291.電話機の真実
前回のあらすじ。
110番通報があり、「殺される」と言った途中で、電話は切れた。
警察官が確認に行くと、この家の主である板垣恵介が血を流して倒れていた。
側には、古い電話機の破片が落ちていた。だが、その電話機は見付けることが出来無かった。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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前回のあらすじ。
110番通報があり、「殺される」と言った途中で、電話は切れた。
警察官が確認に行くと、この家の主である板垣恵介が血を流して倒れていた。
側には、古い電話機の破片が落ちていた。だが、その電話機は見付けることが出来無かった。
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翌日。午前9時。捜査一課。第二応接室。
「辻さん達は、もう一度、会社に行き、資産状況を確認してください。管理官。令状をお願いします。」
「令状?」
「捜索令状です。凶器が見つかる可能性があります。」
「了解した。」
管理官は、子細を確認せず、出て行った。
「皇係長のチームと紅林係長のチームは、会社を捜索してください。大曲達と村松は、ご近所を聞き込みしてくれ。特に、板垣家への出入りだ。板垣家には、私も行く。大曲。妹さんに話を通してくれ。」
「「「了解!!」」
午前10時。クルマの中。
「何か、掴んだのかな?聞いてる?眩目。」
「いえ。夜中に飛び起きて、『そうか!!』って言いましたけど。」と、俺は先輩に報告した。
「夢の中で推理したんだわ。」と、村松は言った。
「正夢か逆夢か、確認したくなったか。」と、大曲先輩は唸った。
蘭子が現場に出動することは、珍しいことだ。
表向きは、判子押すだけの窓際族だから。
だが、蘭子は、鑑識課と共に出動した。
万一、マスコミが来ていても、鑑識課は怪しまれない。
鑑識課は、言わば、『警察の黒子』だから、来ていてもマイクを向けてくる者はいない。
午前10時半。板垣家の北隣の道上家。
大曲先輩は、『大きな物音を聞かなかったか』と尋ねた。
道上夫人は、顔を横に振った。
続いて、板垣家の向かいの家に行くと、人の気配がない。
「そこは、ご主人が亡くなって、空き家ですよ。」と、道上夫人は教えてくれた。
「南隣の佐久間さんは、九州に旅行中ですよ。」と、ついでに教えてくれた。
地理を確認した。
『白昼の死角』だ。佐久間家の裏から私道に出られる。
『ホシの侵入路』が判明した。
午前11時。板垣家。
俺達が入って行くと、井関さんが出て来てこう言った。
「犯行現場は、玄関の電話機の側じゃない。風呂場だ。」
「ホシは、ガイシャと『協力』して、自殺したんだ。真吉。以前、お前が風呂場で転倒して、徹底して掃除したことがあっただろ。」と、蘭子が問い、俺は思い出して頷いた。
「マットと浴槽の縁から、反応が出ました。」と、新山が報告した。
「一体、どういう・・・。」
かほるさんが、青ざめていた。
「この風呂の洗い場で、ガイシャは風呂マットの上に立った。そして、風呂マットを『テーブルクロス抜き』の要領で抜く。『テーブルクロス抜き』のように、立っている人物だけ残ることはない。ガイシャは倒れる。頭を打つ。ガイシャは脳梗塞の経験がある。そして、亡くなったのを確認して、ホシの協力者とホシは、玄関迄マットを担架替わりにして運ぶ。協力者が偽装工作をしている間にホシは浴槽に水を張り、マットを壁に立て、水がある程度張れた後、縁を拭い、風呂蓋カバーをかける。すると、入浴準備中の風呂場が出来上がる。」
「それで、殺害現場が無くなる。そうか。普通は、ドアを開けて、その状態なら、詳しく見ない。」
「俺達も、消えた電話機しか頭になかったから、詳しく見なかった。反省するよ。」と、井関さんは言った。
「玄関に運んだ遺体の側に、『以前』壊れた電話機の破片に痛いの血を塗り、放置。協力者はホシと共に車に戻って逃走した。向かいは空き家、隣は?大曲。」と、蘭子は先輩に尋ねた。
「旅行中だった。侵入経路・逃走経路があった。」
その時、大曲先輩のスマホに、紅林係長から電話があった。
先輩は、スピーカーをオンにした。
「専務の滝が吐きました。板垣社長の計画に協力したそうです。親請けの会社の倒産の煽りで、会社は『火の車』だったそうです。」
蘭子は、かほるさんに手錠をかけた。
「滝かほるさん、板垣恵介の自殺幇助の罪で、緊急逮捕する。確認しますが、山中さんを殺害したのは、板垣さんですね?」
かほるさんは、コクリと頷いた。
午後3時。捜査一課横の大会議室。『強盗殺人死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、井関課長、溝内課長、皇係長、紅林係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
井関課長、溝内課長、皇係長、紅林係長は、すぐに出て行った。
「ホシは、ガイシャの妹である滝かほる、会社の専務滝光男、そして、ガイシャ自身だった。ガイシャの会社は倒産寸前だった。山中さんを殺害したのは、ガイシャだった。そして、妹夫婦に手伝わせて、自殺した。Nシステムで、滝かほる、瀧光男の車の出入りが確認出来た。会社の設立メンバーである山中氏も協力を申し出た。会社の損失を埋めるには、会社の保険とガイシャの保険が必要だった。ガイシャは、予め、他の電話機を外して箱に入れてあった。警邏課の捜査で、無料電気製品リサイクル一時置き場に他の電話機はあった。開光課長の推理通り、風呂場でガイシャ自身が指揮して、自らの命を絶った。葬儀は、ガイシャの叔父が引き受けたそうだ。」
「我々が・・・。」と、井関さんが言いあっけると、遮って蘭子が、「お通夜は、私が出ます。」と言った。
午後5時半。眩目家。
村松がバターライスを炒めている。
「少しだけでも食べてください。それじゃ。」と、言い、村松は帰って行った。
「あの転倒が、役に・・・。」
「おしゃべりしないで、食べろ。冷めるぞ。」蘭子は、涙ぐんで言った。
「そうだね。僕もお通夜に・・・。」
「当たり前だ。」
今夜は、静かな夜になりそうだった。
―完―
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。




