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245.逃げられない

あ、ママ。熱中症。」

親子連れの親子の、子供が勘違いしたも無理はない。

駐車場の、ある駐車スペースに、リュックを担いだ人が、うつ伏せに倒れていたからだ。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 午前10時。国道沿いのモール。駐車場。

「あ、ママ。熱中症。」

 親子連れの親子の、子供が勘違いしたも無理はない。

 駐車場の、ある駐車スペースに、リュックを担いだ人が、うつ伏せに倒れていたからだ。

 母親は、声をかけようとして止めた。

 その人の体の下に血だまりがあったからだ。そして、横を向いた顔には・・・。

 母親は、警備員を呼びに行くよりも、入庫しようとしている自動車のドライバーに声をかけた。

「お願いいたします。助けて下さい。」

「どうしました?」

「人が・・・倒れて・・・血が・・・。」

 その人は、すぐに、その駐車スペースに行き、異変を確認し、110番通報をした。

 30分ほどで、機捜と鑑識が到着した。

「え、と通報者の方は・・・。」

 人混みの中から、一人の女性が出て来た。

「私です。井関花江と申します。」女性は、警察手帳と官制名刺を出した。

 そして、「あちらが発見者の北村圭子さんと娘さんです。」と赤井警部補に言った。

「こんなとこで、会うなんてなあ。」と、井関が赤井に向かって、まるで外国人のように両手をヒョイと挙げた。

「お義姉さま。」と、智子が言った。

「え、智ちゃん、ひょっとしたら、井関警視監の奥方って、この方?」と、赤井は呆れた。


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『モール駐車場死体遺棄事件』本部。

 井関花江が同席している。

 管理官は説明した。

「発見者は、モールに買物に来ていた北村圭子さんと娘さん、そして、通報者は、井関警視監の奥方でいらっしゃる、井関花江警視だ。ガイシャは身元不明。顔は崩れていないが、所持品はリュックだけ。中身は、消火器だった。井関さん、使用可能ですか。」

「可能だね。どこの火事を消したかったのか知らないが、死んだらおしまいだ。」

「取り敢えず、広報課で、失踪者探し及び目撃者捜しだ。午後3時に、全国ニュースで呼びかける。」

「マエは無いの?あ・・・管理官、前科者データは?」

「ありません。運転免許証データにも、お名前カードデータにもありません。」


「取り敢えず、ガイシャの身元の確認が優先だ。解散。」


 皆、三々五々、引き揚げた。

「ふうん。」

 井関花江と蘭子の目が交錯した。火花が散ったように見えた。


 午後2時。第二応接室。

「感じわるーい。」村松が言った。

 俺もそう感じた。

「警邏課の課長だ。俺も仕事したことない。井関一郎警視監を尻に・・・ワイフファースト、だそうだ。」大曲先輩は、クッキーを摘まみながら言った。

「一波乱、起きそうだな、大曲。」と、神道課長が入ってきて、クッキーを摘まんだ。

「これ、どうしたの?」

「発見者の奥さんが、くれたらしいんです。智チャンに。これね。賞味期限、今日です。」

「「「「「ふうん。」」」」」

「智子から聞いた話だと、逆プロポーズしたらしい。私と同じだ。」

「「「「「ふうん。」」」」」


 午後3時。

 全国ニュースで、ガイシャの復元写真が報道された。


 午後5時半。蘭子と俺が帰宅しようとしたところに。深山課長から電話が入った。

 蘭子は、スピーカーをオンにした。

「ガイシャの名前は、湯田誠一。お湯に田んぼに、まことのいち。大陸醸造という、酢のメーカーの元社員。無職でふらふらしていたが、女房に『近く金が入る』と言っていたらしいです。愛知県なので、上京して遺体確認するそうです。それと、東京での住まいは、大学の同級生、加賀浩一の家に居候していたようです。所轄の警察官が確認に向かっています。」


 ============================

 翌日。午前10時。第一応接室。

 溝内課長と深山課長と開光課長が、遺体確認後の湯田美智子と面談した。

「主人に間違いありません。金が入るって言うから、てっきり加賀さんの紹介か何かで仕事が見つかったんだとばかり・・・。」

「お気持ち、お察しします。早速ですが、お願いしたものは・・・。」と、開光が切り出すと、美智子は、アルバムと葉書ホルダーを示した。

「この方が、加賀さん。結婚式にいらしてくださいました。この方は、お会いした事はないですが、元木敬三さん。今でもメル友だと言っていました。それと、以前使っていたケータイ。役に立つんでしょうか?」

「勿論です。倉田課長、いや、サイバー犯罪対策課課に復元して貰いましょう。」と、開光は溝内と深山に言い、ニッコリと美智子に笑った。

 =============================


 午後1時。第二応接室。

「元木敬三氏だが、何と拘置所に勾留されていた。越前屋課長。」

「三日前、元木は、空き巣に入ったところ、近所の犬に吠えられ犯行が発覚、今、取り調べ中です。元木のスマホを確認しましたが、ガイシャの湯田とのメールの交信は、その前日が最後でした。そのメールでも、『近く金が入る』と言っています。」

「誰かを強請っていて、返り討ちに遭ったか。」と、神道は腕を組んだ。

「その強請っていた相手が分かったわ。小栗純矢よ。」と、酒井が入って来て言った。


「小栗って言えば、十五年前の政権の時、消費者庁長官をしていたわ。」と、新垣課長が言い、「湯田のいた酢のメーカー、ボヤを出したことがあります。湯田が解雇された原因です。」と、餅屋係長が発言した。

「繋がったな。眩目、火事の時、一番必要なのは何だ?心構えでなく、物理的にだ。」と、神道課長が言った。

「そりゃ、しょう・・・あ。」

「出番だな。私にも働かせろ、開光。」と、井関警視が言った。

「どういうことです?」

 蘭子の問いに、「小栗のボヤ、だ。政治的なボヤはSNSに任せる。」と、警視は笑った。


 ―「捜査一課ですけど、246」につづくー


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課員。

 越前屋幸太・・・捜査三課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 井関花江・・・警邏課課長。警視。井関一郎警視監の妻。





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