63. あつささむさも悲願まで
ガイシャは、岡迫英二と倉野美智子。2人は、倉野家でバタフライナイフで刺し合って亡くなっていた。回覧板を持って来た近所の主婦が発見者だ。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。蘭子と同期。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『無理心中事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、岡迫英二と倉野美智子。2人は、倉野家でバタフライナイフで刺し合って亡くなっていた。回覧板を持って来た近所の主婦が発見者だ。発見者の辻阪の奥さんの家と倉野家の間に2軒の家があるが、どちらも今は空き家になっていて、不動産屋が管理している。2人の出入りを見た者はいない。井関さん。」
「死後硬直から、24時間以上前が死亡推定時刻。問題が3つ。1つは、両者は立ったままで発見された。もう1つは、両者とも胸の同じ位置に刺さっていた。そして、四肢に変な傷。マスコミが捏造しやすい案件だな。」
「動機が何であれ、ホシはプロだ。」
「呼んだ?」と、新垣が入ってきた。
「お前、地獄耳だな。」
「蘭子。超能力は疑わないの?」
「お前にはない。」
「えーっと、いいかな?PCが開いていて、遺書らしき文面があった。」
「プロだな。」と、。大曲先輩も言った。
「呼んだ?」と、神道が入ってきた。
「呼んでねえし。あ、3倍返し、ありがとな。それは、言っておく。」
「俺って義理堅いんだよね。」
皆、くすくす笑っている。
「岡迫英二ってさ。特殊詐欺のマエがあるんだよね。白神会とも付き合いあるって聞いてる。つまり。」
「「「ただの心中じゃない!!」」」
3人の課長は、唱和した。
息、ぴったり。
午後2時。
捜査会議が進む中、村松が、「あのー、出頭してきましたけど。倉野剛って子が。」と言った。
「私が行こう。村松、書記頼む。」と、管理官が出て行った。
「息子がプロ、なんですか?」と、俺はつい言ってしまい。「真吉。今夜、サービス2割増しな。」と蘭子に言われた。
秋野と智子が必死に笑いを堪えている。
午後3時。倉野家。
張り番の警察官に挨拶し、大曲先輩は脇目も振らず、状況証拠のPCに向かう。
俺は、冷蔵庫の下の隠し引き出しを見付けた。
大曲先輩は、起動しているファイルを持参したUSBに保存した。
「これが死亡推定時刻、か。眩目。去年のタイムスタンプだ。」
「どういうことです?」
「ホシが持ち込んだんだよ。メモリからコピって、起動。詰まり、殺害計画は去年からあった。そのメモリ、挿してみ。」
俺が言われた通りメモリを挿すと、ファイルが幾つもあった。
大曲先輩が確認していたファイルは無かった。その代わり、日記があった。
倉野の仕事は化粧品販売だったが、実は大勝商会から送り込まれたスパイだった。
スパイだったことがばれそうだから、大事なファイルはクラウドに保存する、と書いてある。
クラウド?どこかのサイトか。
白神会は、プロを使って、無理心中に見せかけ殺したが、クラウドのファイルはどこか聞き出せなかった。
大曲先輩は、迷わず村松のスマホに電話した。
「村松。息子にタブレット持ってるか聞いてきれ。」
・・・
「学校にあるそうです。」
「それだ。」
大曲先輩は、今度は、蘭子に電話した。
「息子の学校に誰か行かせてくれ。」
午後5時。捜査一課横の大会議室。『無理心中事件』本部。
取り調べ室から、管理官と村松が出てきた。
「息子は、現実から逃げる為、逃げていた。見たんだ、現場を。息子は以前、岡迫と付き合っている母親と喧嘩していた。自分が原因で心中したと思い込んだ。白神会が必死に追い掛けたファイルは、息子のタブレットから、あるサイトに送られていた。高校生の、お悩み相談のサイトだ。ファイルには、大物政治家達のリストがあった。後は、四課の仕事だな。」と、管理官は言った。
「村松。どうだった?」と、蘭子は尋ねた。
「落ち着いています。1つ嘘ちきました。お母さんは、組織から抜けようとしていた、君の為に、って。」
泣きじゃくる村松の肩を抱き、蘭子は「上出来だ。」とだけ言った。
午後7時。眩目家。
今夜は、青椒肉絲と回鍋肉。冷凍食品だ。
「倉野の息子な。叔父さんが引き取るらしい。来年の受験までな。寮のある大学に行きたいって言っているらしい。」
「いい息子だね。」「将来、子供持ったら、正しく育てよう。今は・・・。」
蘭子の目は、猛烈に食べながら、俺の下半身を舐め回すように見ていた。
恐い。
―完―




