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71.巡査長最後の事件

先日、定年退職した柳谷さんが、村松を訪ねてきた。

両手を出した柳谷さんは、出頭してきた、と村松に言った。

同席した蘭子は、取りあえず、拘置所に入って貰った。


 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。


 新垣舞・・・捜査四課課長。


 神道助六・・・捜査二課課長。

 柳谷俊喜・・・元丸の内署生活安全課班長。


 =================================


 午前10時。捜査一課応接室。

 先日、定年退職した柳谷さんが、村松を訪ねてきた。

 両手を出した柳谷さんは、出頭してきた、と村松に言った。

 同席した蘭子は、取りあえず、拘置所に入って貰った。

 村松は、いつになく混乱していた。

 村松は、丸の内署時代の恩人だ。

 いつもイジメから庇ってくれていた。

 実は、村松は、蘭子と同じ小学校を出ている。

 だから、憧れて蘭子と同じ職場につきたくたくて警察官になった。

 蘭子は、事情を知り、イジメ署員の股間を蹴り、全員を病院送りにした。

 経緯を聞いた警視総監と志摩管理官は、捜査一課長が内定していた蘭子に、特殊捜査チームのリーダーとして任命した。うるさ方や外部の、ナンチャラ団体には、『窓際族』に追いやったことにした。

 かくして、捜査一課の課員は、蘭子直属のチームと、他のチームに分かれ、職務は班長が指揮を執り、書類の確認捺印は班長が代行することになった。開光という苗字は珍しいので、沢山予備を用意して。そして、村松は、『秘蔵っ子』になった。

「村松。日比谷に行って調査してこい。辻さんたちと一緒にな。もう、お前を知ってる人間もいない。いつもように、女の子達と仲良くなって、聞き出してこい。出来るな?嫌なら・・。・。」

「嫌な訳ありません!!」

「午後から捜査会議だ。飯は抜くな。」

 離れて見ていた俺は、智子と井関さんにVサインを送った。


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『元警察官殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、息吹信也。元小岩署の巡査であり、元丸の内署の巡査でもある。発見者は、妻の哲子。頸動脈を切られている。井関さん、登山ナイフですか?」

「ああ。刃渡り8センチの折り畳み式。ガイシャの横に落ちていた。奥さんは、主人の物です、と即答した。凶器に違い無いだろうな。ガイシャの趣味が登山で、リュックにはナイフは無かった。」

「ところで、元丸の内署の柳谷さんが出頭してきた。ショックは大きいだろうが、村松、行けるか?」

「はい。」

「じゃ、辻さん達と丸の内署に行け。大曲は、柳谷さん宅と、息吹宅の両方を調べろ。ここから近い方からでいい。」

「了解。」

 俺と大曲先輩は、急いだ。


 午後1時半。中野区。中野区役所近く。柳谷家。

 独居である。物も少ない。

 先日の例もあるので、俺は隅々まで探したが、本棚に本が数冊あるだけ。

 ん?キーだ。

「日記だけだった。眩目、何か・・・コインロッカーのキーか。新宿駅?」


 午後3時。小金井市。武蔵野公園の近く。伊吹家。

 奥さんの了解を得て、家捜しする。

 台所も見て回るので、露骨に嫌な顔をした。

 大曲先輩は、PC裏のSDメモリを発見。再生・開封はせずに、クルマに急いだ。

「解剖が終ったら連絡が来ると思います。ご不幸があったばかりなのに、失礼しました。ご協力ありがとうございました。」

 大曲先輩に、立て続けに言われると言い返せない。

「ご苦労様でした。」と、息吹の妻は言った。


 午後5時。捜査一課横の大会議室。『元警察官殺人事件』本部。

 取り調べ室から、神道、新垣、蘭子、そして、管理官が出てきた。

 神道、新垣は出て行った。

「やはり、柳谷さんは、庇っていた。ホシは、富樫健。富樫と息吹は、村松を虐めていた巡査だった。柳谷さんは、『手入れ』の応援に行った時、組員を取り逃がしそうになった。富樫と息吹は、柳谷さんが捕まえたことにして、恩を売った。その為、村松が虐められても見て見ぬ振りをしなくていけなかった。今年初め、再会した時、息吹が組員になっていることを知り、説教しようとしたら、村松のことを世間にばらすぞ、と言い出された。それを陰で見ていた富樫が、俺が何とかする、と言った。富樫は、口論の末、息吹を、息吹のナイフで殺害。キーを柳谷さんに預けて逃走した。キーは殺害時、息吹のポケットから落ちたものだった。柳谷さんは、今は改心して営業マンをしている富樫を庇った。キーは新宿駅のコインロッカーのキー。コインロッカーは、度々犯罪に利用される為にキーがどこか判別出来る細工がしてある。出てきたのは、麻薬だ。息吹が所属していた弥生三月組に四課が向かった。また、押収したSDから、半グレの『お仲間商会』と関わっていることも判明したので、二課も向かった。こちらは、特殊詐欺のリストだ。富樫は、素直に自供したよ。潜伏先は、武蔵野公園だった。見付けたのは、警邏中の巡査だった。柳谷さんの処分は、不要だ。『タレコミ』に来たが、誤情報だった、それだけだ。」

 志摩管理官は一気に言うと、天井を仰ぎ見た。管理官の顔に涙が一筋流れた。

 村松は、蘭子の指示を待たず、出て行った。


 午後7時。眩目家。

「巡査長最後の事件、だったな。」

 珍しく、蘭子は鼻歌を歌いながら、オムライスを作った。

「赤飯が間に合わないからな。そうだ。今度、競争しよう。」

「競争?誰が勝敗決めるの?」

「井関さん。」

「異議無し。」


 蘭子のスマホが鳴動した。

 村松だ。話が長い。

「これから、旦那とチョメチョメするから遠慮しろ。」

 そう言って振り返った蘭子は、舌なめずりをした。


 恐い。

 ―完―





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