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255.オッサンは子供を産めません

オムツ替えベッドに横たわっていたのは、妊婦の格好をしていた男だった。

異常事態に気づいた静子は、レジ案内係に行き、同僚の桜井美奈子に助けを求めた。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 =======================

 午前11時。スーパー伝統。

 非番の店員の上原静子は、娘の華子と共に、多目的トイレを使用と扉を開けたら、先客がいた。

 オムツ替えベッドに横たわっていたのは、妊婦の格好をしていた男だった。

 異常事態に気づいた静子は、レジ案内係に行き、同僚の桜井美奈子に助けを求めた。

 館内放送で店長を呼び出した桜井は、多目的トイレに行き、異変を確認、『使用中』の札を下げた。

 女子トイレが開いたので、静子は華子を連れ、女子トイレで用を済ませた。

 店長が走ってきて、静子と桜井の話を聞き、多目的トイレを確認、110番通報をした。

 30分後、機捜と鑑識が到着した。店長は館内放送をし、トイレ全体を封鎖、トイレ利用者は、隣のファミレスを借りるように指示した。

「上原さんと、桜井さん、ですね。」2人から事情聞いた赤井警部補は、店長にも確認した。「防犯カメラは?」

「入口の、宝くじ売り場と、北側の出入り口付近、搬入口と裏口、店内に5箇所です。ですが・・・。」

「ここは、死角ですか。いずれにしても、必要になるので、防犯カメラ映像のデータの提出をお願いします。権さん、そっちは?」

「間違い無く男。女装ではなく、着せられている、殺害現場は、ここだ。青酸化合物だな。」


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『多目的トイレ死体遺棄事件』本部。

 酒井優香が同席している。

 管理官は説明した。

「現場は、スーパーの多目的トイレ。非番の店員上原静子が発見者だ。ホシは、複数犯と見ていいですか、井関さん。」

「ああ。現場は広い。24時間スーパーなので、侵入の隙はあっただろう。青酸化合物による死亡だが、アルコール反応もある。仮装させているから、複数犯だ。夜間用の出入り口は1つだが、下見に来たかも知れないから、出来るだけ多くのデータを出すように言ってある。」

「ガイシャは、違憲異種党の瀬名富雄氏。SNSで、架空の女性党員が妊婦で政治活動している、と党は宣伝に使っていたのが、AI画像だとバレて大騒ぎになった、ということかな、秋野くん。」

「はい。それで、サイバー犯罪対策課課員の酒井さんに来て頂きました。」

「謝罪会見開いていましたのを観ました。瀬名氏が専門会社に発注したAI画像です。AIも使えるぞ、と宣伝したかった、と言っていましたが、政党交付金で、悪戯に使うとは、とSNSで炎上しています。」

「本物と思い込む程、巧妙なものなのかね?」

「画像だけならね。音声は、不自然さが残るからバレるんです、やり過ぎですね。写真くらいにしておけば良かったのに。」と、酒井が言った。

「不自然さ?」

「文章で言えば、誤変換、誤字が残り、校正能力がないから、そのまま読んでしまうんです。声優さん、使えば、そんなヘマしませんけどね。声優さん、と言えば、人間の感情の起伏なんか、今の段階のAIは『幼児期』ですから、上手く表現できません。元々、SNSを使うようになっても、アナログで利用するからボロばかり出す党ですが。」

「すると、ふざけたことをやっている党に天罰を下してやる、と思った人物または団体がホシ、だと?」

「だと、思わせたいのでしょうね。」と、酒井は笑った。

「最近は、このパターンが多いな。支持率抜群の与党に『濡れ衣』着せるパターンが。」と、蘭子が言うと、「濡れ衣も妊婦服も着せたか。」と、大曲先輩が、つい言ってしまった。

「今のは、笑うとこかな?ははは。」と、蘭子に睨まれた。

「許せないわ。」と、言ったのが新人の新山だった。

 智子がいなくて良かった。

 村松が何か新山に渡そうとしたが、見付けられない。

 酒井が、新山の肩を叩き、タブレットガムを渡した。

「じゃ、辻さん達は、党を当たってください。餅屋係長のチームを応援に出します。大曲達は、遺体確認に来た向坂幹事長と瀬名さん宅に行ってくれ。今、溝内課長と面談中だ。」

