272.舐められたオンナ
これ、死体、ですよね。110番した時にも言ったけど。」
「確かに猫が逃げない。顔や手に何か塗ってるな。秋野、何とかしろ。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前8時。渋谷。道玄坂近く。私道。
ホテルから駅に向かう途中のビジネスマン春山孝史が異様な光景に出くわした。
野良猫が、沢山寄っている。
最初は、ゴミ漁りかと思ったが、舐めている物体を見て、死体だと確認した。
シッシッと追い払おうとしたが、1匹も逃げない。
春山は、深呼吸して、110番通報をした。
30分後。
機捜と鑑識が到着した。
「これ、死体、ですよね。110番した時にも言ったけど。」
「確かに猫が逃げない。顔や手に何か塗ってるな。秋野、何とかしろ。」
秋野は、スマホでアプリを探し、インストールして、実行した。
逃げない。
3回トライして、効いた。
猫は、四散した。
「猫の反応にも色々あるようですが、これが一番効くみたいですね。【猫にげーる】。」
「まんまの名前だな。」と、赤井が感心し、発見者の春山が感嘆した。
「威嚇してもシカトされましたけどね。」
「猫の餌かな?変な臭いだ。後で確認しよう。」と、井関が言った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『道玄坂死体遺棄事件』本部。
管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、水越エミリ。酒井君の提言で不審死体の顔データを各課で共有出来るシステム【仲間やで】が役に立った。警邏課から連絡があり、身元はすぐ割れた。ガイシャは、先頃解党した祈り紅党の元副党首だ。ホシは、政敵とも考えられるが、蒔くん、SNSで悪名高いのか?」
「ネット上のバトルになり、『殺してやる』と投稿した者は数名いて、運営会社から注意を受けています。」
「まあ、日頃、奇行が目立ち、特異な殺人現場ではある。」
その時、入り口の大扉がノックされた。
村松が開けると、玉田が入ってきた。
玉田は管理官と蘭子に一礼すると、「おやっさん。忙しいんだけどなあ。銘柄、分かりましたよ。〇〇食品が出しているチューブ入りの猫用のエサ。以前、事件のあった時のエサより数倍人気があります。これ、写真。実は、最近、液体のも発売されたんです。同業他社にはありません。これ、写真。これを刷毛で顔や手に塗ったのかも。どんな恨みがあるか知らないけど、趣味悪い。んじゃ。」と、説明した。
「済まんな。」と、井関さんは玉田に言った。
玉田は、鑑識OBである。今は、ドッグトレーナーの会社の幹部であるが、現役時代は井関さんの右腕で、井関さんを『おやっさん』と呼んでいた。
玉田は、蘭子と管理官に一礼し、新山を一瞥して出て行った。
新山は、扉を睨んだ。
大曲先輩が、村松に目配せした。
村松は、頷いた。
「あ、猫を近寄らせた理由は分からないが、小道具は判明した。井関さん、死因は?」
「絞殺。一旦、首つりさせている。吉川線があるからな。」
吉川線とは、首を絞められた(絞殺・扼殺)殺人事件の被害者の首に残る、引っかき傷や表皮剥脱のことである。自殺でない証拠だ。
「相当な恨みだな。念に念を入れて。」管理官は、呆れた。
「辻さん達は、解党する前の党の関係者を当たってください。皇係長、餅屋係長、関口係長、紅林係長のチームには、他党の評判を当たって貰います。大曲達と村松は、水越家へ。遺体との対面は、解剖後の返還で、と連絡してある。遺体は猫のひっかき傷もある。」
「「「了解。」」」
午後2時半。クルマの中。
スマホで確認していた村松は、大曲先輩と、運転中の俺に言った。
「猫嫌い?そうだったんだ。」
「猫より執念深いな、ホシは。」と、大曲先輩が言い、俺達は頷いた。
午後3時半。練馬区。水越家。
水越ローランドさんは、アメリカ人だが、エミリの母親唄子さんと国際結婚し、帰化した。
唄子さんは、20年前に亡くなっている。貿易会社の専務であるローランドさんは、気さくな人だった。
「写真は、メールで送って貰いました。やはり、エミリとは綺麗な顔で再会するのがいいと思いました。母親を亡くしてから統合失調症になって、主治医だった先生の勧めで政治家になりましたが、あの時反対すれば良かった。まあ、お上がりください。」
大曲先輩が、エミリの自室に案内して貰う時、蘭子から緊急メールが大曲先輩に届いた。
俺は、ちらっと見せて貰った。
『神道から連絡が入った。ガイシャは半グレと付き合いがあった。』
―「捜査一課ですけど、273」につづくー
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
----- ゲスト –---
玉田華代。元警視庁鑑識課の巡査。今は、ドッグトレーナーの会社の社員。




