256.寄生虫
女性が寝ていた。まるでメイド喫茶の女の子のような姿は、寝ているようにも見えた。
だが、胸にはナイフが立っている。
そして、側には写真があった。
『寄生虫』の一覧のようだ。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前11時。ある市道沿いのコンビニ。
このコンビニは、チェーン店の都合で閉業した店だった。
理髪店に散髪に行く為に、自転車で通りかかった、雄山憲一は、閉まっている筈の店に人影を見た。
ここは、数少ない『手動ドア』の店だった。
試しに手をかけると、開いた。
まだ解体作業には入っていないが、店内は空っぽの筈だった。
女性が寝ていた。まるでメイド喫茶の女の子のような姿は、寝ているようにも見えた。
だが、胸にはナイフが立っている。
そして、側には写真があった。
『寄生虫』の一覧のようだ。
後ずさりして、外に出た雄山は、迷った挙げ句、親友の楠木に電話した。
「バカ、俺に電話している場合か。すぐに110番通報するんだ、でないと、お前は犯人にされるぞ。」
電話を切った雄山は、慌てて110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「君が、通報してくれた、雄山クン?悪いけど、これに名前と連絡先、書いて。ケータイでいいよ。」
「あ、タブレット?ケータイショップでしかタブレットに書いたことない。」
「ああ。紙のメモだと間違いがある場合が・・・タブレットで良かった。おやまくんは、雄の山か。珍しいね。」
「はい。先祖は、秋田県だそうです。成程、メモに聞き取った名前を書くと、男の山って書きそうですね。」
「で、よく見付けたね、死体。」
「はい。ここ、3日前に閉業したんです。で、昨日、中のモノ、運び出してたから、もうすぐ解体になるのかな?って思って、目に入ったんです。今日、珍しく晴天だし、ここ南向きだし。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『閉業コンビニ店死体遺棄事件』本部。
管理官は説明した。
「現場は、閉業仕立てのコンビニ。チェーン店本部に問い合わせると、採算とれなくなった店らしい。発見者の雄山クンによると、混んでいる時は少なかったようだ。で、ガイシャだが、コスプレしてメイクしているから分からなかったが、新山が青梅党の神崎めい議員に似ていると言い出した。そうだな?新山。」
「はい。ほっぺにホクロが2つ並んでいるのが、チャームポイントだって本人が言ってました。顔に似合わず過激な発言が多くて、SNSでの投稿は、炎上してばかりです。」
「そうか。凶器は、胸に刺さっていたナイフですか、井関さん。」
「バタフライナイフですね。この子の指紋しか出なかったので、ホシが・・・おい、秋野。」
秋野は、ガイシャ役をした。
「こうやって、刺させたのかも知れません。ある程度の力の男なら可能です。現場に揉み合った形跡がないので、殺害現場は別でしょう。」
「写真は?」
「寄生虫の写真からは、何も。ガイシャが『寄生虫』だと揶揄しているのかも。そうだな、政界に詳しい、新山鑑識員。」
新山は、嫌味に気づかず答えた。「政党渡り鳥、だそうです。昔、グラドルだった、とかで政界に入りました。」
「グラドル?」
「グラビアアイドル、ですね。」と、蒔さんが補足した。
「今、青梅党の幹事長の青木さんが遺体確認に来て、溝内課長と面談している。辻さん達は、青梅党に聞き込みを。大曲達は、青木さんに案内して貰って、神崎家に行ってくれ。あ、村松も行け。」と、蘭子は指示した。
「「「了解!!」」」
午後2時半。クルマの中。
運転しながら、村松は言った。
「かなり、評判悪いですよ、あのオンナ、隣国のスパイって噂もあるし。」
「じゃ、狙われるのは、必然か。」
「当然です。特に、現総理の悪口は。嫉妬心、丸出し。」
「村松も嫌いか。」と、俺は尋ねてみた。
「論外です。」
後悔した。
午後3時半。神崎家。
母親の伊都子さんに挨拶して、青木さんは帰って行った。
「あのナイフ。スケバンやってた頃から持ってました。」
「「え?」」
「犯人さん、ありがとう!!!!!!!」
「「・・・。」」
「あ、取り乱してしまって、ごめんなさい。去年亡くなった主人が、いつも庇っていたもんですから。主人が亡くなった時も、『やったあ、私、社長やる!』って言いました。告別式の次の日、取締役会で、副社長が社長に昇格しました。私も取締役ですし、妻、ですから。お分かりですね、大曲さん、眩目さん。」
俺達は、頷くしか無かった。
大曲先輩は、『勉強部屋』と称する私室に入った。隣の部屋は、大きな鍵がついていた。
「ああ、主人の書斎だった部屋です。」
クローゼットの部屋には、スケバンほか『色んな』衣装があった。
そして、伊都子さんは、『勉強部屋』に引き返した。
「こっちだったわ。」いや、迷ったんじゃない。見せたかったんだ、あの部屋を。
アルバムを繰り、小学校の時の写真だけがまともで、中学高校がスケバン時代と分かった。
そして、議員になってからの集合写真は大人しかった。
「この方が、党に誘ってくれた小山田さん、そして、金城さん。」
「その金城さんとの面会約束が最後のメールですね。」と、タブレットを調べていた先輩が、横から言った。
「『目黒寄生虫館に行ってから、大鳥神社にお参りしよう』って書いてます。」
午後5時。捜査一課。第二応接室。
「じゃ、目黒寄生虫館か大鳥神社が殺害現場か。」と、蘭子が言った。
「ああ、発見現場からクルマで5分位ですね。」と、辻さんが言った。
「よし。両方とも、明日、調べよう。辻さん、党はどうでした?」
「鼻つまみ者、です。よく支持者がいたな、と思ったら、亡くなった父親の経営の製紙会社の取引先。もう、彼女の後ろ盾はいない。」と、辻さんは嘆息した。
「近所の評判もやはり悪かったです。子供の頃は『お転婆』で済んでもねえ。」と、村松は言った。
―「捜査一課ですけど、257」に、つづくー
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。




