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258.者間距離

「三鷹先生。あなたが発見者ですか。」と、井関が言った。

「ああ。井関さん、暫くです。発見者というより目撃者かな。」と、三鷹医師は応えた。

「赤井。監察医の名取美枝先生の甥の三鷹喜助先生だ。」と、赤井は井関に三鷹医師を紹介された。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 午前9時。高速出口から1キロの国道。

 信号待ちでバイクを停車していた須永病院の三鷹医師は、前の乗用車が、その前のトラックにゆっくりと追突するのを見た。

 トラブルになるかと思い、三鷹医師は、前に進め出た。

 乗用車のドライバーに文句を言おうとしたトラックのドライバーは、言葉を失った。

 三鷹医師は、「死んでるよ。でも、アンタのせいじゃない。後続車の整理を頼まれてくれないか。」と、身分証をドライバーに提示した上で、110番通報をした。

「エエ。クルマは追突しましたが、その前に死んでいます。」


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

「三鷹先生。あなたが発見者ですか。」と、井関が言った。

「ああ。井関さん、暫くです。発見者というより目撃者かな。」と、三鷹医師は応えた。

「赤井。監察医の名取美枝先生の甥の三鷹喜助先生だ。」と、赤井は井関に三鷹医師を紹介された。

「井関さん。救急車が来たら、ウチの病院に運びます。」

 そう言って、三鷹医師は、勤務先の須永病院に電話した。

「トリアージだ。毒物による殺人だ。」


 =================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『毒殺死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明を始めた。

「発見者は、須永病院の三鷹医師だ。目撃者だ、とご本人は言っているが。乗用車に乗っていたガイシャのクルマが、先行して停車中のトラックに追突した。ぱっと見は、車間距離が狭いか、スマホの、ながら運転だったが、ガイシャは既に死んでいた。井関さん、毒物死らしいですが、例のヤクですか?」

「うむ。時間的に見ても距離的に見ても、高速を降りる1キロ手前のサービスエリアで、毒を盛られた。ガイシャと別れたホシには、アリバイが成立する寸法だ。」

「サービスエリアの防犯カメラは死角が多い。Nシステムに引っかかったのは、ガイシャのクルマだけだ。ホシは、身元不明にする積りは無かったようだ。運転免許証によると、ITの会社、日本IT総合の課長高津晃氏だ。半グレが絡んでいるかも知れないので、神道課長に声をかけて・・・。」

「呼んだ?」と、神道課長が入って来た。

「日本IT総合は、合併話が出ているらしいが、まだそれ以上は分からない。」

「神道。来年は、2倍返しで勘弁してやる。」と、蘭子が言うと、「ラッキー!!」と言い、スキップして出て行った。

 新山が怪訝な顔をしている。

「大丈夫。神道は、手下だから。あ、間違い。BFFだから。」と、蘭子が言うと、新山は不思議な顔をした。

 皆は、あらぬ方向を向いて、肩を揺らせている。

「警邏課が、ガイシャの相手のクルマの目撃情報を当たっている。辻さん達は、会社の内部情報を。村松も行け。大曲達は、今、溝内課長と遺体確認後の面談している、会社の代表二ノ宮俊基さんと、ガイシャの家に向かってくれ。」

「「「了解。」」」


 午後2時半。クルマの中。

「三鷹さんって、前にも・・・。」

「ああ。凄腕の先生だ。流行り病の時も、何十人もの患者を一気に裁いたらしい。」

「へえ。天才医師って、本当にいるんですね。」

「うん、いるんだ。」


 午後3時半。府中市。高津家。

 ガイシャの妻、杏さんは、俺達に深く礼をした。

「申し訳ありません、主人がとんだ、ご迷惑を・・・。」

「奥さん、しっかりして。ご主人は被害者です。加害者じゃありません。」

 杏さんは、気絶した。

 入って来た酒井が、頬を張った。

「しっかりしなさい。大曲くん達が、ちゃんと捕まえてくれるから。ね?」

 先輩と俺は頷くしか無かった。


 15分後。酒井から簡単に事情を聞き、俺達は納得した。

 ガイシャの高津さんと杏さんは、酒井とIT学校の同期だった。

「普通なら、差し出がましいことするな、ってとこだけどね。」

 多分、蘭子も倉田課長も、そんなことは言うまい。

 俺は、杏さんの案内で、葉書ホルダーと住所録を確認した。

 そして、アルバムを繰って最初に見せてくれたのが、IT学校の集合写真だった。

 酒井夫妻と高津夫妻が仲良く並んでいる。

 更に見せてくれたのが、高津の会社の慰安旅行の集合写真だ。

「真ん中が、社長の高菜さん、左側が順番に専務の宝生さん、部長の高畠さん、右側が主人、副社長の安斉さん、主任の美保さん。事務員の石塚さん。」

 変な並び方だな。一目で派閥が分かった。

「合併話って、本当ですか?」

「ええ、専務さんが、隣国系企業と提携したんですけど、株が・・・。」

 乗っ取りだ。

「眩目―。」

 大曲先輩の声に我に返った。

「高津さん、会社のPCにハッキングしているわ。偽アカウント作って。それで、秘密を知った。」と、酒井は簡単に言ってのけた。

 俺は、アルバムを見せて、大曲先輩と酒井は納得した。


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『毒殺死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、倉田課長、酒井優香、溝内課長、皇係長、井関課長、神道課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 倉田課長、酒井優香、溝内課長、皇係長、井関課長、神道課長は、すぐ出て行った。

 管理官は説明した。

「ホシは、ガイシャの会社の専務の宝生、事務員の石塚、宝生と縁のある有眼会社転化ネットワークの武藤平吾、武藤は隣国マフィアと通じていて、例のヤクを入手していた。高津に『新AI』の情報漏洩を見破れたと知った宝生は、武藤と共にヤクを使って高津を殺害、一服盛られたと知らない高津は、運転途中、ヤクが回って絶命した。奥さんには、酒井くん・・・。」

「合点承知。ありがとうございました。」

 皆に一礼し、酒井は去って行った。


 新山は、扉を睨んでいる。

「村松に頼むか。新山は、酒井の事情を知らないから。」

「そうですね。お願いします。」


 午後7時半。眩目家。

「井関課長、今回も張り切って捜査してくれましたね。」

「ああ。宝生が向かった先を、車種で突き止めたのは、流石だ。潜伏先は、石塚の家だった。デキてたんだ。」

「宝生の車種は?」「さあな。情報網はあるんだろ。三鷹さんには、井関さんから連絡して貰った。監察医の名取美枝先生の甥らしい。」

 どうでもいいけど、業務連絡しながら、パンツ脱がすのは・・・。


「後で、ビーフステーキ、食べような。真吉。」

「はい。」


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 井関花江・・・警視庁警邏課課長。警視。井関一郎の妻。


 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 三鷹喜助・・・須永病院医師。監察医の名取美枝先生の甥。



 ※「題材」になる事件は発生しておりません。

 物語の都合上、簡単に潜伏先を特定していますが、実際は困難な作業だと思います。

 尚。『者間距離』は、筆者の造語です。誤字ではありません。人付き合いの距離です。

 クライングフリーマン









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