282.血塗られた法事
僧侶は、大抵のアクシデントには、対処していたが、流石に仰天した。
気を取り直して、菩提寺に連絡してから、110番通報をした。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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ある日曜日。午前11時。芳顔家。
三回忌法要の為、訪れた菩提寺の僧侶は、気絶しそうになった。
遺体が三体並んでいたからだ。
一人は、この家の主、芳顔啓助。後の2人は、名前は知らないが、芳顔家の親族の筈だった。
僧侶は、大抵のアクシデントには、対処していたが、流石に仰天した。
気を取り直して、菩提寺に連絡してから、110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
赤井は、僧侶から詳細を聞く一方、近所に部下を走らせた。
「主任。黒い服、喪服の男性1人、女性3人が入って行くのを隣家の当麻さんが目撃しています。今日、3回忌法要があることは、芳顔さんから聞いていたので、全員、親族の方だと思ったそうです。」
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午後2時。捜査一課横の大会議室。『法事殺人死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、芳顔啓助さん。そして、芳顔さんの妹の谷真知子氏、その娘の小村雪乃。亡くなった、芳顔梶子さんの三回忌に2人が芳顔家に訪ねてきた。乗ってきた車は近くの橋の上に駐車していた筈が、今はない。隣家の当麻さんが、男女4人が、その車から降りて、芳顔家に入って行くのを目撃している。4人の内2人がガイシャだ。従って状況からすると、ホシ二人がガイシャ三人を殺害、逃亡したことになる。車種は分かっているので、警邏課に強力を依頼した。井関さん、凶器は?」
「台所にあったらしい、出刃包丁。計画的なのかどうかは分からないが、堂々と玄関から出ている。法事の日に喪服。親族と思い込んでも仕方無い。」
「さっき、菩提寺の坊さんから電話があった。谷真知子氏は、総化学の会会員で、たびたびトラブルを起こしていたそうだ。立場上、黙っていたが、亡くなったので、と言っている。」
「宗教絡みも考えられますね。」と、大曲先輩は言った。
「自分達は仏教だと言いながら、仏教の作法・習わしを何も知らないって聞いたことがあります。ホトケ様は、仏壇の中にいると思い込んで、妙なことを習慣にしているとか。」
「じゃ、辻さん達は、総化学の会を当たってください。ご主人の手術の為、法事を欠席した、芳顔さんの姉武者小路悦子さんが、駆けつけてくれた。悦子さんの了解の元に、大曲達は捜査。村松も行け。」
「「「了解!」」」
午後3時。芳顔家。
ご近所回りをする村松を残して、俺達は訪問すると、杖を突いた悦子さんが出迎えてくれた。
居間の椅子に腰掛けていた悦子さんが、無理矢理立とうとするので、慌てて俺達は座らせた。そして、大曲先輩は、手順通り慰め、俺達の作業を説明した。
「分かりました。弟も脚を悪くして、もう2階に上り下り出来ないと言っていました。弟は、プロ・・・なんだっけ。」
「プログラマ?」
「そのグラマの仕事の為に必死だったそうです。母の一周忌の時、初めて知りました。2階にはパソコンが20台あるそうです。以前、そのパソコンを見た時、主人は短期で機械音痴なものだから、こんなに要らない、と怒ったそうですが、弟の話では、勉強しながら研究しながらでないと働き口がなかったんだ、と言っていました。仕事に使っていたファックスももう使っていないから、電源を切ったとか言っていましたが、案内しようにも・・・。」
「ああ、大丈夫です。眩目君、お願いね。」
「アルバムと年賀状は、そこの棚にあります。ああ・・・仏壇、拝めないわ。」
殺害現場は、隣の仏間だ。シートが被ってある。仏壇もだ。
坊さんが殺されなかったのは、殺害の後訪れたから。推測で1時間以内と思える。
「普段、使っていたのは、台所にあるパソコンです。もう自炊もしないし、母もいないから、ここが1番いいんだと言って。」
俺が、2階の部屋2部屋をチェックするのに、10分もかからなかった。
奥のパソコンルームのパソコン、ファックス、扇風機は、大元の壁のコンセントからプラグが抜かれ、各パソコンは誰かが触った形跡は無かった。埃が被っていたからだ。
手前の部屋も同様だった。
そして、階段も。これは、上る時、埃に気がついた。
今までの事件の多くは、ホシが侵入した形跡があったが、一時間位では、家捜しする暇は無かった筈だ。
先輩がいる台所に戻ると、「お姉様の了解を取ったよ。」と、先輩は、暗にサイバー犯罪対策課の強力を申請したことを仄めかした。
「今夜は、学生時代の友人の家に泊まる予定です。」と、深々と俺達に頭を下げた。
午後5時。捜査一課。第二応接室。
村松が発言した。
「芳顔さんは、とても評判がいいようです。庭掃除やら何やら、全部自分でやって。この頃は、家にこもることが多くて、心配だった、と複数のご近所が言っていました。妹さんやお姉さんのことは、よく知らない、とも。」
「そりゃそうだろうな。日記らしきファイルには、妹への愚痴が多かった。姉や自分と違って自由に動けるのに、何もしない。『何もかも抱え込まないで、これからは任せて』と言う言葉は3日で裏切られた、と書いていた。『宗教依存症』ともね。何を置いても総化学の会、だ。宗教団体を名乗っていながら、政治活動ばかりする団体だからな。しかし、もめ事あったとして、何故妹親子が殺される?」
大曲先輩の発言に、「酒井の話では、芳顔さんがハッキングしていたらしいから、そこが原因なんじゃないかな?」と、蘭子は言った。
そこに、酒井から連絡が入った。
「複雑な暗号だから、手間取った。この人もウェブ小説家だ。パスワードが、アナグラムになっていた。」
翌日。捜査一課。蘭子のデスク。
館内電話が鳴った。
村松がとり、スピーカーをオンにした。
「事務支局経由で、逃亡しようとしている被疑者2人を確保した。」
「まだ、逃げて無かったのか。」
「今日、何曜日だっけ?」
「月曜・・・カネか。」
午後3時。捜査一課横の大会議室。『法事殺人死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、井関課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、井関課長は、すぐに出て行った。
「ホシは、総化学の会会員富士見信一、小山満子。ガイシャの芳顔氏は、妹の話から、借金が膨らむばかりの総化学の会を抜けたがっている者が多いことを知った。それで、芳顔氏は、ハッキングして、総化学の会会員が不正会計していることを突き止め、黙ってやる代わりに退会を認可しろ、と脅した。話し合いの日時を決めたのに、ホシ2人は、お供えをしたいからと、妹親子に便乗してきて、殺害に至った。普通なら不正のデータを探すものだが、短絡的に考え、サプライズ参加をし、殺害して、去った。やりきれんな。」
午後6時半。眩目家。
村松が、お好み焼きを焼きながら、蘭子に尋ねた。
「アナグラム、って、プログラムですか?」
「いや、並べ変えて出来る言葉だ。普通は、元の言葉や文章も、並べ替えた言葉や文章も自然に聞こえるが、今回は、ただの並べ替え。K A Z I K Oを並べ替えたO K K A I Zがパスワード。USBメモリに答があった、とさ。」
「お母さんの名前、ですか。」
午後7時半。
村松は、帰って行った。
「お前を並べ替えると、どうなるかな?」
何か、スースーする。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。警部補。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
井関花江・・・警邏課課長。警部。




