274.願望記事
警備員夏川が、発見したのは、同社のマスコットキャラクターまんがやで。
うつ伏せに倒れているので、着ぐるみタレントが熱中症か何かで倒れているのかと思い、揺り動かし、声をかけた。
「おい、まんがやで君。」
返事がないので、背中のファスナーを開いた。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前9時。日本計算新聞社。本社前。
警備員夏川が、発見したのは、同社のマスコットキャラクターまんがやで。
うつ伏せに倒れているので、着ぐるみタレントが熱中症か何かで倒れているのかと思い、揺り動かし、声をかけた。
「おい、まんがやで君。」
返事がないので、背中のファスナーを開いた。
中は、血がべっとりついた人間だった。
異変を感じた夏川が、本部に連絡した。
「了解。警察にはこちらから連絡する。お前は相棒の坂本と現場保存に当たれ。」
「了解しました、山谷隊長。」
30分後。機捜と鑑識が到着し、同時に山谷も到着した。
「お、死体と言えば山谷隊長か。」と井関が言った。
「笑えないですよ、井関さん。来る途中で、局から、着ぐるみタレントの会社に連絡しました。本物は、今アニメ番組の案内係として生出演中です。予備の着ぐるみが紛失していないか確認を依頼するそうです。」
日本計算新聞社は、社屋の一部を系列のテレビのスタジオとして貸し出している。
テレビ局への直接中継するのも売りのひとつだ。
「あ。この人。」
秋野が声を上げた。
「秋野。知り合いか?」
「先日、捏造記事を書いて、記者会見の時に谷岡財務大臣に公然と指摘された記者です、ここの。」
社屋から出て来た編集キャップは青ざめていた。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『日本計算新聞社死体遺棄事件』本部。
管理官が説明を始めた。
「ガイシャの権田原権野助・・・本名か?まあいい。権田原は、発見現場の社員で若手の記者だ。反政府反政権が時代の流れとばかり、いつもヘイト記事を書いているそうだ。秋野くん、観たの、その記者会見?」
「そりゃ酷いものでした。匿名で書いていなかったから、大臣が名指しで事実無根だと指摘し、ニュースソースは?と大臣が問い詰めると、しどろもどろで。記事の内容は、大臣が国際会議で隣国に事前協議を持ちかけ、隣国が違う意見を言った為、赤っ恥を掻かされたというものです。大臣が、隣国との貿易は不要、移民・留学生は不要と普段言っているのに、クビを傾げたくなる記事です。要するに、自分の願望を記事にしてしまったんです。社は行きすぎた行為だったと謝罪し、記者を解雇しました。それが、ガイシャです。」
「普通なら、ガイシャが恨みを持って、大臣に何か仕掛けるところだが・・・。」管理官がクビを傾げると、待っていたように、神道課長が入ってきた。
「粛清かも知れませんね。」
「粛清?権田原には黒幕がいたのか、神道。」と、蘭子が尋ねた。
「特殊詐欺の受け子、だな。今、調査中。じゃ。」そう言って、神道課長は出て行った。
「死因は?井関さん。」と、管理官が尋ねた。
「絞殺。ワイヤーを使っている。温度で締る特殊なものだ。日本製じゃない。拷問用だ。」
「取り敢えず、辻さん達は、新聞社に。村松も行け。大曲達は、駆けつけたガイシャの姉が溝内課長と面談中だから、合流して、権田原に向かえ。」
「「「了解。」」」
午後3時半。権田原家。
日本計算新聞社の部長は、丁寧に挨拶し、帰って行った。
「変わった苗字でしょう?でも、父は気に入ってて、古くさい名前を弟につけて。私は結婚して山田律子になり、呪縛から解かれました。弟は、いつもゴンゴンって言われて泣いていました。私が庇ってあげないと孤独なままでした。先日の会見ね。初めて知りました。『朱に交わればなんとやら』ですわね。学校の友人は、皆亡くなってしまって。ネットで知り合った人に、影響を受けたみたいで、隣国の思想にかぶれてしまったようです。」
大曲先輩は書斎に、俺は書庫に案内された。
「本名かどうか分からないけど、この人が、ネット友達のリ・ヤンさん。」と、律子さんはアルバムを広げてくれた。
「葉書ホルダー、無いです。私もですが、弟は年賀状書きません。会社の住所録ならありますが。」
「結構です。飽くまでも参考資料ですから。後で必ずお返しします。」
書斎に戻ると、先輩は律子さんに尋ねた。
「弟さんは、リ・ヤンさんと親しいですか?」
「はい。」
「メールは、全て、その人とのやり取りです。ここにも来られたことがあるんですよね?」
「ええ。」
「恐縮ですが、このノートPCをお借りしてもいいですか?」
「参考資料ですか?」
「はい。勿論、後でお返しします。」
「お任せします。」
午後5時。捜査一課。第二応接室。
餅屋係長が先ず話した。
「着ぐるみの派遣会社パシフィックでは、外国人も多く働いている。死体の入った着ぐるみは、番組で使用している物の予備だった。そして、先日まで働いていた隣国人が姿を消している。」
餅屋係長は、写真を出した。
俺は、アルバムからコピーした写真を並べた。
「決まりだな。管理官、指名手配をお願いします。」
「心得た。」
翌日。午前10時半。捜査一課。蘭子のデスク。
館内電話が鳴った。
村松が受話器を上げ、スピーカーをオンにした。
「開光課長。被疑者をネットカフェで確保。連行します。」
「よろしくお願いいたします。」
午後4時。捜査一課横の大会議室。『道玄坂死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、餅屋係長、紅林係長、井関課長、倉田課長、酒井優香、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
「ホシは、リ・ヤンと名乗っていた、帰化人の、通称リン・ヤンヤン。日本名林弥太郎。ガイシャは、リンによってスパイに仕込まれた。日本計算新聞社のデータも筒抜けだった。ガイシャは、隣国のことをしゃべる可能性があった。それで、リンによって消された。リンは、普段は着ぐるみの会社に勤めていたが、日本計算新聞社の潜入の為だった。あの着ぐるみを着て社内をガイシャに案内させたりしていた。あの記事は、もっと誘導・洗脳する為の仕掛けだったが、ガイシャの稚拙な文章で、見抜かれてしまった、そもそも、匿名記事の筈だった。酒井くんが、辿ったURLを暗唱すると、観念して完落ちした。」
「管理官。今回は、私が遺族に説明します。」
「そうか。じゃ、村松に頼もう。私は、これから警視監と記者会見に行く。後はよろしく。」
管理官は出て行った。
「神道、半グレは?」蘭子がスマホで神道課長に言った。
「・・・。」「減点1な。」
大曲先輩は「免停間近だな。」と呟いた。
蘭子の採点は、とても厳しい。
午後7時。眩目家。
「真吉。どうだ?」
新しいネグリジェ・・・ベビードール?
「似合ってる。」
「来い。」
食事は?・・・ベッドに連れて行かれた。
助けて。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警視監。井関の長男。
山谷敬三・・・元警視庁警部補。今は警備会社警備隊長。
※現実の事件を「少し」参考にしていますが、飽くまでもフィクションです。
クライングフリーマン




