、尋ねた。
「ああ。空き巣に入られて、まだ工務店が来ていないって言ってたけど。あれから大分経つなあ。」
俺達は、反対側の隣家にも尋ねたが、工務店を見かけたことは無かった。
俺は、家に戻った大曲先輩を見送って、言われた通り、辻さんに電話した。
午後5時。捜査一課横の大会議室。『絵本作家殺人事件』本部。
志摩管理官は言った。
「結論から言うと、自殺だ。絵本作家というから先入観で考えていた。夜な夜な遊び歩くご婦人でもあったようだ。裏手にビルが建ち、隣家との間に、死角が出来た。自ら押し入れに穴を開け、遊び歩く人だった。編集の大下氏は、口うるさい人だった。大曲君。」
「最初、PC2台にタブレットがあったので、プログラミングしているのかと思ったら、絵も描ける作家だったらしいです。大下は、絵はイラストレーターに任せて、出目の自作は採用しようとしなかった。ストレス貯まって、ネットの世界に逃げた。それでもストレスが貯まって、『かごの鳥』は外に出た。最終的に、ネットで拾った『自殺の仕方』マニュアルの通りに自殺した。とても残念な最後だった。」大曲先輩は淡々と説明した。
管理官は、涙ぐんでいた。
村松や智子はポロポロ泣いた。
午後8時。眩目家。
「出版社は、葬儀後追悼集を出したい、と言って来たそうだ。私は詳しく説明した上で、断った方が供養になる、と言っておいた。真吉。今日はいい。明日2日分、サービスしろ。」
「了解。」
「ああ、明後日、お通夜だ。行くか。」
「勿論。」
「良い子だ。」
褒められちゃった。
―完―




