70.躙り口(にじりぐち)殺人事件
「ガイシャは、城野ゆき。昔、女優をやっていただけあって、80歳でも美人だ。で、発見者は、妹の奥山紫野。彼岸だから、と訪ねて来たら、姉が昏倒していた。広い家で、奥の庭に茶室があり、躙り口付近にゲソコンがあった。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
新垣舞・・・捜査四課課長。
越前屋幸太・・・捜査三課課長。
神道助六・・・捜査二課課長。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『後頭部殴打殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、城野ゆき。昔、女優をやっていただけあって、80歳でも美人だ。で、発見者は、妹の奥山紫野。彼岸だから、と訪ねて来たら、姉が昏倒していた。広い家で、奥の庭に茶室があり、躙り口付近にゲソコンがあった。ここが侵入口かと思われたが、妹の話によると、玄関は開いていた。井関さん。」
「今回は、はっきり男のゲソコン。押し入れから見つかった男のゲソコンと思われる。で、玄関はピッキングされていた。この男もガイシャだな。オンナのガイシャ、いや、城野は後頭部を叩かれていて、押し入れ男は腹部を殴打されている。詰まり、腕の立つ人間による撲殺だ。」
「現状で推理出来ることは、押し入れ男である民部営造は、空き巣として侵入、一方、城野殺害目的でホシは玄関からピッキングして侵入した。2人の侵入者は鉢合わせ、民部は巻き添えで殺害された。2人のガイシャが同じように転がっていなかったのは、オンナの方が後、ということになる。」
蘭子に割り込んで、「それと、城野はレイプされた後に殺された。」と井関さんは言った。
「80歳の高齢者をレイプ・・・けだものよ!」と、村松は叫んだ。
尤もだ。
「井関さん達は、家の周囲を再確認して下さい。辻さん達は、城野が以前所属していた会社で聞き込みを。」
「俺達はPCを探せないよな。」と大曲先輩は、珍しく弱音を吐いた。
「いや、城野はスマホを2台持っていることは、ケータイキャリアで確認済だ。妹が発見したのは、台所にあった1台だけ。妹は、もう1台の存在を知らなかった。」と、蘭子は言った。
「詰まり、もう1台はホシが持って行ったか、あの屋敷のどこかにあるか、か。了解!!」
大曲先輩は張り切って跳びだした。
俺は、慌てて、後を追った。
午後2時。クルマの中。
珍しく大曲先輩が運転している。集中力を高める為だ。
「相変わらず、手を打つのが早いなあ。」
「恐らく事件の概要を掴んでいるな。」
午後3時。城野家。
「雪見障子か。流石、風流だなあ。」
暫くガラス障子を見ていた先輩は、そっと、障子紙が貼られている部分を外した。
出てきた。マイクロSDだ。
「おい、眩目。他のも外してみろ。」
俺は、言われた通り、外した。
出てきた。全部で10枚。
寝室や書斎、茶室を確認したが、同じ作りではない。
そりゃあそうだ。大曲先輩の説明によると、障子が上にスライドした状態で、雨戸が開いていると、内庭が見える。雪が降っていれば、降っている雪を眺めることが出来る。
午後6時。捜査一課横の大会議室。『後頭部殴打殺人事件』本部。
取り調べ室から、蘭子、新垣、神道、越前屋の各課長と、管理官が出てきた。
越前屋課長は、捜査三課の課長だ。
前科者データで、民部は空き巣のマエがあったことが判っている。
蘭子は、新垣課長の協力、と言うか、捜査四課の協力で、城野の甥、詰まり、奥山の息子がチンピラ上がりだと判明、行方を追っていたが、逮捕、全てを自供したそうだ。
「城野は、PCは持っていないが、スマホは扱えた。仲のいい甥である、奥山計とSNSで交信していたが、悪い仲間と縁が切れていないことを心配していた。計を呼び、説教する積りが、不意に訪れた計は、計の『特殊詐欺』データのありかを巡り口論になった。そこに想定外の事が起きた。空き巣の民部が現れたのだ。てっきり城野の罠だと思った計は民部を殺害、民部に思い知らせる悪意で叔母をレイプし、殺害した。異常な興奮状態だったそうだ。母親の奥山は卒倒した。村松が119番し、病院まで付き添っている。」
それで、一課、二課、三課、四課総出か。計は、反社の『受け子』か。
午後7時半。眩目家。
「質素な家で良かったな。まあ、警察官の家を狙ったら、アウトだけどな。」
「妹さんは、気の毒だね。」
「ああ、立ち直って欲しいな。お前はもう立ち直っているな。」
え?
―完―
※雪見障子とは
※雪見障子とは、上半分が障子、下半分にガラスがはめ込まれた建具です。
※普通の障子の場合、外の様子をながめるためには開け放つ必要がありますが、雪見障子は開けなくてもいつでもガラス部分から景色がのぞめるのが特徴です。
冬に庭に積もる雪などを室内から楽しめるように作られたため、雪見障子と呼ばれています。一般の家屋のほかに旅館でもよく使われており、庭園に面した部屋などに設置されます。
※普通の障子は太陽の光をさえぎるため室内が暗くなりがちですが、雪見障子はガラス部分から光が差し込むので採光の面で優れています。
反面、ガラスの重みが開閉の妨げになったり、割れて危険だったりというデメリットもあります。
※個人情報ですが、当方の家のガラス戸は『雪見障子』です。
風流なのはいいいのですが、障子を外して貼り替えるのは大変です。
慣れもあるのですが。
クライングフリーマン




