249.偽アンケート
幸い、店長に繋がった。
「分かった。110番しろ。お前は日本語が出来るから、すぐに警察が来てくれる。今の要領で説明するんだ。店には、クローズの札を下げ、誰も入れるな。俺もすぐ支度する。」
ウォイは、110番通報した。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前8時。ある国道沿いのコンビニ。
店員のウォイが店の前を掃除していると、男が『助けてくれ』と跳び込んできた。
ウォイは、外国人店員だが、緊急時のマニュアルは、頭に叩き込んでいる。
先ず、店長に電話する。
繋がらない場合は、本部に連絡する。
本部に人がいない場合は、緊急担当者に電話が転送される。
幸い、店長に繋がった。
「分かった。110番しろ。お前は日本語が出来るから、すぐに警察が来てくれる。今の要領で説明するんだ。店には、クローズの札を下げ、誰も入れるな。俺もすぐ支度する。」
ウォイは、110番通報した。
「背中に刃物刺さった人が、店に来て倒れています。すぐ来て下さい。」
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「アンタが通報してくれた店員さんね。お名前は?」
「おなま・・あ、名前はウォイです。フィリピン人です。あ、店長。」
「店長の笹井です。こんなことは初めてだ。」
「『助けてくれ』って言いました。その後、倒れて・・。」
「この人が・・・来る前に誰か見た?」
「いいえ。外の掃除してて、中に入った時、この人、来ました。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『コンビニ死体遺棄事件』本部。
井関警視監が同席している。
管理官は説明した。
「ガイシャは、エムテレビのアナウンサー、沖慎二。前日、政府が閣僚や与党議員にアンケートを採ったことを知り、取材もせずに番組内でアンケートの内容を偏向報道した為、政府から反論、苦情を言われ、朝の番組で謝罪をして済まそうとした。すると、『説明責任』を日頃言っているマスコミが、『ゴメンね』で済ますのか?とSNSで大炎上。SNSはデマばかりと言いながら、自分達は嘘をつくのか?と言う声が大きかった。そうだね、秋野くん。」
自棄に詳しいな、管理官、と思っていたら、SNSの情報通の秋野の話か。
酷いよなあ。
「確かに酷い。でも、殺すこたあないだろ。」大曲先輩が言い、蘭子が睨んだ。
つい、声に出してしまったか。
「書面でアンケートに答えず、口頭で答えた防衛大臣、参議院議員アンケート自体行っていないのに、『架空のアンケート』回答を報道された経済大臣はカンカンだ。ワイドショーでコエンテーターが好き勝手に言うことも問題だが、ニュースで『ドラマチック』な文章読んだら、もうニュース番組じゃない。最近、アナウンサーも『個人の感想』の度を超して、公共性がない。ネットで停波か電波オークションしろとの声が高まった矢先だ。単純に勘ぐれば、反オールドメディアの暴走ということにあんるが、開光君は?」
「勿論、違います。追い込む方法は幾らでもあると思います。『ヤラセ』や不祥事が明るみに出ても。偽募金番組を決行した局に対する憎しみが多い事も事実ですが、『懲らしめる』のに下っ端狙うのは、普通はやらない。ウラがある筈です、警視監。」
井関一郎警視監の問いに、毅然として蘭子は応えた。
「じゃ、辻さん達は、テレビ局に。村松も行け。沖家は大曲達が行け。場合に寄っては、応援を付ける。」
「「「了解。」」」
午後2時半。クルマの中。
運転しながら、俺は先輩に尋ねた。
「警視監、期待してくれているんすね。」
「それもあるが、やられたのがマスコミ人間なら、マスコミが黙ってない。記者会見を何度も要求する筈だ。上手く交す為にも、蘭子の覚悟を確認したかったのさ。確かに、あのアナウンサーをやったのは、話が出来すぎている。何度か関わったが、テレビ局で信頼出来るのは、裏方の一部だけだ。村松は、裏方担当だ。」
「成程。先輩は読みが深いなあ。」
「おだてるなよ。」
午後3時半。沖家。
首を吊ろうとしている。
何度も見たが、嫌なシーンだ。それだけ遺族にはショックが大きいのだ。
2人では足りないと思い、張り番の警察官にも手伝って貰った。
稽古夫人は、多少・・・だから。
大曲先輩は、『ひとたらし』技で落ち着いたところで、夫人にお願いした。
「ご主人は、人違いで殺されたに違いありません。ご無念を晴らす為にも、是非ご協力をお願いいたします。」
「書斎は、こちらです。」先輩は、書斎に入った。
「アルバムと言っても、これしかありませんし、年賀状もこれだけしか。仕事関係は年中顔を合わすので・・・。」
「そうですよね。」
アルバムを繰っていて、夫人の手が止まった。
「この人・・・確か不適切があったとかで、クビになった人だわ。主人と同期だけど・・・。」
年賀状は、来ていなかった。
「名前、分かりますか、フルネームでなくていいですが。」
「確か、田ノ上、って、おっしゃったわ。田んぼの上で、のはカタカナ。」
俺は、すぐ辻さんに電話した。
「分かった。尋ねてみる。知っている人がいなくても事務記録はあるだろう。ありがとう。」
先輩のところに行き、今の件を話した。
「ビンゴ!!」
え?
「沖さんは、少なくとも3日前、連絡メールで会っている。被疑者だ。」
午後5時。第二応接室。
「田ノ上氏は、数年前、番組出演者の暴言の責任を取らされ、解雇されている。沖氏はサブアナウンサーだった。」
「よし。その後を追う。見付けたら、重要参考人だ。」と、蘭子は言った。
翌日。午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。
館内電話が鳴り、村松がスピーカーをオンにして、蘭子に受話器を渡した。
溝内課長の声だ。
「ホシが出頭してきました。」
午後3時。捜査一課横の大会議室。『コンビニ死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から。溝内課長、新垣課長、蘭子、大曲先輩、管理官、警視監が出て来た。
溝内課長、新垣課長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、田ノ上登。しかし、実行犯。筋書きは、明光公正会。今、四課がガサイレに向かった。田ノ上は、アンケートの話から、偽のアンケートを草案した明光公正会から預かった通りに行動した。偽アンケートは、局スタッフではなく、田ノ上経由で局に持ち込まれた企画だった。局プロデューサーは『ドッキリ』で済むと思い込んでいたらしい。沖は当然、田ノ上を責めた。逆上した田ノ上は、沖を殺害して逃亡。2人が会った公園は、コンビニから近かった。土地勘のある沖は、最後の力でコンビニに辿り着いた。結果的に、田ノ上も沖同様、局に潰された。」管理官は、憮然として言った。
「国会に参考人招致されている。今回の件で、テレビ局の『特権階級意識』の傲慢さを証言する積りだ。」
警視監は、憤然として言った。
午後7時。眩目家。
村松が作ったクレープを食べながら、蘭子は言った。
「テレビ、もう要らない。」
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
「MHKですが・・・。」
「ムショに入りたいのか?」蘭子が言うと、どこかに行った。
「ミカジメ料、払う理由がない。」
「だよね。」
何か下半身がすうすうするが・・・。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。
井関一郎・・・警視庁警務部監察官。
※「憮然」は、よく誤用されます。
本来の意味は、『憮然」とは、失望や落胆をして、どうすることもできずに、ぼんやりとしている様子や、意外なことに驚きあきれている様子』です。
「憤然」は、「腹を立てている(ムッとしている・不機嫌な)様子」です。
恐らく、オールドメディアが始めた誤用の1つ。
今回、両方、使いました。
クライングフリーマン




