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60. 犯人はおまえだ

「ママ、あの人、変。さっき来た時と同じ格好で立ってる。」

母親は、不審に思って近づいて、気が付いた。

男の足元に血だまりが出来ている。

母親の悲鳴に駆けつけた、食品売り場の主任がやってきて、110番した。


 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。


 =================================


 午前10時。スーパーあじわい。

 通り過ぎようとした買い物客の子供が気づいた。


「ママ、あの人、変。さっき来た時と同じ格好で立ってる。」

 母親は、不審に思って近づいて、気が付いた。

 男の足元に血だまりが出来ている。

 母親の悲鳴に駆けつけた、食品売り場の主任がやってきて、110番した。


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『旧在庫置き場殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは・・・今の所、身元不明。所持品なし。目撃者なし。前科者データにはないし、お手上げ状態だ。」

「凶器は、刺身包丁と思われる。智子。」

「現場は、昔在庫置き場として使っていたそうで、50センチ位の通路ですが、行き止まりになっています。消防から注意を受けてから、普段何も置いてないそうです。念の為、通路奥に行ってみたら、血の付いた刺身包丁がありました。灯りがないと、気づかないですね。」、智子が報告した。

「指紋はないが、血痕から、ガイシャの血が付着したと、すぐ判った。」と、井関は続けた。

「明らかに流し、じゃない。現場を知っている人間だ。大曲、眩目、どうだった?」と蘭子が振った。

「鮮魚売り場主任に確認したら、無くなった刺身包丁に似ていると言うので、『銘』をアップにして見せたら、同じ銘だったので、スーパーの包丁と思われます。あ、銘というのは、刃物を作った職人やメーカーの刻印のようなものです。大阪・堺の刃物職人の銘です。」

 大曲先輩に続いて、俺は報告した。

「ガイシャの写真を見せましたが、主任は現従業員にも、元従業員にもいない、って答えました。それと、部外者立ち入り禁止、とも。」

「こんな面白い事件は久しぶりだ。」と、蘭子の目が爛々と輝いた。

「紛失していた凶器は、スーパーのもの。ガイシャは従業員じゃない。じゃ、誰が包丁を持ちだしたんだ?」

 皆、呆然としている。

「今度は、私がスーパーに行く。村松、出番だ。『若奥様』になれ。」

「はぁあい。」

 村松は、張り切って答えた。

「じゃ、俺達は、ガイシャの自宅訪問って訳にはいかないな。」

「ああ。お前達は発見者の奥さんの所に行け。検証書類を無くしたことにしてな。辻さん達は、スーパーの本部に行って、『クレーマー処理』の対処法を聞いてきて下さい。『ついで』の質問にして。」

 蘭子には勝算があるらしい。


 俺達は、言われた通り、ホントは知っていることを、初動の機動隊員が紛失したことにして、発見者の根岸初音に尋ねた。

 尤もらしくするため、俺はタブレットにメモって行った。

「ありがとうございました。お手数をかけました。助かります。ご協力感謝します。」

 そう言って、俺達は辞去した。

 俺は、先輩の才能をまた見せつけられた。

 見送る子供を隠し撮りしていたのだ。

 そして、クルマに戻って、盗聴マイクからの音声を聞いた。

「ママ、警察に捕まるのか、と思った。」

「捕まってもいいけどね、パパのカタキとったし。」

 その会話が全てを物語っていた。


 午後5時。捜査一課横の大会議室。『旧在庫置き場殺人事件』本部。

 取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官が出てきた。

「案外、素直に吐いたよ。辻さんと連絡を執りながら、クレーマー処理に失敗した、前店長兼鮮魚売り場主任の根岸は、リストラされた。根岸の妻初音は、1年かかって、クレームが趣味だった小山内均を、ネットの口コミサイトから見付け出し、あの現場におびき出し、殺した。専業主婦だった初音は、違うチェーン店のスーパーで働きながら、情報を収集することもしていた。小山内は、実は、『リストラ仕上げ人』と別名で呼ばれる組織の一員だった。早い話、半グレだ。新垣課長が、今ガサイレに向かった。」


 午後7時。眩目家。

 お好み焼きを食べながら、俺は蘭子に尋ねた。後の『リスク』を踏まえて。

「なんでクレーム関係だって?」

「あの包丁は、夫の遺品だった。智子から、手に変なタコがあるって聞いたからピンと来た。何で刺したままにしなかったんだろう、って言葉も引っかかった。辻さんがリストラ理由を聞き出してくれて確信したよ。あの通路に消防法に引っかかる荷物を置いたのは、根岸、いや、根岸さんじゃない。あの現場は意味があったんだ。小山内に工作された場所だったんだ。根岸の奥さんは、ただ殺すだけじゃ物足り無かったのさ。」

「スーパーへの告発?」


「そう、今日は、どんな『復讐』してあげっよかな、真吉。」


 やっぱり恐い嫁だ。


 ―完―





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