62. ブロック崩し
ガイシャは、古屋智志。小学5年生。エアコンが最大温度で点けっぱなしだった。母親は、会社の慰安旅行で一泊二日で熱海に行っていた。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
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※「ブロック崩し」とは、画面の下にあるバーを操作しながら、跳ね返るボールを使ってブロックを消していくゲームです。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『脱水症殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、古屋智志。小学5年生。エアコンが最大温度で点けっぱなしだった。母親は、会社の慰安旅行で一泊二日で熱海に行っていた。その母親が発見者だ。玄関は施錠されておらず、智志くんが中に入れたものと思われる。隣家は空き家で、異変に気づく者は、いなかった。母親は半狂乱で、捜査員達は困った。村松が行って宥めて、やっと落ち着いた。村松、よくやったな。」
「落ち着いて、って言わなかっただけです。少年課にいた頃、教わりました。」
「そうか。辻さん、後で聞き込み行くとき、村松を連れて行って下さい。あ、聞き込み先は母親の会社でなく、智志君の学校と近所です。」
「了解しました。」
「どうした、大曲。」
「いや。後で言います。」
「じゃ、私から。エアコンを調べたら、タイマーをセットしようとした形跡がありました。秋野。」
「リモコンは、ご存じの通り、赤外線です。この特徴は受信部に真っ直ぐ向けて操作することです。ホシは、慌てて、タイマーでオフした積りが、失敗しているんです。詰まり、エアコン本体は、設定温度を受信したまま、タイマーオフの設定が出来ていなかったんです。」
「ホシは、慌てていたんでしょう。頭に打撲跡もありました。揉み合って気絶してしまい、パニックになって、エアコンを切らずに、タイマーのボタンだけ押して逃走。119番したら助かった。また、母親が旅行中でなく、例えば買物に行って留守だったら、こうはならなかった。座った位置からずり落ちたことから、一旦目覚めてエアコンを切ろうとしたかも知れません。エアコンのリモコンまで1.5メートル。悲惨としか言いようがない。」
「カレンダーを見て、ホシは逃げたんでしょうね。」と、智子が言った。
「ああ。大人の犯行じゃないかもな。」と、蘭子はぽつりと言った。
午後2時半。古屋家。
2階家だが、勉強部屋は広かった。ゲーム機が沢山あった。
「眩目。ゲーム機とバックアップメモリ、回収してくれ。」
大曲先輩はPCを操作して、声を上げた。
「喧嘩、の原因はコレだ。」
「え???」
午後5時。捜査一課横の大会議室。『脱水症殺人事件』本部。
取り調べ室から、管理官と蘭子が出てきた。
「辻さんが、上手く聞き出せないのを、村松がまたカバーしてくれた。女の子からすぐに、古屋君と親しい友人黒田君が浮かび上がった。井関さん達が言ったように、喧嘩して昏倒した古屋君が即死したと思い込み、エアコンを操作したが、設定を誤った。アリバイ作りではなく、遺体が寒いかも、と思ったらしい。動機は、大曲君が推測した通り、ゲームだ。学校でプログラミングを覚え、優秀な古屋君は、自分でゲームを作った。新しい『ブロック崩し』だそうだ。で、古屋君は、まだ未完成だから、と言うのを無理矢理試そうとした黒田君は押し倒してしまった。」
「黒田君の母親も半狂乱だ。村松、出来るな。」と、蘭子は言った。
「はい。」村松は涙を拭いて応えた。
午後7時。眩目家。
焼き芋を頬張りながら、「また、蘭子の勘が当たったね。どうして?」と俺は尋ねてみた。
「大人なら、もっと工作する。それに、エアコンなんか関係無い。エアコンで工作するなら、玄関を施錠する。死亡推定時刻を誤魔化す為にな。だが、母親が帰宅する時間は、判っていた。お前、カレンダー見たか?」
「あ。」「智子の報告によると、検証する時、カレンダーが目に入ったって言って無かったか?」
「あ。」「あ、じゃないよ。屁こいてやる。」
ぷううう。
臭い。
「おい。臭い消し、しよう。」
嫌な予感がする。
ぷううう。
―完―




