265.踏み台
前回のあらすじ。
九段テラス一階エントランスから続くエスカレーターに女性が倒れていた。
コンシェルジュが、止まっているエスカレーターの中央付近に倒れている人物に気づき、110番通報をした。
「エントランスに入るまでも誰にも会いませんでした。午前9時には、自動的に開いております。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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九段下の「公会堂」に該当する歴史的建造物は、現在「九段会館テラス」として再開発され、宴会場やカンファレンス施設となっています。
クライングフリーマン
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前回のあらすじ。
九段テラス一階エントランスから続くエスカレーターに女性が倒れていた。
コンシェルジュが、止まっているエスカレーターの中央付近に倒れている人物に気づき、110番通報をした。
「エントランスに入るまでも誰にも会いませんでした。午前9時には、自動的に開いております。」
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翌日。午前10時。捜査一課。第二応接室。
酒井優香が発言した。
「結論から言うと、薄野さんのPCは一心の会本部のPCとWANで繋がっており、一心の会はオトロシアにハッキングされています。そして、隣国のどこかのサーバーからハッキングされていました。薄野さんのPCは、オトロシアの友人から譲り受けたと言っていますから、薄野さんのPCが監視下におかれていたのも事実ですが、所謂『踏み台』に使われていたのは意外でした。古いPCで古いOSでも、データは共有され、権限がある者が自由にアクセス出来る環境は恐ろしいです。ハッキングを切るとルートは遮断出来ますが、開光課長から、【待った】がかかりました。」
「罠を張るんだな、性悪オンナ。」と新垣課長が茶々を入れたが、「まあまあ。芋づるであれば有り難いじゃないか。」と神道課長が言った。
「薄野さんには、それとなく了解を取った。『弔い合戦をしましょう』、と。」と、蘭子が言い、にやっと笑った。
いかにも薄野さんが好みそうな言葉だ。
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午後1時。九段テラス。エントランス。
「コンシェルジュが、こんな悪事の黒幕とはね。」と、薄野は言った。
「どちらがワルかしら?移民党・一心の会が進めている『副首都設計図』と交換にオトロシア・ブールルで大金を寄越せ、ってメールを送ってくるとはね。」
二ノ宮は、せせら笑い、スマホで合図を送った。
だが、何も起らない。
「どうしたのかな?カネはくれないのか?悦子の結婚相手までスパイだったとはね。やはり、日本はスパイ天国だ。」と、薄野は挑発した。
「スマホの相手は、その結婚相手、池山ひろし、だよね。そして、池山ひろしは、半グレのユーラシア平和連合KKの専務だ。親芋こけたら、子芋孫芋、こけた。」
「誰だ、アンタは?」
「知る人ぞ知る、捜査一課の窓際族・開光蘭子だ。外国船に紛れ込ませた、本物の二ノ宮咲子の遺体も発見したよ。宴会係長が、コンシェルジュの顔を見間違えるなんてあり得ない。」
偽二ノ宮は、拳銃を撃った。
だが、一瞬早く偽二ノ宮の握った拳銃は弾き跳ばされていた。
弾き飛ばしたのは、エスカレーター上の新垣舞の拳銃だった。
「犯行現場は、ここだ。拳銃で至近距離から撃って、遺体を蹴って、エスカレータ下まで転がした。工作は仲間がやった。機捜が来るまでにね。まさかの盲点だった。頭いいねえ。褒めてやるよ。」
「何者だ!」
「何者だあ?『御用のスジ』ですけど、何か?」新垣舞は、せせら笑った。
何人もの警察官がやってきて、偽二ノ宮を捕えた。
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午後5時。捜査一課横の大会議室。『エスカレーター死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、新垣課長、神道課長、溝内課長、倉田課長、酒井優香、皇係長、紅林係長、大曲先輩、蘭子、井関警視監、管理官が出て来た。
新垣課長、神道課長、溝内課長、倉田課長、酒井優香、皇係長、紅林係長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、偽二ノ宮咲子こと通称ミア・カンカン、ガイシャの婚約者だった池山ひろし、ユーラシア平和連合KKの星野秀一と板東智也。射殺実行犯はミアだった。薄野氏によると、『副首都設計図』はまだ、構想の段階で書類は1枚もないそうだ。池山は、政権を揺さぶるチャンスと考え、ミアに相談した。隣国マフィアのスパイであるミアは、仲間を通じて、複数のサーバー経由で一心の会のサーバーに侵入、『副首都設計図』を奪い取ろうと計画した。ミアと池山の会話を耳にしたガイシャは、止めてくれと温顔したが、返り討ちに遭った。本物の二ノ宮しか知らないガイシャは、偽物に簡単に始末された。発見者がホシだったことは珍しくないが、複雑な政治関連の事件だった。」
井関警視監が、言った。
「危険を顧みず、協力して頂いた薄野議員には、丁重に礼を言っておいたよ。じゃ、能なし記者どもに説明に行こうか。」
警視監と管理官は、意気揚々と出て行った。
午後6時半。眩目家。
ハヤシライスを作りながら、蘭子は言った。
「オフレコ、って言うのは、政治家の悪い癖だな。大曲が、『オフレコ』や内緒話はしない方がいいですよって、進言したそうだ。あいつもたまには役に立つ。」
たまに?可哀想なこと言うなあ。
「何か言ったか?」
「いえ、別に。ハヤシライス、美味しくなったね。」
「ああ、村松が『隠し味』を教えてくれた。」
中身は聞かないことにしよう。恐いから。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警視監。井関の長男。
※「九段会館テラス」については、概要がよく分からないので、想像で書きました。(実名は避けました)
半世紀前に、「九段下公会堂」で働きましたが、影も形もないと知って、カルチャーショックでした。クライングフリーマン




