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268.サキュパス、るるる。

「あれ、ハロウイン近いからですか?」

「ナンだって?」

「荷台の中からぶら下がっている、人形。」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 午前6時。ある国道沿い。

 長距離トラックの荷台から垂れ下がっている人形を、コンビニ帰りの大学生が見付けた。

 運転台で仮眠している、運転手に大学生蜷川栄太は尋ねた。

「あれ、ハロウイン近いからですか?」

「ナンだって?」

「荷台の中からぶら下がっている、人形。」

 運転手が訝りながら確認すると、『サキュパス』とかいう角を被った、首から下が下着の女性がぶら下がっていた。

「おい。110番、頼む。人形じゃない。死体だ。」

「運転手さんは?」

「会社だよ。遅れるから。」

「ああ。」

 大学生は、素直に110番通報した。


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

「ええと、君が蜷川君で・・・。」

「東日本平和運送の立石です。今、会社の方にも連絡入れました。パーキングエリアで括り付けられたのかも知れません。それまでなら気づいてた。」

「あれー。」

 蜷川が、大声を出した。

「刑事さん、この死体。内山あかりじゃないかな?」

「君、知ってるの?有名人?」

「北西市の市会議員。口汚くて、議会だけじゃなくて、SNSにしょっちゅう投稿している、隣国思想バリバリのオバサン。」


 =================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『国道死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、北西市の市会議員内山あかり。口汚いのがチャームポイントだそうだ。村松、チャームポイントになる?」

 村松は、かぶりを振った。

「ガイシャは、サキュパス』とかいうハロウインの仮装の角を被っていた。首から下が下着で、トラックの荷台後方に固定されていた。よく知らないが、魔女の紛争らしい。死因は、井関さん。」

「後頭部の損壊。この角で見えなかったが。傷隠し、というより、このかぶり物は、ガイシャへの当てつけかもな。相当嫌われているらしい。だな、情報通の秋野。」

「発見者の大学生が言っていた通り、1日何回もSNSにアップしています。市長や市政に対してというより、日本人ヘイトです。『おまいら日本人は』とか書いてます。」

「外国人市議なのか?とにかく、被疑者は多そうだな。」

「今は、無所属だが、一時巨額党にいたらしい。遺体確認は、巨額党の事務員が溝内課長と行い、面談中だ。辻さん達は、巨額党の事務所を当たってください。村松も行け。大曲達は、内山家だ。お父様が出張をキャンセルして、上京中だ。」と蘭子は言った。


 午後3時。内山家。

 張り番の警察官に確認すると、内山氏は、まだ到着していないらしい。

 クルマで待とうかと思っていたら、当人がやってきた。

「お待たせして申し訳ない。巨額党の久米さんが遺体確認をしてくれたらしいので・・・まあ、上がってください。」

 気さくな人だ。製薬会社の営業部長らしい。名刺を頂いた。

 大曲先輩は、通り一遍の挨拶をした。

「お気遣い、ありがとうございます。父子家庭で、我儘に育ってしまって。日本人ヘイトしていますが、出自は、日本です。私の娘です。巨額党の影響で思想が・・・まあ、上がってください。」

 もう、上がってますけど・・・。

 先輩は、ガイシャの部屋に入り、俺は書庫に入った。

 父親のらしい、製薬関係の本は、書棚の横に積んであって、書棚は、『思想』関係のものに溢れていた。

 アルバムを広げ、父親の遷都さんは、党の慰安旅行の写真を示した。

「右端にいるのが、あかりと船場さん。船場さん、がんで亡くなってね。それから、おかしくなってしまった。離党したことになっていますが、本当は『除名』、会社で言えばクビ、ですね。奇跡的に市議に当選したのも、繰り上げ当選なんです。古参の議員が亡くなられて。で、議会を通じて『復讐』してやる、なんて言って。」

「誰にですか?」

「世の中。」

「はあ。他に親しかった方は?」

「副代表の玉置さん、かな?でも、除名は玉置さんが言い出したそうです。議会でも何を言っていたか分からないし。」

「成程。」


 先輩のいる部屋に、アツバムと葉書ホルダーを持って戻ると、「念の為、サイバー犯罪対策課にタブレットを調べさせたいのですが、よろしいですか?」と、先輩は、遷都さんに確認した。

「はい。どうぞ。」

「遺体引き取りの連絡は、いずれ係の者が連絡してくると思います。」

「了解しました。」


 午後4時半。捜査一課。第二応接室。

「被疑者が2人。巨額党の久米氏。もう一人は、父親の遷都氏。」と、大曲先輩が言った。

「製薬会社に裏取りしましたが、出張はスケジュールになく、電話一本、取り消しも電話1本でした。」と皇係長が報告した。

「ガイシャの交友関係ですが、久米氏だけが親しかったようです。」と、辻さんが報告し、「久米氏は、今はヒラの事務員ですが、去年までは役付きだったようです。ガイシャの当選にウラがあるのでは?と同僚の女性事務員が疑っていました。詰まり、公選法違反です。」

 そう言ったのは、村松だった。流石だ。

「管理官。家宅捜索をしたいのですが・・・。」

「ガイシャの家か。いいだろう。」


 午後3時半。捜査一課横の大会議室。『国道死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、倉田課長、溝内課長、大仏課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 倉田課長、溝内課長、大仏課長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、巨額党の久米篤志、父親の内山遷都。交通関係の公選法違反が発覚、あかりは2人を責めた。言い募る内に、レイプされたことを思い出したガイシャはSNSで拡散する、と言い出した。揉み合う内、錯乱したガイシャは自ら花瓶に頭を突っ込み、壁にぶつけて亡くなった。2人は日頃の行いから、SNSで敵視している人間がハロウインにかこつけた、犯罪を行ったことにする工作をした。何とも痛ましい。」


 午後5時半。眩目家。

「統合失調症?」

「うん、あるキッカケで、行動の記憶を無くすことがあるらしい。奇行もその辺が原因じゃないか、って、監察医の先生は言っている。殺人罪には違い無いが、死体遺棄も事実だ。」

「自分の娘なのに。」

「魔が差した、とは言っているが、どうだか。」


 午後7時。

 食事を終えた蘭子は、珍しく洗い物をしながら言った。」

「そろそろ、魔が差す時間だな。」


 助けて。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。警部補。


 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 大仏(おさらぎ)俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。警部。












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