286.妖怪あらなめ
「今日、何ゴミの日だっけ?」
「今日はない。強いて言えば、これ粗大ゴミ?普通ゴミかな?」
「マネキン?」
「マネキンの耳から血を流す?お化け屋敷じゃあるまいし。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前7時。ある建売住宅のゴミ捨て場。
隣同士で仲良しの新井敬吾と相葉等は、同じ高校に通っている。通学の為、駅まで自転車をしゃべりながら走らせる二人。今日は土曜日だが、臨時の登校日だ。
二人は、ゴミ捨て場に、異様な光景を見た。
ジャージ上下のオンナが仁王立ちしている。
「今日、何ゴミの日だっけ?」
「今日はない。強いて言えば、これ粗大ゴミ?普通ゴミかな?」
「マネキン?」
「マネキンの耳から血を流す?お化け屋敷じゃあるまいし。」
新井は、咳払いをして、110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「通報してくれた、新井君と相葉君?」
「はい。刑事さん、俺達、ずる休みにならないですよね?」
「今日、土曜日だよ。学校行く日?」
「補習で、臨時通学。」
「警察から言っておくよ。警察に協力して間に合わなかった、って。ところで、杵築伊都子って、通報の時、言ったらしいけど、知ってたの?」
「札付きの自称ジャーナリスト。別名【妖怪あら舐め】。」
「ははは。妖怪だったんだ。捜査の刑事に伝えておくよ。」
「え?刑事さんが捜査するんじゃないの?」と、相葉が尋ねた。
「俺達は、現場がどうなっているか確認の刑事。捜査する刑事に引き継ぎするんだ。」
「捜査一課、ですよね。殺人関係だから。」と、新井が言った。
「よく知ってるね。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『ゴミ捨て場死体遺棄事件』本部。
管理官は説明した。
「ガイシャは、軽計新聞の杵築伊都子。発見者の高校生二人はよく知っていた。蒔くん、有名人か。」
「有名記者です。どこでも割り込んで取材し、同業者からも疎まれています。パット見はいいですが、毒がありすぎて、入館証なしで入って取材したり、他の記者の時間を奪ってまで記者会見取材します。付いたあだ名が【妖怪あら舐め】。垢舐めって妖怪に引っ掛けて付いた渾名です。先日、高校生に取材した際に、脚色して書いた本が、出鱈目取材だったと発覚しました。当該高校生が告発したんです。『言って無いことを書いている』って。滅多に謝罪しない人ですが、謝罪記者会見を行いました。」
「恨んでいる人は多いだろうな。亡くなって喝采する者もいるかも知れない。で、凶器ですが、今時珍しい、『千枚通し』。耳を貫通しています。ホシは力があります。」
「開光くん、どうする?」
「辻さん達は、軽計新聞社を、大曲達は、山奈家へ。村松も行け。他の新聞社の評判は、餅屋係長のチームと紅林係長のチームに行って貰う。」
「山奈家って?」と、俺は思わず尋ねた。
「杵築はペンネーム。本名は、山奈伊都子。ご主人の栄太さんが待っている。ご主人は、商社マンだそうだ。」
「「「了解!!」」」
午後2時半。クルマの中。
「村松は知ってた?」と、俺は助手席の村松に尋ねた。
「見たことあります。記者は傍聴席なのに、議員に野次跳ばして。見かねた他の議員が、出て行け!って怒鳴りました。嫌いな人、多いです。せいせいした、ってSNSで拡散するでしょうね。『蚤の夫婦』って言われています。体格じゃなく、性格で。」
午後3時。山奈家。
村松の言った通りだった。
山奈栄太氏は、玄関の三和土からわざわざ降りて、土下座した。
「申し訳ありません。ウチの伊都子がご迷惑をおかけしたようで。多分、先日の謝罪記者会見が気に入らない方がいたのでしょう?」
「ご主人、それは可能性の1つです。今は、どなたにも、おっしゃらない方が。」
「そう・・・ですね。会社には、忌引きを取り、葬儀社にも連絡を取りました。あ、菩提寺にも。送られてきた写真を見て、とうとう来たか、と思い、手配しました。」
「とうとう来たか?ですか。」
「我儘な、お転婆娘が、そのまま大きくなったような人ですから。娘は、親戚から通学しています。イジメに遭ったので。」
「そうですか。上がらせて貰ってよろしいでしょうか?」
「はい。あ、不調法で申し訳ないです。すぐ、お茶を・・・。」
「ああ、ご主人、規則で、頂かないことになっていますんで。」
大曲先輩の言葉に、栄太さんは感心した。
「癒着、になるんですね。」
記者なら、そう書くだろうな、妄想で。
先輩が書斎に入ってすぐ、電話があったようだ。
俺のスマホも鳴動した。
何と、新垣課長からだった。
「眩目。ガイシャは、反社とも付き合いがあるらしい。」
「とも?」
「半グレもだ。」
―「捜査一課ですけど、287」につづくー
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。




