290.消えた凶器
110番通報があり、係員は、警邏課各パトカーに連絡。
内容が、「殺される」と言うものだったからである。
警邏の警察官が到着すると、確かに玄関で、この家の主である板垣恵介が血を流して倒れていた。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前9時。警視庁指令センター。
110番通報があり、係員は、警邏課各パトカーに連絡。
内容が、「殺される」と言うものだったからである。
警邏の警察官が到着すると、確かに玄関で、この家の主である板垣恵介が血を流して倒れていた。
側には、古い電話機の破片が落ちていた。
後から来た機捜と鑑識が、家中隈なく探したが、電話機は見付けることが出来無かった。
遺体は、搬送された。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『強盗殺人死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、板垣恵介。建設会社板垣の社長だ。「殺される」と、110番通報があり、係員が応答している間に、「あっ!」という声を最後に通話が途切れた。電話ケーブルを切ったとかではなく、電話機のモジュールジャックがホシによって外されたものと思われる。モジュールプラグからは、ガイシャのもの以外発見されていない。ガイシャは、電話局によると、所謂たこ足配線をしていたらしく、電話機を8台置いていたらしい。井関さん。」
「独居だから、どこでも受話器を上げられるように、たこ足配線することは珍しくない。ガイシャを殴打した凶器は、その電話機の1台だと考えられる。秋野、写真。」
秋野はスライドをスクリーンに映した。
「古い留守番電話機の破片だった。この機種でまだ使えてたのか不思議に思ったが、メーカーに問い合わせたら、留守番電話でなく、受発信のみの電話として利用することは可能だそうだ。これは、マイクロカセットテープ式だ。マイクロカセットテープが無いが、ホシが持ち去ったのか、元々ガイシャが抜いてあったのかは分からない。問題は、凶器以外の7台の電話機全て無くなっていることだ。これも、ホシが持ち去ったのか、ガイシャが処分したのかは不明だ。」
「詰まり、身の危険を感じたガイシャが110番通報したが、ホシに勘づかれ、電話機を使って殴打し殺害した。顔見知りの犯行なら、残りの7台のありかは知っていただろう。詰まり、行きがかりではなく、何らかの怨恨があったと言うことだな。」
どれか、電話機が出て来ないと、手掛かりがないですね。」と、大曲先輩は腕を組んだ。
「辻さん達は、会社を当たってください。ガイシャの妹さんが今、遺体確認の上、溝内課長と面談している。大曲達は、合流して、板垣家に行ってくれ。あ、村松は会社の方に。」
「「「了解!!」」」
午後3時。板垣家。
ガイシャの妹、かほるさんが鍵を開けてくれた。
ピッキングの跡が無かったから、井関さんは、ガイシャがホシを招き入れた筈だと言っていた。
「申し訳ありません。兄がご迷惑をおかけして。」
「いえいえ。迷惑だなんて。捜査をするのが我々の仕事ですので。」
先輩は、一通り、段取りを説明した。
妹さんは、頻繁ではないが、たまに訪れていたとか。合鍵も預かっていた。
立派な書斎と立派な書庫だった。
大曲先輩は書斎に入り、俺はかほるさんにアルバムを見せて貰った。
「兄と葛城さんと山中さんは、中学からの仲良しで、会社も3人で立ち上げたんです。でも、葛城さんが10年前に亡くなったことで、糸が切れてしまいました。」
「糸が切れた、とは?」
「山中さんが、独立したんです。兄は援助しましたが、犬猿の仲になってしまって。喧嘩があった時、いつも治めていたのが葛城さんだったんです。肝臓を悪くして、急逝されました。時々電話をしても、大丈夫だから、と笑うばかりで。もっと頻繁に往来すべきでした。」
「奥さんは、おられなかったんですか?」
「肺を患っておられて、結婚式当日、式場で亡くなりました。兄にはもう仕事しかなかったんです。この方が葛城さん、この方が山中さん。」
偶然かも知れないが、葛城さんは、3人並んだ、真ん中に写っていた。
恐らく、まとめ役だから真ん中だったんだろうな。
社員旅行の写真も見せてくれた。
「この右端におられるのが、山中さんの奥さんだった方。理由は知りませんが、離婚されました。葛城さんが亡くなられた年だったと思います。」
何か、ありそうだな、と思ったら、大曲先輩が呼ぶ声が聞こえた。
「かほるさん、山中さんって方、ご存じですか?」
「ええ。」と言って、俺の顔を見た。
「前日、詰まり、昨日、山中さんが『相談したいことがある』っていうメールをお兄さんに送っています。」
その時、先輩のスマホが鳴動した。
先輩は、スピーカーをオンにしなかった。
「かほるさん、メールのデータ、コピーさせて貰っていいですか?」
「あ。どうぞPCをお持ちになって。捜査に必要なら。」
午後5時。捜査一課。第二応接室。
「え?亡くなった?」
「正確には、殺された。山中氏は、退職した後も、時々、会社や自宅を訪れていたようだ。」と、蘭子が言った。
「ガイシャも、その山中さんも、社内の評判は良かったようです。だな、村松。」と、辻さんが言った。
「一から洗い直す必要がありそうだな。」と、蘭子は唸った。
―「捜査一課ですけど、291」につづくー
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部。




