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250.もう死んでますけど

背中には『殺してくれ』の文字があった。

「ママ、熱中症だよね。」

「違う。」

母親は深呼吸して、110番通報した。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 午前8時。ある墓地。

 お彼岸の墓参りを済ませた親子が、墓の坂道を降りて来ると、倒れている男がいた。

 黄色いシャツの男だったが、母親が覗き込むと、白目を剝き、口から泡を吹いていた。

 背中には『殺してくれ』の文字があった。

「ママ、熱中症だよね。」

「違う。」

 母親は深呼吸して、110番通報した。

 随分長くまった気がしたが、時計を見ると30分だった。

 機捜と鑑識が到着した。

「岸谷さん、ですね。誰か他の参拝者、見ましたか?」

「いえ。坂の上は袋小路なんです。いたら、今頃皆降りてきた筈ですが・・・。」


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『墓場入り口死体遺棄事件』本部。

 管理官は説明した。

「ガイシャは、ホシと一緒に、発見者の岸谷さんの時間帯より前に来たことになる。血痕を辿って、お参りした墓の名前から連絡したら、飯室信夫という人物が行方不明だと言う。今、ご家族が溝内課長と面会中だ。」

 そこへ、ノックが聞こえた。

 村松が開けると、溝内課長が立っていた。

「人違いでした。ガイシャが墓参りしたと思われた美濃田家のお身内ではありませんでいた。失踪届が出た直後ではありましたが、失踪した美濃田平吉さんの奥様春菜さんによると、別人です。」

「じゃ、広報で広域捜査しましょう、溝内さん。」

「分かりました、依頼します。」

 皆は一斉に新山ひかるを見た。新山は、智子の後釜候補の巡査だ。

 井関さんは、新山の頭を下げさせながら、自分も頭を下げて皆に一人一人謝罪した。

 血痕が墓から続いていたので、美濃田家の人間だ、と言ったのである。

 そして、幸か不幸か、美濃田家の主人は失踪届が出ていた。

「まあ、殺害現場だけは、特定出来た訳だ。」

「入口には、ゴミ収集のカゴがありましたが、空でした。昨日が収集日です。凶器はホシが持ち去ったのかも知れませんね。」と、秋野が珍しく饒舌に言った。

 新山を庇った積りなのだろう。

「ガイシャの特定が最優先だな。」

「じゃ、辻さん達は、墓地入口付近の国道沿いに不審車両の聞き込みを。大曲、お前達もだ。」

「「「了解。」」」

 智子は、秋野の足を踏みつけて、出て行った。


 午後2時半。クルマの中。

「あれ?村松は?」

「慰め役。蘭子は抜け目ない。」

「成程。新山は、どこの部署から異動でしたっけ?」

「交通課。ま、あれで辞めるようならそれはそれで仕方無い。大仏さんも頭抱えていたそうだから。」

「へえ。」

「じゃ、このコンビニから・・・待てよ。」

 コンビニの隣は、花屋だった。

 花屋の朝は早い。

 花市場から帰ってきて、店を開くから。花市場が休みでも、営業時間は、一緒だ。

 大曲の質問に、店員は、笑顔で答えた。

「ああ、見ましたよ。この中年太りの人とカメラ持った人と、もう一人いたかな?お花が高いって文句言ったから、よく覚えています。名前は、呼び会わなかったから分からないけど、ナンバーなら覚えてます。」

 俺は、タブレットを出して、すぐに書いて貰った。

「今時の刑事さんはタブレットをメモ帳にするんですか?」

「ああ、書き間違いとか読み違いとかあるでしょ。特に、萩野さんと荻野さんって似てるじゃないですか。」

「成程。テレビドラマは遅れてるのねえ。」

 俺が話している間に、先輩は報告していた。

「今の話だと、何か撮影があって、ここでお花買ったんですかね?」

「そんな感じでしたねえ。」

 俺達は、ついでに、コンビニに寄った。

「昨日の7時頃ですか?俺達に聞くより・・・。」

 店員は、防犯カメラをさした。

 俺達は、蘭子から連絡して貰い、SDを提供して貰った。


 午後4時半。捜査一課。第二応接室。

 蘭子がまず話した。

「カメラの話が出たから、アポローンの天野社長に相談してみた。もし、テレビ局なら、もう一人や二人はいるだろう。考えれられるのは、我々セクシー映画のスタッフ・キャストが1シーンを撮ろうとしていたか、NewTubeとかの素人の撮影だろう。」と、おっしゃっていた。私は、多分、後者だろうと思う。それなら、あの奇妙なTシャツの説明もつく。『ころしてくれ』シャツを着た人間が殺される、とかのドラマだ。ところが、アクシデントが起り、ガイシャが殺された。」

「上手いな。今度、撮影する?」と神道課長が言った。

「何か言った?」と、蘭子が睨むと、「気のせいですぅ。」と、神道課長は俯いた。

「あの車両、見つかったよ。三田村工務店の、営業用のクルマだ。カタギだ。蘭子。ひょっとして、闇バイトではないか?」と、新垣課長が言った。

「じゃ、受け子が、何かしくじったか?よし。後は明日にしよう。」


 ===========================

 翌日。午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。

 広報の深山課長からだった。

 ガイシャは、意外な人物だった。

 ―「捜査一課ですけど、251」につづくー


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 大仏(おさらぎ)俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。

 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。


 新山ひかる・・・警視庁鑑識課課員。巡査。




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