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293.あるアナウンサーの死

「キャー!!」と悲鳴を上げた城島に比べて、深井は冷静だった。

「口から血が出ている。殺人だわ。」

深井は、深呼吸をし、110番通報をした。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 午前11時。国道沿いのある、小学校。

 主婦の深井葉子と城島緑は、買物帰りに小学校の前を通った。

 裏門入口に、妙な玉を発見した2人は、紐が出ているので引っ張ってみた。

 すると、海パンとゴーグルの男が出て来た。

「キャー!!」と悲鳴を上げた城島に比べて、深井は冷静だった。

「口から血が出ている。殺人だわ。」

 深井は、深呼吸をし、110番通報をした。


 30分後、機捜と鑑識が到着した。

「発見者の深井さんと城島さん、ですね。」

「はい。」

「あ・・・木立裕一郎!」と、新山が叫んだ。


 ==================================

 =================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『小学校死体遺棄事件』本部。

 溝内課長が同席している。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、木立裕一郎。かつては、プロレスの名実況、全世界水泳大会の名実況で有名だった。夜のニュースショーを降板してから、あまり見かけなくなった。体力の限界という名目だったが、実は、局と折り合いが付かなくなった、という噂もある。そうだったね、蒔くん。」

「流行り病の時だったと思いますが、局が明らかな偏向報道をした為、ゲストに呼んだ医師に訴えられたことがあります。ガイシャが降板した後、偏向報道が激しくなり、アナウンサーが、現政権の批判をしたりしています。放送法というのがあって、【両論併記】というセオリーで賛否両論を公表するルールがあるのですが、どの局もルール違反をしています。ワイドショーなら言い訳もあるでしょうが、本来その手の番組はニュースショーと言われ、ニュースの報告だけが使命の筈ですが。済みません、私見です。」

「いいよ、蒔君。最近の事件でも偏向報道絡みが多かった。おかしな世の中だ。それで、井関さん。ガイシャを包んでいた玉と死因は?」

「窒息死です。こんなのは初めてのケースですね。外観は、運動会の玉転がしの玉に似ているが、アクリル板を加工している。そして、マジックのように、外から紐を引っ張って初めて割れる。口から血が出ていたのは、肺からの吐血です。残酷な殺し方だ。」

「一応、ガイシャはフリーだが、個人事務所を持っていて、事務所社長が溝内課長と遺体確認、面談している。辻さん達は、事務所と昔の職場、テレビ局を当たってください。今回は餅屋係長のチームと紅林係長のチームを応援に出します。村松も行け。大曲達は、木立家に行ってくれ。息子さんが待機している。」

「「「了解!!」」」


 午後2時半。クルマの中。

「私情を挟んじゃいけないと思いますけど・・・。」

「思いますけど、何だ?おれも、いい人だったと思う。捜査の進展如何だ。蘭子は、神道課長にも新垣課長にも打診した。」

「え?」

「単純に考えれば怨恨だ。だが、最近は、それが『うわべだけ』の状況証拠のことが多い。」

「そう、ですね。」


 午後3時半。木立家。

 ガイシャの息子さん、優太さんは、呆然としていた。

 大曲先輩が一通り段取りを説明してる内に、やっと正気を取り戻した。

「持ち物で、犯人が分かるのですね?」

「可能性の話です。逆恨み以外でも、シリアルキラーの場合もあります。捜査しないと道は見えてきません。」

「シリアルキラーの場合?神戸の少年の事件、ですか。」

「飽くまでも、今は仮定の話です。」

 俺達は書斎に入った。思ったより広い部屋だった。

「改築したんです。2部屋を1つに。父は合理主義でしたから。1部屋は母のものだったんです。一日に何往復もするのは、不経済だ、と言っていましたが、違うと思います。母と一緒にいたかったんです。どうぞ、大曲さんは、PCとタブレットを。眩目さん、でしたね。これが一冊しかないアルバムです。元は五冊でした。」

