287.鬼子母神
隣同士で仲良しの新井敬吾と相葉等は、ゴミ捨て場に、ジャージ上下のオンナが仁王立ちしているのを見た。それは、マネキンではなく、耳から血を流した遺体だった。
「札付きの自称ジャーナリスト。別名【妖怪あら舐め】。」
「ははは。妖怪だったんだ。捜査の刑事に伝えておくよ。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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前回のあらすじ
午前7時。ある建売住宅のゴミ捨て場。
隣同士で仲良しの新井敬吾と相葉等は、ゴミ捨て場に、ジャージ上下のオンナが仁王立ちしているのを見た。それは、マネキンではなく、耳から血を流した遺体だった。
「札付きの自称ジャーナリスト。別名【妖怪あら舐め】。」
「ははは。妖怪だったんだ。捜査の刑事に伝えておくよ。」
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午後3時半。山奈家。
俺はご主人の栄太氏に書庫を案内して貰って、アルバムと葉書ホルダー、そして名刺ホルダーを預かった。
アルバムを広げている、栄太氏に、俺は尋ねた。
「随分読書家だと言うのは分かりますが、多岐に亘りますねえ。漫画、小説、自伝、百科事典。」
「法律関係、ないでしょ。」
「確かに。」
「いつか尋ねたことがあるんです。記者なら法律関係、読まないの?って。」
「それで、バカにするなら離婚よ。引き下がるしかない。」
「後が恐い、ですか。」
「ああ、ありました。この人が、いつも仕事でコンビを組んでいる、桃田信一さん。この人が情報提供をして貰っている・・・ま、いいか。週刊ドンペリの富田さん。他はまあ・・・。」
書斎から、大曲先輩が呼んだ。
「いつものパターンだ、有名人の。ご主人、申し訳ないですが、詳しく調べたいので・・・。」
「構いません。どうぞ、お持ち下さい。どんな犯人でも、伊都子は恨まれていたので仕方が無い。」
大曲先輩のスマホが鳴動した。
村松からだった。
先輩の会話は大体、想像出来た。
「先輩。マスコミ関係がうろつき出しました。」
「じゃ、村松。秋野にPC運ぶ準備させてくれ。それと、鑑識作戦だ。」
30分後。秋野が新山や鑑識課員を連れて、やってきた。
俺達の『鑑識衣装』とともに。
俺達は、鑑識に混じって、山奈家を出た。
午後5時半。捜査一課。第二応接室。
「半グレの方は、日本発展振興会。杵築は、取材を通じてルートを確立。政治家の『揚げ足取り』のネタを提供させていた。会長の愛人という噂が、同業者に広まっている。」と、神道課長が言った。
「反社の方は、東京赤木忠誠組。以下同文。」と、新垣課長が言った。
「何だよ、以下同文って。」
「ほぼ同じだから、いいだろう?蘭子。」
「構わない。杵築は、パット見はいいからな。後は、サイバー犯罪対策課から動機が見つかればいいが。大曲。メールは、どうだったんだ。」と、蘭子は尋ねた。
「用心深い積りだったんだろう。イニシャルで書いてある。前日に会ったのは。『T』という人物。」
「Tじゃ、分からないな。」
「明日、別件でガサイレするよ。」と神道課長が言い、「右に同じ。」と、新垣課長が言った。
翌日。午前10時。捜査一課。蘭子のデスク。
館内電話が鳴った。
村松が受話器をとり、スピーカーをオンにした。
「お待たせ。Tと言う人物は、タオという人物らしい。隣国人に多い名前だ。マフィアだね。四角関係かも。暗号で書かれていた、相手の文章も解析出来た。翻訳すると、『娘の命が惜しければ、待ち合わせしよう。』課長が、娘の居場所を確認するよう、所轄に手配した。あ、正確に言うと、倉田課長が井関課長に依頼した。で、行方不明。拉致されているな。」
午前11時。
館内電話が鳴った。
村松が受話器をとり、スピーカーをオンにした。
神道課長だ。
「ガサイレしたら、ガイシャとの関わりは認めたが、全員アリバイがあった。シンポジウムとか言っていたが、半グレの交流会だろうな。」
正午。
館内電話が鳴った。
村松が受話器をとり、スピーカーをオンにした。
新垣課長だ。らが、ガイシャとの関わりは認めたが、全員アリバイがあった。カチコミの最中だった。お疲れ様、と言っておいた。」
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午後3時。神宮東公園。
杵築栄太氏がやって来ると、明らかにマフィアと思しき一団が50人、出て来た。
「取引には応じない。娘の宮子は、無事だからな。」
日本語が分かる者が、リーダー格に連絡した。
リーダー格は、どこかに電話した。
15分後。
「どうやって、居場所を確定した。」と、日本語が分かる中国人が言った。
「お前が教えてくれたんだよ。ありがとな。」
神道課長が出て来て言った。
「え?」
「AIがGPS使って、場所を特定したんだ。警察、舐めるなよ。」と、新垣課長が言った。
杵築栄太氏を神道課長と新垣課長が連れて引き下がると、SATとSITが多数現れた。
一網打尽だった。
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午後5時。捜査一課横の大会議室。『ゴミ捨て場死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、井関課長、神道課長、溝内課長、倉田課長、酒井優香、餅屋係長、紅林係長、大曲先輩、井関警視監、蘭子、管理官が出て来た。
よく入れたなあ。
井関課長、神道課長、溝内課長、倉田課長、酒井優香、餅屋係長、紅林係長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、隣国マフィアの、通称ジャッキー・タオ他3名。珍しく、日本のならずものは、殺人に絡んでいなかった。タオの組織は、ガイシャの情報力に目をつけ、日本のレイヤーアースの情報を欲しがっていた。ガイシャは、あらゆる手立てでレイヤーアースの情報を探っていた。それで、ハッキングしていた。先日、ガイシャは、『話していなかったことを書かれた』と、高校生に告発され、謝罪会見をした。大きな弱みを見せたことで、娘を誘拐、身代金の代わりに、レイヤーアースの情報を渡せと言ってきた。ところが、いつもハッタリばかりで肝心の情報を持っていなかった。知らないことは白状出来ないし、データを提出出来る訳もない。結局、拷問の末、死体を遺棄された。今度は、夫の栄太氏を脅す積りだった。そこで、栄太氏の協力で、連中をおびき出した。思惑通り、拉致の場所に連絡した電波を拾い、酒井くんが開発したプログラムで居場所を確定、所轄署に警邏課が応援に行って、逮捕連行した。取引現場には、都知事の許可を得て、SITにも来て貰った。殺害動機は、『捏造記事』では無かった。」
「鬼子母神という言葉がある。流石の杵築伊都子も、子供を救いたい気持ちがあった。世間の嫌われ者でも、母親は母親だ。管理官と、夕方の記者会見に臨む。」
午後7時。眩目家。
2人で夕方のニューズで記者会見を観ていた。
「どや顔、万歳だな。さ、私も。」
下半身がスースーする。
蘭子も。鬼子母神になるのかな?
―完―
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警務部監察官。井関の長男。
井関花江・・・警視庁警邏課課長。井関一郎の嫁。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。警部。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
※鬼子母神とは、もともとは人間の子供を食べる悪鬼(夜叉)でしたが、お釈迦様の教えによって改心し、のちに安産や子育ての守護神となった仏教の天部です。サンスクリット語では「ハーリーティー(訶梨帝母)」と呼ばれます。
時々、女性の『母性愛』の例えに使われます。




