292.私は嘘をもう、しません。
掃除をして、ゴミ捨て場にゴミ袋を置きに来た店員黒田勉。
見慣れないポリバケツを発見した。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前7時。国道沿いのある、コンビニ。
掃除をして、ゴミ捨て場にゴミ袋を置きに来た店員黒田勉。
見慣れないポリバケツを発見した。
区役所から収集に来る時は、決められたゴミ袋に入れておかないと、回収して貰えない。
コンビニでは、ポリバケツは一時的なゴミを入れるのにポリバケツを置いているが、本部から配給されているものは決まっている。
それに、これは、一回り大きい。
蓋を開けてみて、腰を抜かしそうになった。
だが、自分一人で処理するより、深夜勤務していた店長に報告する方が早い。
黒田が報告に行くと、店長は迷わず110番通報した。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「あ、この人。」
声を上げたのは、赤井だった。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『強盗殺人死体遺棄事件』本部。
溝内課長が同席している。
管理官が説明した。
「ガイシャは、元千葉県議会議長の城ノ内勇。贈収賄疑惑で騒がれた後、議員辞職した。一昨日から細君の実家の法事で上京していた。アルコール好きなので、あまり心配されていなかったが、昨日もホテルにも自宅にも帰らないので、行方不明者届が出されていた。そうですね、課長。」と、管理官は溝内課長を見た。
「昨日、午後2時に受理した案件です。ホテルに帰らなかった時点で何者かに拉致されたのかも知れません。」
「死亡推定時刻から見て、一昨日、殺害されています。ホシは、捨てる場所を探していたのかも知れません。あるいは・・・いや、妄想は止めましょう。毒殺です。青酸系。」
「機捜の赤井は、郷里が同じなので、よく知っていた。ガイシャは、一環して『金品の湯授受』を否定していたそうだ。そして、秋野、スライドを。」
秋野がスライドをスクリーンに出した。
遺留品の中に、『私は嘘をもうしません』と書いた文字の上から×印が付いている。
「ホシは、未だに贈収賄があったと思っているのかな?」と、蒔さんが発言した。
「思わせたい、のかも。」と、神道課長が入って来た。
「追求していた県議の一人で、胴元隆という県議が、半グレの銚子外れ会とつながりがあるらしい。」
「神道。それなら、その半グレがトドメを刺したのか?議員辞職したのに。」と、蘭子が尋ねた。
「謎を解くのは、蘭子ちゃんの得意技でしょ?この前の事件も、現場に乗り込んだって言うし。」
「神道、焼いてんのか?」
「少しね。」
「辻さん達は、県議会を当たってください。大曲達と村松は、城ノ内家へ。溝内課長。奥さんが待機しておられるんですね?」
「はい。その通りです。」
午後2時。クルマの中。
「誰が得するのか・・・。」と、村松は首を捻った。
「原因動機は、贈収賄じゃないってことさ。もう辞職しているんだから。議長は、副議長が代行し、補欠選挙するらしいから。まあ、副議長が格上げだろう。」
午後3時半。千葉県銚子市。城ノ内家。
奥さんの梶子さんが、待っていてくれた。
土下座された。
「頭を上げてください。」
「でも、主人が・・・主人が・・・。」
大曲先輩は、例によって、『逆恨み』の話をした。
真実はともかく、これを言われると、遺族は落ち着く。
俺は、書庫に案内して貰い、大曲先輩は、書斎に入った。
奥さんは、アルバムを開いて、「この方が、主人と同期で、贈収賄を告発した郷原さん。裏切られた、と法事で私の親族にも愚痴を言っていました。」と、ハンカチで目を拭いながら、梶子さんは説明した。
「他に親しい方は?」
「最後まで庇ってくれたのが、同じく同期の片山さん。この方です。」
その時、書斎から大曲先輩が俺を呼んだ。
「奥さん、片山さん、ってご存じですか?」
「ええ。同じ党で、主人と親しかった人です。」
「ケータイメールのバックアップが、PCメールに転送されていたよ。事件の日、落ち合った相手は、片山さんだ。」
大曲先輩は、その場で蘭子にスマホで報告した。
「了解した。」と、短い答が聞こえた。
午後6時半。捜査一課横の大会議室。『強盗殺人死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、溝内課長、酒井優香、神道課長、皇係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
溝内課長、酒井優香、神道課長、皇係長はすぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、片山敬一、郷原慎二。それに、半グレの銚子外れ会の井下道夫。片山と郷原は、井下を通じて、仮想通貨賭博をしていた。ガイシャが、勘づいたと考えた片山と郷原は善玉と悪玉を演じ、議会から葬り、ガイシャ自身も葬った。勘づいたと考えたのが勘違いだったと気づいた時は、殺される寸前だった。手遅れだった。逡巡の末、井下に依頼して遺棄した。犯行現場は、片山の家だった。酒井が転送アプリのことを話すと、一気にゲロした。バカとしか言いようがない。」
「管理官。奥さんには、俺から伝えます。」と、大曲先輩は言った。
「よろしく頼む。」
午後8時。眩目家。
インスタントを食べながら、蘭子は尋ねた。
「今夜も『殺され』たいか?真吉。」
「はい。」
「明日、2日分だ。」
喜んでいいのか、悪いのか?
―完―
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。