「合理主義、ですか。」

「ええ。母といたかったんです。」言いながら、優太さんは、涙ぐんだ。

 アルバムの殆どのページは、奥さんらしき女性の写真だった。違うのは、学生時代の写真と、局アナ時代の集合写真。背景から、熱海に旅行に行ったと分かる。

「公表しませんでしたが、あの番組を降りたのは、母を亡くしたことも大きかったと思います。私と妻は同居させて貰えませんでした。この人が、局アナ同期の蔵野さん。」


 大曲先輩のスマホが鳴動した。

 蘭子からだった。

「課長。酒井に応援頼んでいいいですか?」

「分かった。」という声が聞こえた。

「息子さん。PCとタブレット、お借りしていいですか?専門家にみて貰いたいんです。」

「お任せします。」


 午後5時半。捜査一課。第二応接室。

 酒井が先ず発言した。「流石、大曲警部補。ハッキングされていた。何かの秘密を知ってしまったのかも。」

「そして、消された、か。また、徹夜か。済まんな。」

「またまたー。本気で言ってないでしょ。んじゃ。」

 さっさと出て行った。

「照れ隠しが下手くそだな。」

「木立さんは、半グレの繋がりは無かった。が・・・。」

「が?」

「事務所社長蔵野は、仮想通貨のファンらしい。相手を今、特定中だ。」と、神道課長は言った。

「反社は関与していないよ、蘭子。そもそも、反社は、あんな玉作る位なら、鉛の弾をブッチ込む。」と、新垣課長は言った。

「木立さんを悪く言う人はいませんでした。実直な人なのに、最近隣国派に転向したのか、政権批判を始めたのが不思議だ、と皆さん、おっしゃっていました。」と、蒔さんが言った。

「他の局も同じでした。人が変わった印象だ、と言われました。」と、紅林係長が言った。

「裏がありそうですね、課長。」と、餅屋係長が言った。

「よし、持ち越しだ。進展有り次第、再集合。」


 翌日。午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。

 館内電話が鳴った。

 村松が取り上げ、スピーカーをオンにした。

「隣国からのハッキングよ。削除したメールを復元すると、蔵野の仮想通貨の件を公表されたくなかったら、総理のヘイトを続けろ、って言っている。最近、SNSでヘイトする有名人が多くなったのは、こういう手口で、弱み握った有名人を『手下』にしていたんだわ。」

 続いて、神道課長から電話が入った。

「今、別件でに日亜振興会をガサイレした。蔵野は、嵌められたんだ。胴元は、日亜振興会だった。元々パチンコ依存症だったから簡単に陥落したそうだ。社員に、元溶接工がいたから、そこから辿った。」


 午後3時。捜査一課横の大会議室。『小学校死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、酒井優香、餅屋係長、紅林係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 神道課長、酒井優香、餅屋係長、紅林係長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、日亜振興会の元溶接工の音無仁、社長の日村隆。日亜振興会は提携している隣国マフィア系の会社の依頼で蔵野を仮想通貨で損をさせ、木立の名声を利用して、ヘイトさせていた。日亜振興会に行った木立は、蔵野の借金は何とかするから手を引かせてくれ、と頼んだ。日村は、木立を折檻の上、妙な球に押し込め殺害、遺棄した。海パンとゴーグルは、全世界水泳の実況をしていたからだそうだ。息子の優太氏が葬儀を行う。行ける者は行ってやってくれ。」


 翌日。午後5時。葬儀会館。

 マスコミが来そうなので、俺と蘭子、大曲先輩と村松はお通夜の会場に行き、手を合わせて帰ってきた。


 午後6時。眩目家。

「っさ、宿題を片づけようか、眩目くん。」

 蘭子は、喪服も下着も脱ぎ捨てた。

 俺は、心の中で、実況した。


 ―完―


 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。警部。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。




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