25.郵便配達はチャイムを押さなかった事件
「変な戒名。」
戒名とは、事件の通称であり、正式名はシリアルナンバーで管理されている。
志摩管理官は、家長である蘭子の実力を買っているが、戒名に関するネーミングは、あまり好きではない。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。『郵便配達はチャイムを押さなかった事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
「変な戒名。」
戒名とは、事件の通称であり、正式名はシリアルナンバーで管理されている。
志摩管理官は、家長である蘭子の実力を買っているが、戒名に関するネーミングは、あまり好きではない。
まあ、呟きが聞こえたのは、俺だけだろうが。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャの前田静雄は、元郵便局下請け宅配便配達員だ。人手不足の為、所謂外部委託で配達をしていた。先月、事故を起こしてしまい、物損事故だが、免停になった。それで、郵便局から契約を解除され、自宅待機中だった。女房はキツい・・・口うるさい性格で、パートタイマーするのはイヤだ、と始終夫婦喧嘩をしていたらしい。」
「刀がたけみつの侍だな。」と大曲先輩がつい言ったが、珍しく蘭子は褒めた。
「たまには、気の利いたこと言うじゃないか。私も同意見だ。プラス一点。」
俺は、心の中で、大曲先輩良かったですね、と思った。
「え、っと。そのガイシャが玄関で倒れているのを、通りがかった保険勧誘員が見付け、119番をした。救急隊員が何者かに鈍器で殴られ、昏倒したと聞き出し、110番をした。何で、こっちにお鉢が回ってきたかというと、これで3件目なんだ。他の2件は、前田と同じ元下請けだ。」
「管理官。郵便局に怨みがある者ですか?」
「ソウロウの眩目、気が早いぞ。」
蘭子は、俺が夫になった後でも、遠慮無く部下として扱う。
皆が苦笑していると、井関さんが助け船を出した。
「課長。管理官。ガイシャの傷ですが、『コンビネーションレンチ』だと判明しました。傷口が2種類あるので。簡単に言うと、片方がレンチ、もう一方がスパナです。秋野。」
秋野がコンビネーションレンチで、智子の後頭部に当てる振りをした。
「簡単に手に入るものですか?井関さん。」と蘭子が問うと、「工具ですからね。ホームセンターかネット通販で手に入ります。ナイフ等より血痕を拭い易いでしょうね。それと、女性でも使える。」と、事もなげに言った。
翌日。午後2時。捜査一課。『郵便配達はチャイムを押さなかった事件』本部。
辻班が有力な手掛かりを掴んで来た。
「皆、個人事業主だと思っていたら、数名の有限会社が請け負っていました。そして、女性ドライバーがいました。他の宅配便会社にも女性ドライバーがいますから、念押しで社長に尋ねてみたんです。そうしたら、違法就労の外国人女性ドライバーがいました。今、開光課長が取り調べしています。」
午後3時。以外と早く、蘭子は取り調べ室から出てきた。
「落ちたけど、残念ながら、まだ帰化していない。強制送還だな。原因は『痴話喧嘩』。四角関係。日本に留まりたくて必死だったけど、ガイシャ3人は口先だけだった。事故3件は、同じ国から来た仲間に頼んだらしい。」
「私は前田の女房かと思っていました。」と大曲先輩はしょんぼりして言った。
「いいよ。プラス一点は取り消さない。これからは、厄介な犯罪が増えるのかも知れないな。」
午後6時。眩目家。蘭子は珍しく、高野豆腐と卵を煮ていた。
「これ、亡くなった、父さんの得意料理だったんだ。食わないと、キョウセイソウカン、な。」
え?どこへ?
あ・・・そういう意味、か。
「美味しいね、蘭子。」
「お前ほどじゃないよ。」
え???
―完―




