247.口は禍の元
イベントの為、一番ノリでやってきた、北島冴子と息子の睦夫は、熱中症かと思い、近寄った。男は、変なメガネをかけ、口からどす黒い液を出していた。
異変に気づいた冴子は、110番通報をした。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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9月13日。日曜日。午前8時。千代田区。化学技術館前。
白いシャツ、黒いズボンの男が倒れていた。
イベントの為、一番ノリでやってきた、北島冴子と息子の睦夫は、熱中症かと思い、近寄った。男は、変なメガネをかけ、口からどす黒い液を出していた。
異変に気づいた冴子は、110番通報をした。
化学技術館はまだ開館していなかったからだ。
30分ほどで、機捜と鑑識が到着した。
「通報者の北島さん・・・と息子さんですね。早いですね。」
「今日、声優さんのイベントがあるんですよ。明日明後日はやらないし。」
「君は誰かのファンなの?」
「咲良冴子さん。お母さんと同じ名前なんだ。」
「開館は、ギリギリ、かな。」
井関が指さす方角に立て看板があった。午前9時半。開館・開場だ。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『モール駐車場死体遺棄事件』本部。
溝内課長が同席している。
管理官は説明した。
「ガイシャは、葛飾区、足立区、大田区、三鷹市で出没した、わいせつ罪で広域手配されていた。『声かけわいせつ』で、すぐに逃げていたんだ。課長、実刑食らったことがあるんですね。荻野久三は。」
「はい。『不同意性交等罪』で3年食らっています。会社が倒産して直後で、執行猶予も検討はされましたが、実刑です。性犯罪の再犯率は言うまでもなく高いです。アメリカのようにアンクレットにGPSというのは、まだ実現できていません。」
「成程。スパイにも人権があるとか乱暴なこと言う人もいますからね。では、その時の被害者は?」
「自殺しています。両親も、後追いで心中です。もし報復だとすれば、親族ですかね?」
「問題は、股間の部分がくり抜かれていたことと、タスキを掛けていたことだ。発見者の北島さん親子は、選挙のタスキをかけていた事から、熱中症で倒れたかと思ったそうだ。タスキの名前は、ガイシャのものでも、近く立候補すると言われている、統一選挙の補欠選挙の候補のものでもない。一目を引くから。ホシはわざとかけたのかも知れない。井関さん、死因は?」
「刺殺だな。頭に破片はあったが、凶器がみつから無いと照合出来ない。」
「どうする?開光くん。第一応接室に、別れた女房が遺体確認に来ているが。」
「身元、割れていたんですか?」と、蘭子は管理官に確認した。
「スマホが、被っていた『ヅラ』の中にあった。ホシに襲われる前に隠したんだろう。女房の着信履歴があったんだ。」と、井関が説明した。
「じゃ、大曲達と村松は、ガイシャの家に。辻さん達と、皇係長、餅屋係長、関口係長のチームで、『声かけわいせつ』の確認をする。被疑者は、案外、この『目撃者』近辺にいるかも知れない。」
午後3時。荻野家。
「私も、馬鹿な男と一緒になったものよ。文字通り、『髪結いの亭主』で遊んでばかり。周りが五月蠅いから、別居していた。もう、ぶら下がりモノは、病気で役に立たなくてね。それでも、オトコは捨てられなかったのね。何だっけ?パソコン?タブレット?そんな大それたもの、持ってないわ。アルバムは、あるわよ。学生時代のが。年賀状はない。筆無精だし、送ってくる相手もいないし。」
そう言って、耐子夫人は、アルバムを広げてくれた。
「あ。そう言えば、街中で偶然会ったって言ってたわ。井上さん。移民党の井上久右ヱ門さん。仲が良かった訳じゃないけど、『仕事』世話するって言ってくれたらしいの。荻野は、大型、持ってるのよ。それでね、選挙の時、マイクロ運転してくれって。あ、この人ね。」
「有頂天だったでしょうね。」
「そりゃあ、刑事さん。『天にも上る』って表現があるでしょ。あんな感じ。」
「アルバム、お借りしていいですか?」
「どうぞ。どうせ、灰になるんだから。葬式しないし。日頃の行いが良すぎてね。親戚付き合いもしていないし。久三って名前だけど、一人っ子。焼いて区役所に届けて終わり。この家も借家だし。」
午後4時。クルマの中。
「すけべそうだから、しゃべったことない。それだけでした。」
村松が俺に報告している間に、大曲先輩は、蘭子に連絡し、写メを送っていた。
「各チームに、井上議員の写真を送るそうだ。で?」
「スケベそうだから評判悪いそうです。」
「だろうな。俺が井上議員だったらさ・・・。」
「「はい?」」
「消すな。間違いなく。」
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『モール駐車場死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、新垣課長、溝内課長、皇係長、餅屋係長、関口係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
新垣課長、溝内課長、皇係長、餅屋係長、関口係長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、移民党の井上久右ヱ門議員、攻勢推進会の幸田正樹。街中で再会した井上には、荻野は、疫病神でしかなかった。荻野の後をつけて行った井上は、『声かけわいせつ』の被害者全員に目撃されていた。尾行は慣れていないだろうから当然だな。そして、浮き足だった荻野を責めて、殺してしまった。井上は、知り合いの幸田に相談、幸田が始末した。千代田区は、補選の予定はあるが、移民党は関与していない。選挙絡みで殺された、と思わせたかったんだろう。荻野は、井上の電話番号を知らなかったのではなく、充電切れだったんだ。井上宅で、直接会った荻野は、責められ、秘密を知っていると、ハッタリをかました。幸田は素直に自供したよ。運搬しただけだからな。女房は、火葬場で焼くだけ、と言っている。哀れと言えば哀れだがな。」
管理官が出て行った。
入れ替わりに、神道課長が入って来た。
「大曲、眩目、いい仕事するじゃないか。あのアルバムの写真、別件の証拠写真になる。タイムスタンプ入っているし。」神道課長は、スキップして出て行った。
「先輩、浮き足だって、って、ああいうのでいたっけ?」
「ああいうの、だな。」
村松が、クスクスと笑った。
午後7時半。眩目家。
「政治絡みではあったけど、熱中症絡みじゃなかったね。」
「いや、今、熱中症だ。冷やしてくれ、真吉。」
俺は、諺を思い出した。
『口は禍の元』。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
越前屋幸太・・・捜査三課課長。
溝内健児・・・生活安全課課長。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
※題材になった「声かけ」は、まだ逃亡中だったと思います。
所謂「変態おじさん」です。




