275.悪口はカネになる
局アナ白井が、通用口から入ろうとすると、梵鐘があった。
「番組で使うのかな?」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午後2時。日の丸テレビ。
局アナ白井が、通用口から入ろうとすると、梵鐘があった。
「番組で使うのかな?」
丁度、そこにアシスタントディレクター、通称ADの綾川が通りかかった。
「綾川さん、番組で使うの、これ?」
「いや、聞いてませんけど・・・あ、服の・・・ドレスの端・・・血が・・・。」
綾川は、深呼吸して、ディレクター大山に電話した。
「バカ、俺に電話して、どうする。110番通報しろ。お前の名前でな。」
30分ほどして、機捜と鑑識が到着した。
白井アナは、いきがかり上、まだ、そこにいた。
自分が第一発見者だからだ。
梵鐘の中は、遺体に決まっている。
事件のリポートはしたことがないが、リポーターの積りになって、気を引き締めた。
「ええと、通報してくれたのは、綾川さん?そちらは?」
「局アナの白井さんです、第一発見者です。」と、綾川が紹介した。
梵鐘が取り除かれ、遺体が露わになった。
「「あっ!!」」
白井アナと綾川は同時に声をあげた。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『テレビ局死体遺棄事件』本部。
管理官が説明を始めた。
「ガイシャの、野中友子さんは、名声女学院特任教授で、発見者の白井アナがMCをする、『ニュースですけど、何か?』のコメンテーターを10月に入ってから担っている。同番組は、以前放送していた『ニュース転売屋』が不評の為9月で終了、後番組としてスタートしたばかりだった。ところが、MCが交替しただけで、コメンテーターは、相変わらず悪口ばかり言っていて、大不評だった。その中でも、炎上していたのが、ガイシャだった。だね?情報通の秋野くん。」
秋野は、管理官に嫌味に気づかず説明した。
「現総理は、外交の時、風俗のホステス以上のことをして、各国首脳をもてなした、それしか能力がないから、と妄想としか思えないコメントをしています。調べてみたんですが、『特任教授』って、正職員じゃないそうです、非正規雇用で、数年以内の勤務だそうです。ナフサ事件と同じですね。」
「石油が無くなる、ナフサが無くなる、ナフサを使った製品が無くなる、と煽った事件だね、石油会社で在籍していたことがあるだけで、何の専門家でもなく、会社の研究部門で研究していた訳では無く、退職した会社に『売名行為』だとまで言わせた、あの事件と同じ構図か。」
「反政権は、願望でしかありません。」
「それくらいでいいだろう、秋野、ブラジャーの内側に入っていた紙片のスライド。」
「はい。」
『本当は、私があばずれ女です』
「凶器は、カミソリです。頸動脈を切っています。昔、スケバンがやっていた方法かも知れない。」
「鮮血が飛び散るのでは?」
「入眠剤を飲まされています、アルコールと。件のヤクじゃない。」
「すると、現場に運ばれ、梵鐘を被せられてから、出血を始めた。そして、酸欠で無くなった、か。」
「管理官、梵鐘は金属製じゃありません、強化プラスチックです。」と、新山が発言し、おおおどした。
「そうか。密室状態だから、ガイシャはパニックになったんだな。」と、管理官は新山を庇う形で言った。
「詰まり、ホシは、ガイシャが憎む総理の悪口を言い続けるから、腹を立てた総理派の仕業に見せたかった、ということになりますね。」と、大曲先輩は言った。
「またまた、手の込んだ奸計か。どうする、開光君。」
「辻さん達は、テレビ局に行って下さい。村松も行け、皇係長のチームを応援に行かせます。餅屋係長のチームには、大学に行って貰います。ガイシャの夫の、藪立嗣氏が今、溝内課長と面談中だ。大曲達は、合流して、野中家に向かえ。」
「「「了解!!」」」
午後3時。野中家。
薄々感じてはいたが、ここの家は所謂『夫婦別姓』だ。
『野中』『藪』の表札が並んでいます。
「よく尋ねられますが、二世帯住居じゃありません。『事実婚』です。好んで『夫婦別姓』にした訳でもありません。女房は、宗教家でもあるので、この方が便利がいいんです。」
立嗣は、大曲先輩に書斎替わりの自室に案内し、俺は、クローゼットに案内された。
