77.お局様三代目殺人事件
「ガイシャは、新橋耐子。クライアントとの約束時間が来ても出勤しない。上司は、他の者に担当させ、ガイシャ宅を訪れて発見した。家の中で首を吊っていて、慌てて110番した。絶命していることは、見ただけで分かることだし、常識ある、その上司は現場保存の鉄則を守り、遺体を下ろしたりしなかった。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『化粧品会社女性社員殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、新橋耐子。クライアントとの約束時間が来ても出勤しない。上司は、他の者に担当させ、ガイシャ宅を訪れて発見した。家の中で首を吊っていて、慌てて110番した。絶命していることは、見ただけで分かることだし、常識ある、その上司は現場保存の鉄則を守り、遺体を下ろしたりしなかった。」
「これは、賢明でしたね。まあ、ホシが絞殺の上、吊ったのは間違いないが。」と、井関が口を挟んだ。
「有名な化粧品会社で、部長クラスの女性社員がCMモデルを勤めることも有名だ。怨恨は間違いないだろうが、被疑者候補は多そうだな。辻さん。近所の評判は?」
「人付き合いが上手で、流石化粧品会社の人間だ、という人もいれば、実年齢より若く見えるのが不思議、と言う人もいるんですねえ。」
「じゃ、引き続き、会社関係、クライアントを当たって下さい。リストを用意するように言ってありますから。」
「ありマスカラ・・・なんちって。あ。」蘭子は、大曲先輩を睨みつけた。
「ノミの死骸でもいいから、現場から持って来い。」
午後2時。クルマの中。
運転する俺に、珍しく大曲先輩は弱音を吐いた。
「俺って、やっぱり余計なこと言い過ぎるんだよなあ。」
「でも、最近、減点ないですよ。まあ、得点もないけど。」
「お前は、ホント良い奴な。俺の我が儘だったのに、蘭子と結婚して。」
「相性・・・ですかね。あ、それより先輩。以前、あの会社の部長クラスになる女性って、ある程度の期間在籍した後、皆独立しているらしいんです。CMモデルも在籍期間だけらしいって。何かあるのかな?って噂です。」
「ふうん。案外事件と関連するかもな。お前、そのネタ、蘭子に報告した方がいいぞ。」
「後が恐い、ですか。」「まあな。」
午後3時半。新橋家。
埼玉県との県境にある閑静な住宅地。
近所の奥さん達が、黄色いロープを潜る時、皆、大曲先輩に頭を下げた。
先輩が「社交辞令」を駆使したからだ。
部屋が幾つもあって、二階は物置に使っていたようだ。
が・・・電気を点けて、窓を開けると、異様なモノを発見した。
ゴム、だ。器用に丸めてある。手頃なケースがあったので、皆入れてクルマに運ぶ。ひょっとして、宝の箱・・・じゃないか。被疑者の体液が残っているかも。
俺は、先輩に報告してから、クルマにブツを運んだ。
一階寝室は、やけに片付いているなと思ったら、ベッドは折り畳み式だ。シングルで、狭い。二階は、布団が万年床になっていた。
ガイシャの『二面性』か。
「見付けたよ、眩目。ガイシャは、『お局様三代目』と呼ばれていた。本人は気に入らなかったが。一代目と二代目は、独立して会社を立ち上げて、グループ会社になったが、三代目に、そんなおいしい話は無かった。一代目も二代目も整形手術を受けている。三代目もだ。だが、独立させて、整形がばれないようにする計画は頓挫した。社長は仮想通貨で、大損したからだ。ここから先は、俺の推測だ。口論になったガイシャと社長。社長は、ガイシャの首を締めて、自らの人生もクビを締めた。俺だから見付けられたが、社長は、『隠しファイル』を見付けられなかった。二階、すっきりしていた、と言っていたな、眩目。」
「はい。」「アナログ人間の発想だな。ヤバイ資料があって、取りあえず、それを運び出したんだ。夜中なら、見つかり難い。」
午後5時。捜査一課横の大会議室。『化粧品会社女性社員殺人事件』本部。
隣の取り調べ室から、大曲先輩、蘭子、管理官が出てきた。
「村松の調べで判ったが、やはり部長クラスの女性社員は社長の愛人だった。皆も知っている通り、整形美容の限界、というものが存在する。限界が来た部長は独立、傘下の会社の部下には、あまり姿を見せない。三代目は、社長の失敗で経営が苦しくなり、独立出来なくなった。口論の末、クビを締めた。だが、本当のホシは、会社の男性社員小倉だった。幾つも『ゴム』を残していたのは、何かの『保険』かも知れないな。『ゴム』が入っていた容器は、社長が書類を運び出した時に散乱させてしまった。まさか、自分やホシを特定する決め手になるとは想像せずに。後から来た男性社員は、生きていたガイシャを首つりさせた。絶命していなかったガイシャは階下に降り、横になっていた。既に死んでいる、と思った小倉は首つり偽装をした。小倉は、『ストーカー』呼ばわりしたガイシャを恨んでいた。殺そうと思ってきたら、準備は出来ていた、というわけだ。」
「今回も活躍したな。大曲、プラス10点だ。」蘭子の言葉に大曲先輩は嬉しそうだった。
午後7時。眩目家。
「男の欲望、オンナの欲望、か。」
俺が黙っていると、「シングルベッドとウォーターベッド。どちらもセッ〇スしにくいらしい。今日はソファーにするか。」と蘭子は言った。
電話の相手の、大曲先輩は、電話を切った。
まあ、そうだろうな。
―完―




