248.栄光は誰の手に
白いシャツ、黒いズボンの男が倒れていた。
巡回していた警備員山中仁志が、彼を見付けた。
30分後。機捜と鑑識がやってきた。
白いシャツは、真っ赤に染まっていた。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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9月20日。日曜日。午前8時。国会衆議院議員会館前。
白いシャツ、黒いズボンの男が倒れていた。
巡回していた警備員山中仁志が、彼を見付けた。
30分後。機捜と鑑識がやってきた。
白いシャツは、真っ赤に染まっていた。
恐らく、ズボンの中も。
赤井達機捜と井関達鑑識は、揃って両手を合わせ拝んだ。
両手を合わせるのは、『ホトケ』になった遺体への儀礼だが、今回は、それだけではなかった。
遺体が、現職衆議院議員だったからだ。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『議員会館前死体遺棄事件』本部。
井関警視監、酒井優香が同席している。
管理官は説明した。
「ガイシャは、平野光輝。衆議院議員で、前ディジタル庁長官だ。魚市場の息子として生まれ、立身出世した人物だ。だが、残念ながら、前総理の時は活躍出来なかった。下馬評では、『役に立つシステム』を全て封印されたからだそうだ。酒井くん、それは噂じゃなかったんだね。」
「ええ、媚び隣国派の前総理は、罪務省の言いなりでしたから、『本国』の指令で『役に立つシステム』は、『本国』に不利益をもたらす、ということでね。IT技術者として優秀な人でした。いつかチャンスが巡る事を夢見ていたのに、残念ながら、現内閣には呼ばれなかった。それでも、邪魔になったのでしょう。ディジタル庁は、何回もサイバーアタックを受けています。まだ、平野さんが現役だと思っていたのでしょう。今のディジタル庁長官は、木縄県出身の平良さんです。漢字が読めないですからね、隣国の人は。」
「酒井。封印された、ということは、『役に立つシステム』をハッキング、盗用しようとしていたのかな?」と、蘭子は酒井に尋ねた。
「そりゃそうです。軍事シミュレーションシステムですから。AIに学習させたんです。」
「わざと外したんだよ、現総理は。狙われにくいように。平良さんも立派な経歴をお持ちだが、同じようなシステムは作れないだろう。」と、警視監が話した。
「スパイが隣国に報告したか、勘づいたんだろうな。」と、大曲先輩が言った。
「だろうな。体中から、SDが出て来た。縫合から推測して、多分生きている内に手術している、と解剖医の先生が言っていた。」と、井関が報告した。
「何て酷い。」と、村松は涙した。
「昨夜は、議員会館に泊まっていたが、警備員に挨拶してコンビニに行ったまま、戻っていない。コンビニで、平野さんを見かけた者はいない。死亡推定時刻とも一致する。そうですね、井関さん。」
「昔の刑事ドラマじゃないが、ホシを挙げることが、何よりの供養だな。」
「辻さん達は、移民党で聞き込みを。紅林係長のチームを応援に出す。平野さん宅には大曲達と村松、そして、もしPCに異常があれば、酒井に連絡してくれ。」と、蘭子は采配した。
政治家絡みなので、警視監が記者会見に臨むのだろう。
午後2時半。クルマの中。
「遺体確認は?先輩。」
「惨殺されているからな。移民党の職員が確認している。惨殺されている場合、遺族は、『綺麗な遺体』を望むしなあ。奥さんが自宅で待っている。議員は、自宅と議員会館、交互に寝泊まりしていたらしい。」
午後3時半。平野家。
大曲先輩は、遺族である、平野温子さんに、丁寧に挨拶した。
気丈に振る舞っていたが、内心はかなり動揺していたのだろう。
よろけながらも、先輩を書斎に案内し、俺は、クローゼットの部屋に向かい、アルバムと葉書ホルダーを預かった。前総理と一緒の写真は、内閣集合写真だけだった。
「当時の麻生島最高顧問が、今は時期尚早なだけだ、とおっしゃったそうです。そして、議員は辞めないで欲しい、とも。」
