26.誰かが嘘をついている事件
ガイシャは・・・この場合、仏さんの方のガイシャは倉野英介。この家の主である小田太郎とは面識がない、と小田氏は言っている。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
神道助六・・・捜査二課課長。
新垣舞・・・捜査四課課長。
塩田洋介・・・少年課課長。
=================================
午後1時。捜査一課。『過剰防衛事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは・・・この場合、仏さんの方のガイシャは倉野英介。この家の主である小田太郎とは面識がない、と小田氏は言っている。倉野は鋭利な刃物で刺殺。というか、狂気のアーミーナイフは刺さったままだった。井関さん。刃物類は刺さったままだと流血が遅くなるんですよね?」
「ええ。止血しますから。回りから滲んで流れて行くんです。」と、井関は簡単に答えた。
「それで、倉野が侵入したホシに、置き去り、と言うか放り込まれた場所は一階。雨戸の隙間をこじ開け、雨戸を1枚外して、ガラス戸の内鍵付近をドライバー等で叩いて外から内側の鍵を外した模様。そして、二階からも侵入者が二人。バルコニーから侵入して布団敷いて寝ていた。小田さんは帰宅後、死体を発見して110番して、念の為に二階に上がると、小学生2人の兄弟が布団敷いて寝ていた。小田さんによると、前日、バルコニーに布団を干して、取り込んだ後、戸締まりした自信が無かったから、倉野を放り込んだホシは二階から侵入したかも知れない、と思ったそうだ。ところが・・・。」
蘭子が途中から割り込んだ。
「小学生2人のきょうだいは、窃盗の常習犯で、雨樋から二階に上がり、雨戸を開けると布団があった。つい寝てしまった、と少年課では言っている。」
管理官は、更に続けた。
「小田さんは、パトカーでやってきた警察官に、すぐに事情を説明。2件の侵入が一階と二階で起こって、一階の分は、ホシが『死体遺棄』する為に侵入した、と判明した。」
「子供達は、『死体遺棄』にかち合わなかったんですかね?」と、大曲先輩は呟いた。
「大曲。プラス一点。私も、そう感じた。死亡推定時刻は参考にならないかなあ。」
「一応、言うよ。死亡推定時刻は、前夜午後9時頃。遺体の動かし具合から、発見現場の約1時間以内の距離が、殺害現場。」と、井関が言った。
「誰かが、嘘をついている。」蘭子の目が光った。
蘭子は、他の課の協力を得て、徹底的に死体、子供達、小田の過去を洗った。
翌日。午後2時。捜査一課。『過剰防衛事件』本部。
管理官からの指名で、新任の捜査四課課長新垣がまず発言した。
捜査四課の課の課長は女性である。そして、解散した奈倉組の組長の妾、いや、側室様令嬢だ。
関係ない、とは言いながら、たまに反社関係の情報を得て、捜査に役立てている。
「小田氏は、今はプログラマで、当日も30時間勤務明け、でした。」
「30時間?」「業界では常識的だそうです。日を繰り越して勤務しても、十分な休日休息出来ないこともあるとか。で、小田氏は、以前の住まいで盗難に遭っています。建設会社の手抜き工事で雨戸が簡単に外れたので侵入した、と当時の窃盗犯は言っています。似てませんか?建設会社は、反社の下請けでした。」
「その時に学習したのか。」と大曲先輩は唸った。
そこで、捜査二課の神藤課長が発言した。
「その当時の不動産屋が、色んな詐欺を働いている倉野でした。歯の治療跡から、身元が判明しました。まだ警察に捕まったことはないけれど、公安でもマークしていました。」
「そして、我らが小田氏ですが、公安の臨時職員として働いていました。短期間ですが、情報漏洩した形跡もありましたが、当時公安がマークしていたスパイ疑惑の職員と混同されていたようです。」と、大曲が言った。
続いて、少年課の塩田が発言した。
「小田が入居した建て売り住宅は、まだ2軒しか入居していません。小田邸と、袋小路にある関邸です。何故、関邸でなく、小田邸にしたのかを問い詰めました。逃げ易い、と言っていましたが、煮え切らず、とうとう妹の方から聞き出せました。2人の父親も倉野に騙され、欠陥住宅に悩まされていたようです。そして、窃盗の常習犯、とは思いつきで言ったと言っています。」
蘭子が、取り調べを終え、やってきた。
「そして、被害者の会で、2人のきょうだいは小田と知り合った。父親は交通事故で亡くなったが、倉野への憎しみは消えなかった。倉野を殺害してしまった2人は小田に相談した。小田は、仕事場から抜け出し、工作をした上で、改めて帰宅した、ということです。小田が、彼らを二階にいるように指示したのは、容疑から外されると思ったからだそうです。」
蘭子は、疲れ果てた顔をしていた。殺しの実行犯が、幼い子供だったからだろう。憎しみのパワーは凄いものだ。
午後8時。夕食後、蘭子は、風呂も入らず、「求め」もせずに寝た。
午前5時。俺の女神様は、「リフレッシュしよう」と言いだし、俺のパジャマを掴んだ。
覚悟は出来ている。
俺は、とっくに気づいていた。大曲先輩が蘭子に嫌気がさした理由を。
しまった。今日は、日曜日だった。
―完―




