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251.悲しみは誰の為に

前回のあらすじ。

お彼岸の墓参りを済ませた親子が、墓の坂道を降りて来ると、倒れている男がいた。

白目を剝き、口から泡を吹いていた。背中には『殺してくれ』の文字があった。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 前回のあらすじ。

 お彼岸の墓参りを済ませた親子が、墓の坂道を降りて来ると、倒れている男がいた。

 白目を剝き、口から泡を吹いていた。背中には『殺してくれ』の文字があった。


 =================

 ====================

 午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。

 広報の深山課長からだった。

 ガイシャは、意外な人物だった。

 蘭子は、スピーカーをオンにした。

「プロダクションです。業界では『仕出し』と呼ばれ、今SNSでは『クライシスアクター』と呼ばれている俳優。昔の言葉で言えば、サクラ、です。よくテレビ局のインタビューで応えている人。インタビューは、本来、街角でアポイントなしで質疑応答するものですが、流行り病以来、誰も立ち止まってくれないから、予め用意した俳優に台本通りしゃべらせるんです。よく出来た回答しか放送しないんです。取捨選択せず、編集の楽な仕事です。ガイシャは、そのプロダクションの1つの新映栄プロの俳優、小和田あつしです。」


 ==========================

 午後1時。捜査一課。第一応接室。

 深山課長が出て行く。

 新映栄プロの社長、藤川一郎が来ていた。

 開光蘭子は、アポローンの天野社長に依頼して、立ち会って貰った。

「お楽しみで、動画撮影した訳じゃないですよね。テレビ局ですか?」

「メーターTVです。」

「偽募金で有名な、ですか。募金の番組、強引にやって、もう放映しましたよね。」

「年末募金です。小和田は、亡くなった十和田議員に似ているんです。体格も名前も丁度いいって。小和田は、亡くなった議員の役で、墓参りに来た人を、幽霊になって脅かす、という役でした。TV局のカメラマンが来られなくなって、SNSで募集した素人カメラマンが撮影することになっていたんです。そこから先は、同行した局員でないと・・・大変なことになってしまった。」

「呆れたね。TV局もアンタらも安直すぎる。セクシー映画だって、ちゃんと段取りつけて、撮影するし、観る方もドラマや一般映画同様、フィクションとして、『約束事』として観ている。ノンフィクション・ドキュメンタリーと称してドラマっぽく作っても、所詮アンタラの『倒錯』だ。盗んだ作品じゃなく、歪んだ作品だ。」

 天野は憤然といて言った。藤川は、泣き崩れた。


 ========================


 午後2時。捜査一課。蘭子のデスク。

 電話が鳴った。

 管理官だった。

 蘭子は、スピーカーをオンにした。

「築地署の交番に、ホシと思われる男が出頭した。今、護送中だ。私も帰庁する。」

 続いて、倉田課長から電話が入った。

「SNSの募集の応答を見付けました。自称NewTuberの松本幹太。広域手配しましょう。」


 午後4時半。捜査一課横の大会議室。『墓場入り口死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、深山課長、倉田課長、溝内課長、井関課長、神道課長、新垣課長、酒井優香、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。

 深山課長、倉田課長、溝内課長、井関課長、神道課長、新垣課長、酒井優香は、すぐに出て行った。

 管理官が説明に立った。

「ホシは、NewTuberの松本幹太、メーターTVの井澤幹也。井澤は松本を雇い、ガイシャが一旦死んで、生き返る映像を撮ろうとしていた。だが、台本のことで井澤と松本が揉めだした。ガイシャは止めようとして、松本が持っていたナイフが刺さってしまった。井澤は、小道具の、切れないナイフを用意していた積りが本物だった。驚いた2人は、死体を放置したまま、逃げた。松本は、暢気にパチンコをしていた所を取り押さえられた。先に出頭していた井澤の供述と松本の供述に相違は見られなかった。2人は、三田村工務店の車を盗んでいた。来る途中で井澤の車がパンクしたからだ。美濃田家には、村松・・・。」

「管理官。私の仕事です。」と、新山が言った。

「じゃ、新山が連絡しろ。美濃田平吉さんは、無断外泊しただけだった。」

 管理官の言葉に継いで、蘭子は、「大曲が、『台本』、書いてやれ。」と言った。

 大曲先輩は、何故か狼狽えた。


 午後7時。眩目家。

「先輩、なんで狼狽えていたんだろう。」

「気があるからさ。元カノが言うんだから、間違いない。」

 蘭子のスマホに電話があった。

「ええ。無事解決しました。大分反省したようですよ。」

 そう言いながら、パンティー1枚になった、蘭子。

 嫌な予感がした。


 電話を終えると、俺に・・・。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 大仏(おさらぎ)俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。

 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。

 井関花江・・・警邏課課長。警視。井関一郎警視監の妻。


 天野社長・・・セクシー映画会社アポローンの社長。

 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。


 ※題材になった事件は、特にありません。強いて言えば、「募金」TVですが・・・。

 クライングフリーマン


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