65.名家不倫殺人事件
「ガイシャは、天宮陽子。ライブ活動も行うジャズ歌手。ホシは、元陸自の三佐寒露伊智郎。寒露は天宮をライブハウスで刺した直後、自らも命を絶った。自衛隊の備品ではない。ネット通販のアーミーナイフだ。井関さん。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『名家不倫殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、天宮陽子。ライブ活動も行うジャズ歌手。ホシは、元陸自の三佐寒露伊智郎。寒露は天宮をライブハウスで刺した直後、自らも命を絶った。自衛隊の備品ではない。ネット通販のアーミーナイフだ。井関さん。」
「アーミーナイフと言うのは、十徳ナイフとも言われ、色んな刃物のセットだ。素人には殺人の武器としては使いづらい。が、元自衛官なら簡単だ。急所も熟知しているしな。」
「昨日の陸自の記者会見にあったように、寒露は既に退役している。痴話喧嘩とは言え、残念な事だ。そして、ホシが亡くなっているので、書類送検が決まっている。開光君は、『より詳しい調査』で、マスコミの誤解・偏向を無くしたい、と総監に直訴したそうだな。」
「はい。いいよーって言ってくれました。」
蘭子が大出世したのは、志摩管理監の助言もあるが、総監のお気に入りでもあったからだ。
一体、どうやって・・・。
「何だって?眩目捜査官。」
しまった、声に出た。
「いやそのう。痴話喧嘩ってことになってるけど。SNSで知り合って、肉体関係出来て、別れたいって言われたからって、心中するところまで行くかなあ、って。」
「眩目。いいこと言うなあ。俺、尊敬しちゃう。」と、大曲先輩は戯けて言った。
午後2時。寒露家。広間。
「そうですか。順当な処理ですな。ご苦労様です。随意にお調べ下さい。あ、日本刀は、ちゃんと登録証がありますよ。」
「名家とお聞きしていますが、代々・・・。」
「まあ、そうですな。」
蘭子は、凶器がアーミーナイフであることも引っかかっていた。
寒露は、『実家に同居』である。嫁と共に別居していた訳では無い。
ならば、その先祖代々の日本刀だって、凶器に使える筈だ。
寒露鉄山が席を外した所で、蘭子は、大胆にも日本刀の『鍔』を弄った。
そして、マイクロSDを取り出すと、何食わぬ顔で元に戻した。
「大曲の進捗を確認しよう、眩目。」
「はい。」
鉄山は、不思議そうな顔で、部屋に残った。
書斎。
「あったか、大曲。」と、蘭子は大曲先輩に尋ねた。
「まあ、流石、元自衛官で、名家の坊ちゃん。真面目だったみたい。」と、自分の胸ポケットをチラ見した。
午後4時。捜査一課横の大会議室。『名家不倫殺人事件』本部。
村松が、蘭子の書いたメモを必死にタブレットに打ち込んでいる。
書類送検に必要な書類だ。
「唾の中のマイクロSDとPCのバックアップメモリを併せて1つのファイルになり、そこに真相が書かれていました。寒露はスパイとして天宮に近づき、天宮が自衛隊の機密文書を漏洩させていたこと、彼女に文書を渡した、自衛隊内の幹部の名前を知ったことが書かれていました。これ以上、機密が漏れないようにする為、敵国に知らしめる為に、無理心中に見せかけたようです。表には出せない真実でした。」
蘭子の言葉に、管理官はただ頷いただけだった。
午後8時。眩目家。
蘭子が言い出して、トランプをしていた。
2人だけの『ババ抜き』である。
何が面白いのか、とは思わない。
蘭子は、気を静めているのだ。
勘は、見事に当たっていた。
だが、やはり三佐は気の毒だった。
政府は、『国家情報局』を立ち上げた。
どの程度のものかは判らない。
だが、『スパイ天国』と言われながら、警察の公安も自衛隊の陸自も諜報活動をしていた。
四課にも、潜入捜査官はいる。
我々は、目の前の仕事をまずこなす義務がある。
その夜は、結局眠るまで、ババ抜きをしていた。
お休み、蘭子。
―完―




