38.日和見感染症殺人事件
ガイシャ麻生圭祐は、体中に妙な斑点が出ていた。井関さん、生前のものですか?」
「はい。死斑じゃないですね。通院していたという内科に問い合わせた所、病院の皮膚科を紹介して、3日前に検査したばかりだったようです。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
神道助六・・・捜査二課課長。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『新皮膚病怪死事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャ麻生圭祐は、体中に妙な斑点が出ていた。井関さん、生前のものですか?」
「はい。死斑じゃないですね。通院していたという内科に問い合わせた所、病院の皮膚科を紹介して、3日前に検査したばかりだったようです。資料を取り寄せましたが、何かの薬物の副作用ではないか?と診断されています。殺傷の痕跡はありません。ただ、家に侵入あいた形跡があるので、ゲソコンを調べています。幸いと言うべきか、一昨夜は雪でした。」
「成程。では、結果が分かり次第、報告をお願いします。辻さん、聞き込みは?」
「今、井関さんが言われた通り、雪でしたから、ご近所は皆『引きこもって』いました。親族に提供して貰った資料で交遊関係を当たります。」
「大曲。ガイシャのケータイ通信記録は?」
「いちばん多いのが、会社でした。行ってみるとマンションで、もぬけのから。幽霊会社ですね。」
「呼んだ?」
そう言って、入って来たのは、捜査二課の大道だった。
「ここ1年で、副作用が大きい薬を買った被害に逢った人が何人かいます。老人性の乾燥肌に悩む人が多くて、イカサマクリームの通販やかゆみ止めの内服薬の詐欺が横行しています。半グレが黒幕にいるかも知れませんが、被害者本人が黙ってしまってて、届け出は家族か親族です。」
「じゃ、大道さん、副作用で亡くなったのは?」
「今回が初めてだよ。立証されれば、芋づるだが。」
「あのう。」
「何だ、智子のカレシ。」と、蘭子が言うと、秋野は照れて、智子が俯いている。
「よく、薬局やドラッグストアで風邪薬なんか買うと、容量・用法を守れ、とか、他に同系統のを利用していないか?って尋ねられますよね。」
「うん・・・あ、ガイシャは、複数の新薬を飲んで、飲み合わせで亡くなったんじゃないかっていうことか。」と、管理官は感心した。
「あり得ない話じゃないな。」
「課長。ゲソコンのホシは、薬を回収しに来たのかも。秋野の言う通り、飲み合わせが死因になるかも知れないけど、通販で売っているのなら、成分がおかしい薬を誤配する場合もあるかも。」
「それが、消えた会社か。大道。被害に遭った人達が利用した会社や薬は?」
「開光。これのことかな?1個借り、な。」
「・・・有限会社村田総合メディカル、か。管理官、他の自治体で会社登録してませんかね、似た名前で。」
「調べてみよう。」
午後4時。捜査一課横の大会議室。『新皮膚病怪死事件』本部。
取り調べ室から、蘭子が出てきた。
「オシッコちびりやがった。優しく、問いただしただけなのに。」
恐らく、優しくはない、被疑者には。
「隣国製品で、1日一回1錠、になっているのに、毎食後2錠になっていた、他の製品の使い回しだ。薬剤ビンと錠剤の名前が違う。会社は、それに気づいて、唯一注文してきた、麻生さん宅を訪れ、亡くなったのを確認した。」
「開光くん、唯一って?」
「ひとびん、1万二千円プラス消費税プラス送料。」
「毒が蓄積して行った、ってことか。これだから、通販は信用出来ない。」と、辻は言ったが、「お金持ちで、かゆみに悩んでいたら、飛びつくかも。」と、蒔が言った。
「『日和見感染症』。それが、死因だということだ。聞き慣れない名前だと思うが、要するに、免疫力が極端に下がったんだ。」と、井関が締め括った。
午後7時。眩目家。
「病院に確認したら、まずは軟膏かクリームで様子見するのが正しい治療だと言っていたよ。内服だと、取り返しが付かないから、余程でないと勧めないらしい。」
「免疫力が下がると、がんにもなりやすいんだよね。」と、俺が言うと、蘭子は、「どれ、確認してみよう。」と、俺の手を引き・・・。
ああ、口は禍の元だあ。
―完―
※日和見感染症は、がん、エイズ、抗がん剤治療などで免疫力が著しく低下した(易感染宿主)人に、通常は無害な弱毒菌が感染して発症する病気です。難治性で重症化しやすく、細菌(緑膿菌など)、真菌、ウイルス(ヘルペスなど)が主な原因となります。




