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262.人間ボーリング?

2人は、あのボーリング場のシンボルであるピンを撮影にやってきたのだ。

「なあ、晃。ここ、明日、解体工事始まるんだよな。」

「だから、撮影に来たんじゃん。」

「あれは、何?」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 午前10時。あるボーリング場跡。

 大学生の野村仁志と真木晃は、明日の月曜日から解体工事が始まる、という、元ボーリング場にやってきた。

 2人は、あのボーリング場のシンボルであるピンを撮影にやってきたのだ。

「なあ、晃。ここ、明日、解体工事始まるんだよな。」

「だから、撮影に来たんじゃん。」

「あれは、何?」

 まるで、ボーリングのピンのような並び方をしている人形。

 全部で10体。

 所謂『パンチングボール』で固定されている。

 いや、よく見ると、1体だけ違う。

 後の9体は顔写真とネームプレートだが、先頭の1体は、人間だ。

 2人は、反射的にデジカメとスマホに撮影した。

 そして、野村は、110番通報した。

 30分後。機捜と鑑識が到着した。

「上手いこと固定したなあ。」と、井関は感心した。

「野村君と真木くんね。悪いけど、タブレットに名前と連絡先、書いてくれる。決まりだから。君たちは疑う要素ないよ。」

「進んでるなあ。」

「ここに書けば、自筆だし、誤字ないから。真木くんなんかは、草冠のまきと間違えられそうだし。」

「病院で、間違えられました。」「だろう?君たち、クルマ?」

「はい。」と、野村は答えた。

「来る道で、他のクルマとすれ違わなかった?不審車かどうかは警察が判断するからね。」

「いえ。高速降りて2キロだけど、すれ違ったクルマはないです。あ、刑事さん。ここね。明日から解体工事が始まるんです。」

「詰まり、犯人は、それを知ってて、ここに遺棄したか。ありがとう。捜査担当の刑事さんに伝えるよ。」

「刑事さんが捜査するんじゃないんですか?」

「うん。初動って言ってね。発見された時の状況を調べる担当なんだ。大丈夫、ちゃんと捜査の担当に伝えるよ。


 =================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『元ボーリング場跡死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明を始めた。

「発見者は、解体工事前に見に来た大学生2人、盛況の時は、ここでよく遊んだらしい。で、ガイシャだが、かつて与党『裏金10人衆』と呼ばれた議員の一人、柳瀬平吉。他の9人は顔写真だけだが、ガイシャは顔写真の上にゴーグルがあった。井関さん、これって・・・。」

「多分、顔写真が風でめくれない為だろう。遺体も人形も、パンチングボールに巧みに固定されていた。ホシにしてみれば、『天誅』くらいの・・・天罰くらいの気分だったかもしれない。拘束バンドの跡と、青酸カリ反応があった。」

「柳瀬は、先頃の選挙で恫喝していた疑いがあり、地検も動いていた。因みに、発見現場は地元選挙区らしい。」

「辻さん達は、移民党に行って、柳瀬の交友関係を、特に残りの9人には、『次に狙われてもいいんですか?』ぐらいのことを言ってもいいと思います。皇係長、餅屋係長、関口係長、紅林係長のチームを応援に出します。大曲達と村松は、遺体確認後、溝内課長と面談している幹事長に案内して貰って、柳瀬家に。以上。」

「「「了解。」」」


 午後2時半。クルマの中。

「選挙の時、復活して欲しくなかったな。変な制度だな、比例区とかは。」

「必要無いな。押しの政党は?はアンケートでいい。政党の人気と候補者の人気はかなり違う。それが浮き彫りになった選挙だった。あ。曲がったぞ。ウインカー出せよ。けいさつの前で交通ルール無視するな。」


 午後3時半。柳瀬家。

 大曲先輩は、幹事長に言った。

「今は、誰でもカメラマン。交通ルール守らなかったら、誰かがSNSに投稿しますよ。今でなくても、ね。写真も映像も保存出来るんです、スマホだけでなく、ネットにね。係が違うから、これ以上言いません、でも、今のは軽はずみな行動です。」

「今のは・・・。」

「相手は私じゃない。何百万もの『有権者』です。」

「失礼しました。」

 言うと、幹事長は去って行った。

 柳瀬家の中から拍手が聞こえた。

 女子中学生だった。

「母は、こんな時でも旅行を切り上げようとしないので、『マスコミに追い掛け廻されたいの?夫コロシのオンナとして』って言ったら、すぐ支度するって言ってました。」

「今、どこです?」

「熱海。アホです。」

 しっかりした娘、里美は、中に案内してくれた。

「ここが、父の書斎兼蔵書室。アルバムもある筈です。衣装部屋は、母の、趣味の悪い服しかないけど、見ます?」

「いや、いいです。」

 俺は、里美さんと、アルバムを繰って行った。

「一番仲が良かったのは、同期の岩穴さん。今、隣国行って、ヘラヘラしてるおじさん。」

「嫌いなの?」「犯されそうになりました。」

「え?」「母が止めました。その時だけは母に感謝しました。」

「あ・・・そう。」

「眩目。事件の前の日、柳瀬さんを呼び出したのは、週刊ベロレロの記者だ。だが、一人でやれる仕事じゃないな。」

 大曲先輩は、神道課長に直接電話してから、蘭子に報告した。

「記者が、何かネタを掴んで、ホシに売ったな。ホシが記者をパシリにしたパターンだ。」


 午後4時半。クルマの中。

「先輩。予想通り、ガイシャはカネにもオンナにも目がないようです。デリバリー呼んで、目撃されています。」

「ザマミロ、のクチか。」

「ザマミロ、のクチです。」



 ―「捜査一課ですけど、263」に、つづくー


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。







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