79.偽看護師殺人事件
「ガイシャは、熱海旬子。死因は絞殺。凶器はない。ホシは握力が強い。玉木診療所で、医療事務を行っていた。先に、医療事務について、井関さんから説明して貰おう。」
井関さんは、咳払いしてから、説明を始めた。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『医療事務員殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、熱海旬子。死因は絞殺。凶器はない。ホシは握力が強い。玉木診療所で、医療事務を行っていた。先に、医療事務について、井関さんから説明して貰おう。」
井関さんは、咳払いしてから、説明を始めた。
「いつか、こういう時が来ると思っていたよ。ウチのカミさんも、眉をひそめてた。
ガイシャは、飽くまでも医療の事務員だ。3ヶ月前後の学習で、『医療事務認定実務者』試験の他3種類ほどある、民間資格試験だ。大学や専門学校で3年以上学んで国家試験をパスした看護師とは雲泥の差だ。病院では職務によって制服が違って一目瞭然だが、診療所・クリニックでは、一緒くただ。特に、医師が「看護婦さん」などと呼びかけると、患者は混同しやすい。玉木診療所では、その悪癖が裏目に出たんだろう。聞き込み班が行く前に余談を与えてしまいそうだが、患者が医療事務員に看護師として接し、トラブルを起こした例が幾つかある。どこの医療機関でも、医師が判断する為の『問診票』というものを書かせるが、厳守されているのは、初診だけだ。幾ら診察の前に問診していれば診察がスムーズだと言っても、問診は看護師の仕事であって、問診の結果を書くまたはPCに入力するのは医療事務員または看護師の仕事だ。テリトリーが違うんだよ。」
「ガイシャの部屋で、袖を通していない、看護師の制服を見て違和感を感じたの。ちょっと調べてみたら、診療所のスタッフの制服でもない。ナースキャップもあったわ。今時珍しい。」と、智子が言った。
「発見者が2軒先のお隣さんなんで、初動捜査員が確認したところ、玉木診療所の看護師さん、って言ったらしい。怨恨は怨恨だが、井関さんの聞いたトラブルが起因しているかも知れない。辻さん、村松連れて行って、評判聞いてきて下さい。大曲達は、ガイシャの持ち物を当たれ。」と、蘭子が言い、「親族が到着するのは、明日になるらしい。何とかそれまでに進展させよう。」と、管理官が締めた。
午後2時。熱海家。
「予期されていた、か。ホシは、握力が強いだけでなく、怨みが強かったんだろうな。眩目、二階、頼むわ。」
「了解しました。」
俺が、二階を捜索する内、重要なものを発見した。
他をざっと見て、俺は階下に降りて、先輩に報告した。
「アルバムか。この頁とこの頁と、この頁。本部に持ち帰る前に、写真撮っておいてくれ。」
「了解。」
午後3時。捜査一課横の大会議室。『医療事務員殺人事件』本部。
村松が説明に立った。
「ガイシャと直接トラブったのではなく、仲がいい患者が見つかりました。神野圭輔です。郷里が同じだそうで、ちょっとした風邪でも診療所に行っていたそうです。大曲先輩が持って来てくれた写真の人物です。」
「それで、重要参考人ということで、神野のヤサを診療所に教えて貰った。今、所轄に行って貰っていたが、絞殺死体が見つかった。」
「詰まり、神野がホシじゃないってことだな。」
「ああ。三人目がいる。どの写真も、2人の写真を誰かがシャッター押している。」
そこへ、新垣課長が現れた。
「呼んだ?」
「呼んでないよ、舞。」
「さっきさ、村松がスマホの写真、熱心に見てるからさ。思い出して部下に調べさせた。証拠不充分で不起訴になりかけの案件。秋野、スクリーンに出してくれ。」と、新垣はマイクロSDを秋野に渡した。
スクリーンに出た写真を見た皆は驚いた。
「場所は東尋坊。ドラマで有名な場所だ。アングルが違う。こっちには正面に映っているのが、被疑者の小畑真理だ。そっちの案件のカップルのどちらかがシャッターを切った。蘭子。そのアルバムを見せてくれ。」
俺は、蘭子に合図され、アルバムを見せた。
「問題は、そのケッチィちゃんの縫いぐるみだ。ヤクが入っている。」
午後6時。捜査一課横の大会議室。『医療事務員殺人事件』本部。
捜査四課の、ガサイレで、背中が切り裂かれた縫いぐるみが見つかった。
小畑は上手く隠した積りだったが、新垣の目は誤魔化せなかった。
報告を受けた蘭子は、皆に説明した。
「熱海と神野は、文字通り仲が良いカップルだった。上京した熱海は看護師学校の試験に合格しなかった。でも、医療事務の資格を取った。そんな熱海の熱意の神野は惚れた。婚前旅行に行った東尋坊で、同じ売店で購入した縫いぐるみの『取り替え事件』が起きた。返さないので、小畑は強硬手段に出た。これが真相だ。患者と事務員のトラブルじゃなかった。」
「面目ない。ミスリードするところだった。」と、井関は謝った。
「結果オーライだ。後は四課に任せよう。」
午後7時半。ある葬儀会館。熱海の通夜。
診療所の看護師長と、熱海の親族が挨拶に来た。
「お坊様が渋滞で遅れているようなので、この度は・・・ありがとうございました。」と、涙ながらに熱海の親族が言った。
「今、犯人を逮捕に向かっています。せめてもの供養になれば、と思います。」と、蘭子が挨拶した。
「私の態度が曖昧で、余計な心配を患者様にかけていることが分かりました、以後、自重します、と院長が申しておりました。」と、看護師長が挨拶した。
会館事務員が案内に来た。
いよいよ、お通夜だ。
午後11時。眩目家。
蘭子は、電話を切った。
相手は大曲先輩だ。
「診療所は制服を一新、看護師も医療事務も別の制服、ネームプレートを着用するそうだ。」
振り向いた蘭子は、ネームプレートを着けている。
眩目蘭子、担当は眩目真吉の妻。
へ???
―完―




