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85.だいしょう

「ガイシャは、南出陽子。額に陥没骨折。発見者は訪ねてきた姉夫婦。彼岸に来訪し損なったから、改めてやってきた。もしもの時に、と離婚して独居になった家の鍵を預かっていた。姉の亭主が110番通報した。

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。



 =================================



 午後1時。捜査一課横の大会議室。『顔面骨折殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、南出陽子。額に陥没骨折。発見者は訪ねてきた姉夫婦。彼岸に来訪し損なったから、改めてやってきた。もしもの時に、と離婚して独居になった家の鍵を預かっていた。姉の亭主が110番通報した。素人目にも仏間が殺害現場と判った。凶器は、床の間に飾ってあった花瓶の1つ。後のはカラ。井関さん。」

「まあ、ドラマみたいだわって、智子が言った通り、分かり易い凶器での殺害。法学医さんが、どう解釈するか判らないが、正面からの打撃。まっすぐ倒れた。智子。」

「父さん、恥かかでないでよ。割れた花瓶の側に紙片がありました。『だいしょう』。粉砕の粉が付着していたことから、花瓶の中にあったと考えられます。」

「ひらがなじゃ判らないなあ。」と、ぽつんと蒔が言った。

「蒔くん。心の声が出てるよ。」と辻さんが注意した。

「いいよ、いいよ。それを検討し、事件を解決するのが我々の仕事だ。大曲、眩目。念入りにヒントを掴め。」と蘭子が言い、「現場には、姉がまだいる。旦那はパチンコに出掛けたそうだが。」と、管理官が言った。

「じゃ、我々は、ガイシャの勤め先の飲料品工場に行ってきます。何か、『隠語』かも知れませんね。専門職の。」と、辻さんが言った。

「なるほど、あり得るな。村松、同行して。」と、管理官が言った。

「「「了解しました。」」」


 午後2時。南出家。

「隠語、ですか。妹は、仕事のことは話してくれていなかったので、会社の方に・・・。」

「ああ、そっちは別の者が行っております。そうですよねえ。奥さんの言う通り、会社の人の方が詳しいかも知れない。眩目。奥さんと一緒に住所や連絡先が書いてあるもの、探してきて。南出さんは、日記帳かPC日記書いていないかな?」

「ああ、PCに日記やメモ書く人、多いんですよ。スマホもね。スマホは血が付いていたそうですから、本部でお預かりしています。後でお返しします。」


 俺は、大曲先輩が合図したので、ガイシャのお姉さんと2階に上がった。

「嫁ぎ先が遠方なので、一昨年亡くなるまで、母の介護は、あの子に任せ切りでして。」

「遠方・・・山の方ですか?」

「いえ、前橋です。」

 俺は、そんなに遠いかな?と思ったが、口には出さずにいた。


 アルバムと住所録を探し出し、俺は階下に降りた。

 帰る準備をした、大曲先輩は、2枚の紙片を差し出した。

 姉の大北章子は、青ざめた。

『いさん』『ろうご』


 午後4時半。捜査一課横の大会議室。『顔面骨折殺人事件』本部。

「簡単に言うと、相続争いだった。母親の生前から『生前贈与』を求めていた姉夫婦がホシだった。九州・福岡に在住の弟は、相続放棄していた。南出さんの預貯金は500万円ばかり。大北信介は、ATMで分けて引き出していた。スーパー・コンビニの防犯カメラに映っている。南出さんは、弟とネットアプリのメッセージでやり取りしていた。パスが判らないと入れ無い。だから、PCのパスは設定していなかった。借金の為、焦りすぎ、やり過ぎた。花瓶は3つあった。紙片を3枚印刷して、花瓶に入れてあった。」

「保険が効いた訳だ。村松の好きな『ホシからのメッセージ』だったかもな。3枚の紙片は、花瓶に貼った写真を弟に送ってあった。万一の場合、弟が乗り出す予定だった。陽子が『殺されるかも知れない』とメッセージに書いてあったからだ。犯行後、残りの花瓶の紙片を回収した2人は、安心しきっていた。紙片を貼った後は、井関さん達が再確認したよ。言葉の暴力も多々あったらしい。村松や辻さん達が聞き込んだ話では、『深夜勤』まで買って出ていたらしい。無理しなくても、と言ったら、介護生活を早く忘れたい、と言っていたらしい。実際は、介護で赤字が出たから、生活が苦しかったに違い無い。機捜の赤井警部補によると、目の前で弟に連絡しなかったそうだ。葬儀は弟がなんとかする、と言って来ている。」



 午後7時。眩目家。

「あ。」

「なんだ、大きな声を出して、天麩羅あげてんだぞ。」

「ゴメン、だいしょうって・・・。」

「弟との、『隠語』。大北章子の略だな。」

「ああ。」

「ああ、じゃない、皿、用意しろ、真吉。」

「はいはい。」

「後で、お前も『あげて』やるからな。うふふ。」


 うふふ?恐い。


 ―完―






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