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267.孤独な創始者

違憲異種党本部前の入口階段の上に、スーツの男が倒れていた。

服の下から血が流れ出ていた男は、党の創始者・矢澤一郎氏だった。

報せを受けてやってきた、山谷警部補が身元を指摘したのだった。

モデルガンで射殺された矢澤のズボンのポケットから、一枚の紙片が出て来た。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 ※前回のあらすじ。

 違憲異種党本部前の入口階段の上に、スーツの男が倒れていた。

 服の下から血が流れ出ていた男は、党の創始者・矢澤一郎氏だった。

 報せを受けてやってきた、山谷警部補が身元を指摘したのだった。

 モデルガンで射殺された矢澤のズボンのポケットから、一枚の紙片が出て来た。


 =================

 翌日。午前10時。捜査一課。第二応接室。

「確かにハッキングされていました。海外からではなく、この党の、デジタルに明るいと言われている日下部俊哉です。そして、メールに時々『官僚リスト』なる文言が出て来ます。相手は、矢澤氏と党を立ち上げた小田氏です。日下部は、『捏造』動画騒ぎの時、噛んでいます。日下部が業者にAI動画を発注したのでは?と言われています。」

「そのリストが狙われたんだな。裁く相手がいるな。半グレを当たってみるよ。」そう言って、神道課長は出て行った。

「取り敢えず、日下部家に家宅捜索だ。令状を取ろう。」と、管理官は出て行った。

 蘭子は、表向きは『窓際族』、『閑職』だ。公式種類の取り寄せは、管理官が代替してくれている。

 そこに、深山課長が跳び込んできた。

「開光課長。これを。」

 メールをプリントしたものだ。

 文面には、『関東モチノキの会という組織がある。最近、隣国の手下になったらしい。開光課長のファンより』と書いてある。

「蘭子は、あらゆる人間にもてもて、だな。」と、新垣課長が揶揄った。

「ファンは大事にしなくちゃな。返信先が分からないから、お礼の手紙は書いたことがないが。」と、蘭子は、口を歪めた。

 蘭子は、その場で神道課長に電話した。

 そして、スピーカーをオンにした。

「神道。半グレは『関東モチノキの会』だ、日下部議員と繋がりがある筈だ。」

「そのタレコミは、黒ずくめのオジサンか?」

「さあな。忠犬の意地を見せてくれ。」

「わんわん。」


 午後3時半。捜査一課横の大会議室。『違憲異種党本部死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、倉田課長、酒井優香、深山課長、溝内課長、皇係長、餅屋係長、関口係長、紅林係長、大曲先輩、蘭子、警視監、管理官が出て来た。

 管理官が説明を始めた。

「ホシは、違憲異種党の小田議員、日下部議員、関東モチノキの会の戸川智也、奥山達治。実行犯は、戸川と奥山だ。小田議員に呼び出された矢澤氏は、奥さんを実家に帰らせた後、小田に会った。そして、ハッキングで見付けることが出来なかった『官僚リスト』のありかを尋ねられた。一方、勘の鋭い江威子さんは、『本物の』官僚リストを持ち出していた。それで、戸川達が家捜しした時にも発見出来なかった。江威子さんは、家捜しの痕跡を消した。そして、一番安全な場所に『本物の官僚リスト』を移動させた。詰まり、警視庁だ。眩目くんが持ち帰ったアルバムに挟んであった。リストは、電子ファイルじゃない。江威子さんが作った紙のリストだ。このリストは、実は、『スパイリスト』だ。リストを辿れば、隣国が危ない情報だ。パソコンに慣れれば、パソコンの考え方をする。そうだね?大曲くん。」

「その通りです。江威子夫人に連絡したら、紙のリストが破かれても、私の脳は破けない、と笑っていました。」


 ===============================

 午後5時半。警視庁の駐車場。

「そこにいるのは、黒ずくめのオジサンか?」

「名も無き殺し屋だ。」

「変な名前。また、しくじったのか?それで私に逮捕させたのか?」

「ああ。矢澤氏が、合体政党が解体して、新党を作ったのを見て、また新党を作ろうとして、誰も相手にしなかったことは、知っているな。」

「ああ。聞いている。まさか、それで?アンタに依頼?」

「またしても、ダブルブッキングの為に、変なのに先を越された。本人は、絶望して、愛妻残して死ぬ筈だった。氏の子供は、もう亡くなっている。しかし、自分に死ぬことが出来るかどうか自信がない。幸い、保険はかけてある、そういう話だった。自分が毒のある独裁者、毒裁者と言われたことがあると自虐ネタを披露してくれたよ。奴らには逃げて欲しく無かったんでな。ああ、まだ見ていないかも知れないが、リストには『出自』も書いてあるらしい。出生地もな。大した秘書だ。」


 烏が鳴いた。

 その隙に、名も無き殺し屋は消えた。

「ありがとう、父さん。」

 その台詞は、烏ぐらいしか聞いていなかった。

 ============================


 午後7時半。眩目家。

「真吉。明日な。矢澤氏の、お通夜だ。喪服、用意しておけ。今夜は、お預けだ。」


「わんわん。」


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 溝内健児・・・生活安全課課長。警部補。

 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。


 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。

 山谷敬三・・・元警視庁警部補。今は警備会社警備隊長。


 井関一郎・・・警視庁警務部監察官。


 名も無き殺し屋・・・蘭子の父親???




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