278.1引く1は0
鮮魚売り場主任の高槻平吉は、駐輪場近くでネットフェンスに寄りかかかっている男を発見した。
10月下旬に入ったと言うのに、急に9月の陽気になって体調を崩す者が多い。
========== フィクションです ===========
=================================
※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
=======================
午後6時。スーパーえーあいえー。
鮮魚売り場主任の高槻平吉は、駐輪場近くでネットフェンスに寄りかかかっている男を発見した。
10月下旬に入ったと言うのに、急に9月の陽気になって体調を崩す者が多い。
このスーパーでも、学生アルバイトが急に欠勤した。
気分が悪いのかと思い、声をかけようとして、止めた。
暗くなって、出入りが多い駐車場は、もう閉鎖するしかない。
とにかく、店長に電話し、許可を取った高槻は110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「厄介な事件になりそうだな。」機捜の黒部は呟いた。
==================================
=================
翌日。午後1時。捜査一課横の大会議室。『スーパー駐輪場死体遺棄事件』本部。
管理官は説明を始めた。
「ガイシャは、渡部稲造。『世紀の特殊詐欺事件』と揶揄された、野党の集合離散事件で、旧『仲良し連盟』の、通称『受け子』の役割を担っていた委員長だ。彼一人を残して、他の議員が、新党やりますの会に移籍したため、政党交付金の権利が残って、莫大な借金返済の予定だった。彼が殺されたことで、受け取る政党党員がいなくなってしまった。政府は、さっさと『無効手続き』をしたようだ。井関さん、凶器は、というか死因は?」
「件のヤクだ。ヤク自体は無味無臭。コーヒーに限らず、市販のコーラでもジュースでも混入可能と判明している。混入すると、結果的に時限装置を形成する。詰まり、殺害現場でホシが渡してから後の時間帯に発作が起きる。実に厄介だ。」
「今回の事件も、与党が仕組んだ、あるいは、政権支持派が仕組んだ、と思わせるのが目的と思われる。今、溝内課長が、旧『仲良し連盟』の元代表と、遺体確認後の面談をしている。開光君、どうするね?」
「辻さん達は、旧『仲良し連盟』で、新党やりますの会のメンバーの聞き込みをお願いします。他の野党には、皇係長のチームと餅屋係長のチームに行って貰います。大曲達は、元代表の大山俊也氏に案内して貰って、渡辺家へ。村松も行け。」
「「「了解!!」」」
午後2時半。渡部家。
大山氏は、父親の渡部啓造氏には丁寧に挨拶し、俺達には一瞥せず、去ろうとした・
「大山君、ちょっと。」渡部氏が呼び止めたので大山氏は振り向いたが、渡部氏に、いきなり張り手をされた。
相撲の技である。
「恥を知りなさい。稲造も、本当は、アンタラに組みしたくなかったんだ。稲造の捜査をしてくれる警察官を無視するとは、何事か!即、謝罪しなさい!!」
「それは・・・。」
「刑事さん、大山君には動機があります、引っ張ってやって下さい。第一容疑者、いや、第一被疑者だ。」
「も・・申し訳ありません。」大山氏は、渡部氏と俺達に頭を下げ、帰って行った。
「お見苦しいところを、お見せしてしまい・・・。」
「相撲、やられていたんですか?」
「学生相撲を少し。つい、手が出てしまった。」
気を取り直して、先輩はガイシャの自室へ。俺は、書庫からアルバムと葉書ホルダーを出して貰った。
「参議院の違憲異種党に残って居る向坂真之介氏と同期でしてね、こんなに党が離合集散するとは思わなかった。私は、肝臓をやられて政界を引退したが、ちゃんと巣立っていなかったようだ。」
啓造さんに、他のお友達の写真や住所を紹介して貰った後、ガイシャの自室に戻ると、大曲先輩は、啓造さんに尋ねた。
「お父様。向坂真美子さんと言う方をご存じですか?」
「向坂さんの奥方だが、何故?」
「亡くなる直前ですが、ご子息と向坂真美子さんは、ホテルで待ち合わせされておられます。」
午後5時。捜査一課。第二応接室。
「犯罪の影にオンナあり、か。大曲くん、いいカンしてるね。向坂真美子は、所謂『市民団体』で、『女性向上運動』をしていて、NPO法人夕焼け小焼け会と関係がある。『売春組織』として保安課がマークしている。」
保安課課長の安斉警部が言った。
「なかなか、尻尾を掴めなくてねえ。デリバリーとかやっているってタレコミもあるんだが。この際、芋づる、と行きたいね。」
「安斉課長。その『別件』で引張れませんか?」
「え?・・・ああああ。そういうことですか。流石だなあ。今夜のウチに、網掛けましょう。」
翌日。午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。
館内電話が鳴った。
蘭子は受話器を上げ、スピーカーをオンにした。
「向坂真美子を、万引きの疑い、で拘束しました。売春組織は挙げました。」
午後3時。捜査一課横の大会議室。『スーパー駐輪場死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、安斉課長、神道課長、溝内課長、機捜の黒部主任、皇係長、餅屋係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
安斉課長、神道課長、溝内課長、皇係長、餅屋係長はすぐに出て行った。
管理官が説明に当たった。
「ホシは、向坂真美子、『仲良し連盟』元代表で『新党やりますの会』の『大山俊也』、NPO法人夕焼け小焼け会の小金井敏夫。ガイシャは、向坂が売春組織をしている事実を『交際中』の向坂に問いただした。小金井から件のヤクを譲り受けていた向坂はドリンク剤に混ぜてヤクを飲ませた。夫の向坂真之介氏もガイシャも裏切った真美子は、買物に付き合わせたガイシャを置き去りにした。大山は、直接殺人に関与していないが、アリバイ工作には協力した。皇係長のチームも餅屋係長のチームも、SNSで言われていることを確認しただけだった。村松の話では、近所の、ガイシャに対する評判は良かった。ずるしていたのは、大山だからな。これから、警視監と記者会見に臨む。どうかね、黒部主任。」
「勉強になりました。数日以内に事件を解決するチームの実力を拝見出来て、光栄です。赤井の言っていた通りでした。機捜の仕事にやりがいが出てきました。」
午後7時。眩目家。
「私にも、やりがい、欲しいなあ。」
蘭子は、後ろから、俺を抱きしめた。
あ。ノーブラ、だ。やばい。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。
深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
黒部ひろゆき・・・第二機動捜査隊の主任。警部。
安斉英一・・・保安課課長。警部。
※現実の事件を題材にはしていますが、基本的にフィクションです。
政党交付金が無効になるかどうか、は想像の域です。
それと、以前書いたエピソードのネタとかぶる部分がありますが、気にしないで下さい。
クライングフリーマン




