259.剪定必勝?
顔の上の野球帽を取ると、やはり、死んでいた。
高山は、無線で、主任の大下に報告した。
「了解。警察には本部から連絡する。お前は、現場保存に勤めろ。」
「了解。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前9時。ある中学校。
裏門から跳び出た葉山徹と及川慎二。
エスケイプだ。
だが、エスケイプは失敗に終わった。
警備員の高山が近づいて来たからではない。
北村が2人に説教しようとしたら、2人が震えて、裏門の前の道を指さした。
高山は、すぐに異変に気づいた。
アロハシャツに短パンの男は大の字に寝ていたが、股間に剪定鋏が挟まった格好だった。
顔の上の野球帽を取ると、やはり、死んでいた。
高山は、無線で、主任の大下に報告した。
「了解。警察には本部から連絡する。お前は、現場保存に勤めろ。」
「了解。」
通信を切ると、高山は、「担任は石見先生だったな。授業は戻らなくていいが、警察に協力してくれ。」
30分後。機捜と鑑識が到着した。
大下警備員も、石見先生も到着した。
2人は、石見に促されて、赤井警部補に話した。
「エスケイプは悪いことです。ごめんなさい。それで、角の文房具屋さん方向に走って行こうとしたら、道の真ん中で寝ている人がいる。野球帽を被ってアロハで短パンで、季節外れだな、って思ったら、庭の木を切る鋏を股に挟んでいて、その下から血が出ているんです。そこに、警備員の高山さんが来て・・・。」
「葉山君と及川君の言う通りです。私は、上司の大下に連絡しました。
「剪定鋏は、凶器じゃない。血だまりを分かり難くしただけだ。」と、井関は言った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『中学裏門死体遺棄事件』本部。
管理官が説明を始めた。
「発見者は、中学生の葉山徹くんと及川慎二くん。授業をサボるのは、退院によると常習犯だそうだ。2人が発見した後、警備員の・・・また、あの警備会社ホメロスか。高山警備員から会社に連絡、110番通報された。現場は人通りが少ないが、不審者の聞き込みを警邏課が行って、トヨタのセダンが、1時間半。コンビニに駐まっていた事が分かったが、盗難車だった。それで、ガイシャだが、所持品がないので、広報からマスコミを通じて呼びかけて貰う。井関さん、凶器は?」
「剪定鋏が股間にあったが、凶器ではない。【洋裁鋏】とも言われる【裁ちばさみ】だ。ホシの趣味か、分かり辛いメッセージだろう。」
「なんで、警邏課が?」と、新山が言った。
井関が弱った顔を見せたので、村松が「ひかるちゃん。警邏課はね、『歩く犯罪防止網』なの。ただ、ルートを巡回しているのじゃないのよ。交通課で習わなかった?」と言い、新山は黙った。
辻さんと蒔さん達が笑いを堪えている。
「盗難車とは言え、不審車が早く見つかって良かった。交通課で、Nシステムのチェックを行うだろうから、不審車の移動は分かる。新山。警察は連携だ。世間一般が思う程、縦社会じゃない。政府の省庁とは違う。異動は願い出てもいいが、井関さんを泣かせるな。」
蘭子は優しく?睨んだ。
「とにかく、ガイシャの身元確認が先だ。午後2時のニュースで流れる。解散。」
午後2時半。捜査一課。第二応接室。
「『歩く犯罪防止網』か。いいキャッチコピーだな。『歩く交通安全』じゃないんだ。」と、神道課長が言い、「それなら、交通課だろ。蘭子、広報で拡散して貰おうか。」と、新垣課長は言った。
「心当たりは、ないんだな?少なくとも、ヤクザねっとわーくでは。」と、蘭子は新垣課長に確認した。
「新興勢力なら、分からないがな。まあ、スジ者には見えないな。」
「案外、亜細亜人かもな。空港警察に打診したか?」
「入管だろう。打診してみるよ。失踪者が見つかれば、無駄足に間違い無いが。」
午後5時。眩目家。
蘭子のスマホが鳴動した。
蘭子はスピーカーをオンにした。
深山課長の声だ。
「ブラジル国籍の男でした。日系4世です。入管からも報告がありました。ホテル滞在の家族が、こちらに向かっています。一歩進みましたね、課長。」
「ありがとうございます。」
翌日。午前10時。第二応接室。
「ガイシャは、PaTホテル滞在の、日系4世パブロ山本でした。昨夜の内に、一緒に来日していた家族が確認しました。一行は、昔、世田谷区に住んでいた先祖の墓参りと、日本製の剪定鋏を購入することを兼ねて旅行に来ていました。墓参りの後、パブロがいなくなって心配していたそうです。購入予定の店は、パブロがネットで調べたらしいのですが、家族は知りませんでした。因みに、パブロの職業は、所謂庭師、です。」
溝内課長は一気に話した。
続いて、深山課長が「今の所、家族と入管以外からの情報は集まってきていません。購入したのなら、お店から言ってくると思うのですが。」と、言った。
「多分、店に行く前に、トラブルがあったんだろう。困ったな。」と、管理官が言った。
「辻さん、その墓から遠く無い家で、剪定仕立ての家がないか調べてください。遭遇したが、気後れして連絡してこないケースもあるかも知れない。」
「了解です。」
「剪定鋏は、どこのホームセンターにも売っているものだから、辿り難いだろうなあ。【裁ちばさみ】も同じくだ。」と、井関さんは溜息をついた。
そこへ、交通課の大仏課長が入って来た。
「現場から2.5キロ先の手芸店近くで、店主が接触事故を目撃していました。接触したのが、不審車として発見された盗難車で、電気工事店の車です。接触された方の車のドライバーから届け出が出ていて、そのドラレコから、2人の男が乗っていたことがわかりました。その一人がガイシャです。もう一人が、前科者データにありました。野村敬吉です。今
指名手配しました。」
午後1時。捜査一課横の大会議室。『中学裏門死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、小宮課長、大仏課長、溝内課長、深山課長、新垣課長、神道課長、井関課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
小宮課長、大仏課長、溝内課長、深山課長、新垣課長、神道課長、井関課長はすぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、野村敬吉。ガイシャは、墓参りの後、家族と別れて、ぶらぶらしていた。日本の剪定の様子の見学だ。たまたま、車の盗難をする所を発見、同乗して説教をした。4世とは言え、ある程度パブロは日本語が出来る。そして、敬虔なクリスチャンであるが為、盗みを見逃せなかった。ホシは、何度も振り落とそうとして、現場に到着。持っていた裁ちばさみでガイシャを殺害。電気工事店の自家用車に搭載の剪定鋏を放棄した。そして、安全圏に逃走した積りだった。警備会社ホメロスの方から連絡があり、警備課が開門簿中のホシを確保した。因みに、裁ちばさみは、置き引きしたものだった。ホテル滞在の家族には、警視監から、今連絡している。義侠心が仇になった事件だった。」
午後5時半。眩目家。
村松がクレープを焼いている。
「村松の目から見て、どうなんだ?」と、蘭子が尋ねた。
「年少さん、だから。」と、村松は笑った。
午後7時半、
「ウチのは、年少さんじゃないだろうな。」
そう言って、蘭子は俺にキスした。そして・・・。
助けて。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
小宮孝・・・警備課課長。
溝内健児・・・生活安全課課長。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。
深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。
山谷敬三・・・元警視庁警部補。今は警備会社ホメロス警備隊長。
井関一郎・・・警視庁警視監。井関の長男。
井関花江・・・警邏課課長。警視。井関の息子一郎の嫁。
※ヒントになる事件は起こっていません。
クライングフリーマン