隅っこからアルバムと葉書ホルダー、名刺ホルダーを出してくれた。
「仲のいい人ですか?会を紹介してくれた帯刀さんかな?何かの会合で間に合わないって言うから、私が行きました。私は党や会に染まっていないので、なるべく会わない様にしているから丁度良かった。女房は、自分の親の葬式でもドタキャンして、そっちに行きましたからね。正直言って、離婚も考えていました。あ、この人。帯刀桃子さん。」
立嗣さんは、葉書ホルダーと名刺ホルダーから、出してくれた。
書斎に戻ると、大曲先輩は、「ハッキングはされていない。しかし、隣国と通信している。隣国語が混じっているので、やはり・・・。」
「ああ、いいですよ、お役に立てるなら。」と、彼は承諾してくれた。
午後5時。捜査一課。第二応接室。
「外事課に回す時間の余裕はないから、越前屋さんに翻訳して貰った。」
「隣国人の被疑者が多いから、勉強しました。大体は合ってると思います。ガイシャは、2日前に会ってますね。被疑者かどうかは分からないけど、帯刀桃子さんと。」と、越前屋課長は、すらすら言った。
「で、帯刀桃子氏は、失踪届が出ている。ご主人から。」と、管理官は言った。
「管理官。広報課に頼みましょう。未だ夕方のニュースに間に合うかも知れない。」
蘭子の提案に、「分かった、そうしよう。」と言って、出て行った。
その夜は、警視庁広報課への電話が鳴り止むことは無かった、と、後で聞いた。
殆どがガセネタだが、有名人だと件数が多くなる。
悪名高い、有名人だ。
翌日。午前10時。捜査一課。蘭子のデスク。
蘭子のスマホが鳴動した。
蘭子はスピーカーをオンにした。
アポローンの天野所長だ。
「開光さん、あの釣り鐘は、レンタルですよ。ウチも撮影で借りたことがある小道具の会社。今、尋ねたら、紛失はしていないが、レンタル中だって言うんです。顧客、公開して貰いますか?」
「是非、お願いします。」
午前11時。第二応接室。
「セクシー映画のアポローンの天野さんから連絡があった。釣り鐘をレンタルしたのは、山笠紀夫という人物。レンタルして返していない。返さないんだ。今、神道課長と新垣課長の網に期待している。」
蘭子が言うと、辻さんが、「テレビ局では、あの宗教団体の推薦があったから、飛びついた、と言うんです、言い訳がましいですが。」と発言した。
「あのディレクター大山は怪しいです。やたら電話だ電話だって、逃げてました。」
更に、餅屋係長が言った。
「大学では、非正規雇用の職員のことなんか知りません、と事務長が言っていましたが、学長の推薦で特任教授になった、という噂がありました。」
「繋がったな。村松。大山ディレクターの写真を天野さんに送ってくれ。」
「了解です。」
午後3時。捜査一課横の大会議室。『テレビ局死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、新垣課長、皇係長、餅屋係長、深山課長、溝内課長、越前屋課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、新垣課長、皇係長、餅屋係長、深山課長、溝内課長、越前屋課長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、総化学の会・小梅党に誘った帯刀桃子、テレビ局ディレクター大山栄五、大山の友人で、半グレのNPO法人平和だよ代表の信条明美。野中が使えると思って採用したが、言い過ぎた為、SNSで正体がばらされ、炎上した。怒った『本国』では、粛清の為、帯刀に命じて始末した。オールドメディアには、そのまま伝えることにする。」
管理官は、さっさと出て行った。
午後6時半。眩目家。
「美味しいオムライスの後は、美味しい真吉を頼む。」
「よ。喜んで-。」
その為のオムライスじゃないんだけどなあ。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
越前屋幸太・・・捜査三課課長。
溝内健児・・・生活安全課課長。
深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
------ ゲスト –---
天野慧一・・・セクシー映画会社アポローンの社長。