「「「了解!!」」」


 午後2時半。クルマの中。

 今日は、村松に運転させている。

「村松は、聞き込み終わったら、瀬名家に来てくれ。」

「了解。」


 午後3時半。瀬名家。

 瀬名の娘綾子は、お辞儀をして、向坂幹事長を送り出した。

「父が、ご迷惑をおかけして・・・。」

「いやいや、世の中、過激な妄想で暴走する者もいるからね。」

 綾子は、仏壇に行き、おりんを鳴らして手を合わせた。

 俺達も習って、手を合わせ、黙祷した。

「じゃ、お取り込みの所、申し訳ないが・・・。」

「書斎は、こちらです。アルバムは写真部屋です、確か葉書ホルダーも。」

「「写真部屋?」」

「写真が趣味だったので。現像室もあります。」

 大曲先輩に書斎を任せ、写真部屋に行くと、確かにマニアックな部屋だった。

「登山もしていたの?」

 額にある写真を見て、俺は尋ねた。

「いえ。登山は、お友達の方でした。父は撮影の為、1度ついて行ったんです。その後の登山で亡くなられました。」

「ああ。それで。」

 アルバムを広げ、綾子は、特定してくれた。

「この方が、登山友達の道上さん。この方が、党が分裂するまで、ご一緒だった、仙道さん。住所、葉書に付箋貼っておきますね。」

「ああ、ありがとうございます。」


 書斎に戻ると、大曲先輩は、深刻な顔をしていた。

「お嬢さん、綾子さん。調べ尽くせないので、少しお借りしてよろしいですか?」

「ええ。どうぞ、お持ちください。」

 そこに、村松がやってきた。

「え?女性警察官?男性警察官?」と、村松を観て綾子は驚いた。

「男性警察官です。捜査の為に変装することもあるんですよ。」

 村松が、すんなり答えた。

「ああ。囮捜査とか。」

「よく出来ました。力、落さないで。我々が、犯人を見付けます。」

「よろしくお願いいたします。」


 午後4時半。捜査一課。第二応接室。

 館内から、酒井が電話してきた。

 大曲先輩がスピーカーをオンにした。

「大曲君の勘通り、ハッキングされていたようよ。まだ、これからだけど。」

「よろしく。」と、だけ蘭子は言った。


 午後5時半。

 館内から、神道課長が電話してきた。

「あのスーパーな。乗っ取りされようとしている。半グレ絡みだ。」


 翌日。午前10時。第二応接室。

「瀬名は、偽AIがばれたことで反省していた。一方、あのスーパー乗っ取りの為、AIを利用しようとしていた奴がいた。それで、ハッキングが始まった。」


 午後2時半。捜査一課横の大会議室。『多目的トイレ死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、倉田課長、酒井優香、溝内課長、深山課長、神道課長、皇係長、餅屋係長、関口係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 倉田課長、酒井優香、溝内課長、深山課長、神道課長、皇係長、餅屋係長、関口係長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、スーパー伝統の店長道上栄吉、実は、仙道幸太。そして、新鋭会KKの新田圭介。瀬名は生け贄だった。メールの最後の通信は、瀬名の友人仙道だった。だが、呼び出したのは道上だった。道上に呼び出された瀬名は、スーパーの夜間出入り口から入って、トイレに向かった。そこには、新田が待ち受けていた。パフォーマンスだと言い含められ、飲んだアルコールには、青酸化合物が含まれていた。2人は、仮装させ、新田は逃げ、道上は、隠れた。そして、発見され、店長らしく采配した。道上は、乗っ取りが成功した時に『手柄』が必要だった。辻さん達と皇係長、餅屋係長、関口係長が、合体政党が赤字になり、『持ち逃げ工作』を画策していることを掴んだが、本件とは、直接関わりが無かった。瀬名の葬儀は、党でも行うそうだ。警視監と記者会見に臨む。解散。」


 午後3時半。捜査一課。蘭子のデスク。

 智子が挨拶に来た。

「開光課長。お世話になりました。」

「『カイシャ』は、どうするんだ?」

「出産してから、考えます。新山は、どうですか?」

「使い物になるかどうかは、井関さんが決めることだ。寂しくなるな。」


 午後6時。眩目家。

「私の寂しさを埋めろ。」

「あの、ご飯は?」

「5回戦、終わってから。」


 とほほ。早く帰れたのに。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。

 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。




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