温子夫人は、ハンカチで目頭を押えた。
「こちらの写真で、仲良く写っているのは、宇都宮さんですね。」
「ええ、あまり表だってはいませんが、大学の先輩なんです。」
「成程。」
俺は、勘が働いた。裏切るとすれば、この人物だ。
そして、その部屋の隣にも小部屋があった。
「趣味の部屋です。昔はよくゲームしていたそうです。」と、温子夫人は言った。
書斎に戻ると、先輩は酒井に電話していた。
電話を終えると、「奥さん、申し訳ないのですが・・・。」と大曲先輩は言いかけた。
「承知しました。お持ちになって下さい。その代わり、犯人を・・・。」と言い、温子さんは歯を食いしばった。
「約束します。」
午後4時半。クルマの中。
「評判、いいですね。やっぱり苦労人だったんだわ。」と、村松は言った。
「もう1つ。愛妻家、だった。」と、大曲先輩は言った。
午後5時半。第二応接室。
「今、サイバー犯罪対策課で調べて貰っている。恐らく、議員会館でも見付けられなかったんだろう。」と、蘭子が言うと、「人柄や閑職については、知られていた通りでした。」と、辻さんは報告した。
翌日。午前10時。捜査一課。蘭子のデスク。
酒井がやってきた。
「確かに、ハッキングされていた。それで、気になるメールを見付けた。議員会館のPCメールから、自宅PCへのメールだ。『次のダンジョンが目の前に来てしまった。アイテム屋で武器を調達しなくては』」
俺は、叫んだ。
「自宅だ!!!!!!!」
午前11時。平野家。
俺と大曲先輩、酒井、秋野でゲーム機を他の部屋に移し、確認した。
「あ。」と、酒井が見付けた。
ゲーム機のメモリにSDが貼り付いていた。
セキュリティー済の平野氏のPCに、酒井はSDを挿入した。
すると、謎のURLにアクセスした。
件の『システム』だった。『時間表示』が出ている。
酒井は、持ち込んだPCに繋いで、そのURLからシステムをダウンロードした。
ダウンロードの1分後。
画面は”game over”の画面を表示し、URLも削除されていた。
「危なかったな、酒井。」と、大曲先輩は酒井を労った。
正午。大曲先輩は、蘭子に報告した。
「よくやった、元カレ。帰庁してメシ食ったら反撃しよう。ここからは、我々のターンだ。」
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『議員会館前死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、倉田課長、紅林係長、溝内課長、酒井優香、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、倉田課長、紅林係長、溝内課長、酒井優香は、すぐに出て行った。
「ホシは、移民党議員の宇都宮正樹、新民主連合会の尾久山仁、半グレの同士寄り合い会KKの堂島満、無職医師の手羽先徹。隣国と通じていた宇都宮は、平野氏のシステム入手を命じられた。平野氏と接触したが、勘づかれてしまった。『君はBFFじゃなかった』と言われたそうだ。因みに、発見されたSDには、BFFのラベルが貼ってあって、リンクしたURLのアクセス・パウワードはBFFだったそうだ。色んな保険をかけていたようだ。警視監から総理に確認したら、警視庁サイバー犯罪対策課に厳重保管を依頼されたそうだ。やつらが自宅に侵入した形跡はなかったが、侵入しても見付けられなかっただろうな。記者会見に望む。宇都宮の逆恨み犯行の事件のな。」
午後7時。眩目家。
「お前の体にもSD、ないかな?ちょっと調べてみるか。妊娠しない理由が分かるかも知れない。」
無茶苦茶だ。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
溝内健児・・・生活安全課課長。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警務部監察官。
※ゲーム機のメモリにSDを隠せるかどうかは実証しておりません。
飽くまで、想像、フィクションです。
クライングフリーマン




