279.ステテコ
アパート暮らしの二浪学生谷中孝史が、徹夜の後で、コンビニに行き、買い物をした。
帰ろうとした時、薄暗がりに、解体後の敷地に仰向けで寝ている人を発見した。
アパートから来る時は、別のルートだったので、気づかなかった。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前6時。ある街の駅近く。
アパート暮らしの二浪学生谷中孝史が、徹夜の後で、コンビニに行き、買い物をした。
帰ろうとした時、薄暗がりに、解体後の敷地に仰向けで寝ている人を発見した。
アパートから来る時は、別のルートだったので、気づかなかった。
天気アプリでは、6時頃から雨が降ることになっていた。
それで、谷中は傘を持参していたが、もし酔っ払いなら、危険だ。今時の雨は降りだすと、まとめて降る。
駅前には、居酒屋が何軒か並んでいる。
谷中は、飲み過ぎて終電を逃した、酔っ払いが放浪したに違い無い、と判断し、近くに寄った。
ほのかな街灯に照らされた、それは、明らかに死体だった。
谷中は、深呼吸して、110番通報した。
そして、雨を警戒して、コンビニに待避した。
雨が降り出した。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「君が、発見者の谷中君?」
「はい。駅前に居酒屋並んでいるでしょう?飲んでるウチに終電逃した酔っ払いかと思ったんです。そしたら、オジサンが仰向けに寝てて。」
「谷中君。オジサンじゃなくてオバサンだった。」と、秋野が来て言った。
「え?だって、ステテコ履いて・・・コスプレ?」
「昭和なら受けたかも知れないが、コスプレじゃないと思うよ。あ、悪いけど、タブレットに名前と、ケータイせいいから電話番号書いて。ここんとこ。」
赤井の部下が、谷中にタブレットを差し出した。
コンビニの外国人店員が興味深そうに見ていた。
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翌日。午後1時。捜査一課横の大会議室。『解体後敷地死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、西東京大学の、新・総長蓮池留美子氏。死因は、井関さん。」
「件のヤク。アルコールに混ぜて、ホシは介抱する振りして、現場に放置。死亡推定時刻には、アリバイがある。」
「短絡的に考えると、総長選挙第二位のガイシャが選ばれたのが許せない人物の犯罪ということになるが、そうじゃないだろうな。しかし、女性がステテコって・・・。」
「女性用のステテコなら、真夏に出回っていたようですけどね。私も買いました。」
蘭子が、さらっと言うので、皆が俺を見た。
俺は知らないって。
「パーティー用のなら、ネットで簡単に購入出来る。管理官、蘭子。ガイシャの蓮池氏は、以前指定暴力団だった、江戸もやび組の傘下のもやちゃん会と繋がりが。」
入って来た、新垣課長が言った。
「じゃ、ゴリ押しで、選挙無視して選ばれたのは、後押ししたのが反社だから、か。」と、大曲先輩は言った。
「ステテコなんて・・・。」と新山が言いかけるのを、村松が足を踏んで阻止した。
今は、ステテコは問題じゃない。
「辻さん達は、飲み屋を当たってください。2時くらいなら、誰かいるでしょう。皆、ランチサービスやってるらしいから。あ、それから駅員にも。大学は、関口係長のチームと紅林係長のチームに行って貰う。大曲達は、そのコンビニに行って、防犯カメラをチェックしてから、ガイシャの自宅へ向かえ。意外や意外。ガイシャの家は、現場から2キロ先だ。ご主人は、遺体確認は、写真だけで済ませた。」
「「「了解!!」」」
午後2時。発見現場近くのコンビニ。
先輩は、該当時間内のデータを防犯カメラシステムからコピーした。
出る時、声をかけられた。
「やっぱり、捜査担当は違うんですね。」
「君は・・・谷中君?一応、話、聞こうか。」
話は、機捜の赤井主任の報告とほぼ変わりなかった。
「捜査は我々に任せて、君は勉強、頑張って。」
「はい。西東京大学以外を受験します。友達に、現役大学生がいるんです。かなり、怒ってます。」
「成程。」
午後3時。蓮池家。
「いつか、こうなるかも知れない、と思っていました。良家のお嬢様でね。ご想像の通り、我儘に育った。娘が1人いたんだが、先立たれました。今回の事は、かなり有頂天になっていて、隙だらけだったのかも。ステテコ姿で見つかったと聞きましたが、ウチにはありません。私にも、女房にも。犯人の嫌がらせでしょうね。」と、俊哉さんは言った。
先輩は、2つある書斎のひとつに入った。
俺は、もうひとつの書斎の手前にある書庫に案内された。ご主人は書道家で、階下の部屋で書道教室を開いていたこともあったとか。」
「この方が、前総長の今井晃さん。実は、一位の宗像圭子さんも、他の候補者の方も女房も、この大学出身です。マスコミは偏向報道しているが。」
「同級生、ですか。」
「宗像さんが選ばれて当然だった。私も耳を疑いましたよ。二位なのに。今井さんも、女房を立てる気持ちなら、対処の仕方があったと思ったが。」
俺もそう思ったが、口には出さなかった。
二位が押しのける現状は、芸能人ならあり得た話で、バッシング受ける程ではない。
だが、大学の代表である。
随分と罪なことをした。
「辞退すると言っていた矢先でした。現役大学生が怒るのは当然です。民主主義国家の国立大学なのですから、選ばれた時点で辞退すべきでした。」
書斎に戻ると、大曲先輩は、蘭子に報告していた。
「ハッキングはされていませんでした。メールのやり取りからすると、葉月玲奈さんが、メールを送った最後のお相手のようですが。」
俊哉さんは、俺の持っているアルバムに、手製の栞を挟んで、「この方です。住所は・・・。」と言い、葉書ホルダーから出して、先頭に持ってきた。
午後5時。捜査一課、第二応接室。
「これから、ガサイレに向かう。手引き役は、葉月玲奈だな。」
そう言って、新垣課長は、出て行った。
「課長。大学内では、やはりかなりの悪評ですね。リコール運動が始まっていました。火炎瓶、用意しかねない。」と、関口係長が言った。
そして、辻さんは報告した。
「駅近くで不審者はいませんでした。それと、終電に間に合わない営業時間の店は無く、ガイシャの目撃情報はありませんでした。直接殺害現場から発見現場まで向かったようですね。」
翌日。午後2時。捜査一課横の大会議室。『解体後敷地死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、新垣課長、倉田課長、溝内課長、関口係長、紅林係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
新垣課長、倉田課長、溝内課長、関口係長、紅林係長はすぐに出て行った。
「ホシは、葉月玲奈、葉月と男女関係にある、もやちゃん会の母屋俊太、そして、前総長今井剛。殺害現場は、今井教授の部屋だった。昏倒したガイシャに母屋と葉月が、アルコールとヤクを飲ませた。コンビニの防犯カメラには、葉月が3回映っている。また、葉月のクルマのドラレコによって、移動時間が判明している。夕方、警視監と記者会見する。大学側は、明日、副総長が行うそうだ。」
午後7時半。眩目家。
夕飯後、どこかへ行った蘭子が戻って来た。
「舞のお下がりだが、似合うだろう?」
ス・・・ステテコ。
「裸の方が似合うって、言ってみ。」
「裸の方が似合う・・・あ。」
しまったあ。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。警部。
溝内健児・・・生活安全課課長。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。




