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242.遺体搬送

10t車のダンプカーが突っ込んだ。

幸い、利用客は無く、奥にいた店員の軽い怪我で済んだ。

店員は、ドライバーが既に死んでいるのを不審に思ったが、110番通報した。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 午前6時。国道沿いのあるコンビニ。

 10t車のダンプカーが突っ込んだ。

 幸い、利用客は無く、奥にいた店員の軽い怪我で済んだ。

 店員は、ドライバーが既に死んでいるのを不審に思ったが、110番通報した。

 1時間後。機捜と鑑識が到着した。

 赤井警部補に井関は言った。

「ぶつかって死んだんじゃない。遺体を誰かが搬送したんだ。」


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『コンビニ死体遺棄事件』本部。

 管理官は説明した。

「ガイシャは、先日落選した、木縄県の前知事ゼニー北側氏。井関さん。既に亡くなっていたのですね?」

「死亡推定時刻は、コンビニに突っ込んだ12時間位前。死因は青酸化合物。死体が運転出来る訳がない。1キロ手前くらいで急発進している痕跡がある。コンビニは、道のカーブの地点にある。崖があったら、崖に落下だ。そこで、子細に調べると、その地点からコンビニまで緩やかなカーブになっている。その地点まで搬送してきたホシは、遺体を運転席に座らせ、サイドブレーキを引き、スターターを入れ、足とアクセルの間に、これを置いた。」

 秋野が、スライドをスクリーンに映した。

「冷却枕、ですか。」

「色んなタイプがあるが、どれでも同じだろう。アクセルを踏みっぱなし状態にすればいいんだから。」

「選挙は一昨日。ゼニー氏は、上京して、所属の巨額党で『残念会』を開いて貰い、宿泊先ホテルに帰った筈だった。今、巨額党の代表が遺体確認をしている。東京には、娘の家があり、そこに泊まることもある。ホテルで精算し、娘の家に向かう途中、ホシに狙われたようだ。尚、今回は、『ホシからのメッセージ』はない。自然と、新知事が与党の指示を得ていたから、巨額党を与党が狙ったように曲解出来る。現に、巨額党代表は、『選挙妨害』した上に、亡き者にした、と喚いている。今、警視監が記者会見を行っている。」

「陰謀ですかね。トラックにトリックがあるなら、酒井に調べさせるところだが、死体を転がすだけなら、案外簡単ですね。」と、蘭子は言い、「辻さん達は、生活安全課に来ている巨額党代表に依頼して、ゼニー氏の安全確保状態を探ってください。大曲達は、氏の娘の家に向かえ。村松も行け。」


 午後2時半。クルマの中。

「『憎まれっ子世にはばかる』ですかね、先輩。」と、運転しながら、俺は大曲先輩に尋ねた。」

「いい言葉、知ってるね、眩目くん。媚びチューンを自認して憚らない人だったからな。県を隣国に売ろうとしていたのは、誰もが知っている。雨国を嫌い、雨国の軍隊を追い出そうとしていたのも、皆知っている。でも、雨国の後に、隣国の軍隊を常駐、いや進駐させるとなると、住民の為ではなく、自分達のイデオロギーの『押し売り』だ。SNSが邪魔して負けたんじゃない。、その『押し売り』に気づいた人々が新知事を選んだ。それだけのことだよ。『本土復帰』を叫んで、日本の自治体になることを選んだ人々の気持ちを踏みにじっている。基地建設反対なら、仙石諸島に基地を建設すればいい。」

「出来るんですか?」

「関西国際空港は、大きな『浮島』だぜ。出来るさ。」

「ふうん。」


 午後3時。北側家。

 北側幸子氏は、クビを吊ろうとしていた。

 3人がかりで下ろし、説得を村松に任せ、俺達は、一旦外に出た。

 しまった。マスコミだ。

 引き返した。

 また、鑑識作戦で脱出するしかないな。


 冷えたペットボトルのミネラルウォーターを飲み干し、幸子さんはゼニー氏の書斎に案内してくれた。

 PCとタブレットがあった。

 村松がリードして、アルバムの中を繰りながら、幸子さんは、思い出話をした。

「この人が、父の親友で、選挙事務所を運営している南野さん。学生時代は、南北コンビと言われたそうです。」

「南野さんは、今?」

「向こうの事務所の片づけをしています。元々、今季落選したら、引退する予定でした。」

 その時、幸子さんのスマホが鳴動した。

 電話を終えると、幸子さんは言った。

「明日、上京するそうです。」

「え、っと南野さん以外に親しい人は?」

「学校の友人じゃやないけど、この仲間さんは、同じ故郷ということで親しいです。この丹波さんという人は、よく知らないけど、親しかったと思います。

 3人とも幸い、葉書ホルダーに年賀状があった。


 書斎の先輩に報告すると、「前からゼニーさんは狙われていたようだ。ハッキングの痕跡もあるから、サイバー犯罪対策課に調べて貰おう。」

 秋野達、鑑識班が到着し、俺達は、変装して、北側家を出た。


 午後5時。捜査一課。第二応接室。

 辻さんが発言した。

「何かおかしいです。確かに、死者を悼んでいるようではあるが。木縄県は離れているし、ゼニー氏は新聞社も抱き込んで独裁体制なので、木縄支部というより、連立している政党の様な関係だと言うンです。」

「事務所を守っている南野氏のところには、二課が別件で家宅捜索をする。上京のタイミングでな。埃や綻びは、幾つ出るかな?舞。ヤクザネットワークは?」

「今回は絡んでいそうな組はない。蘭子。直接、かもな。」

「直接?」「隣国のヒットマンだ。」新垣課長は、事もなげに言った。


 ===========================

 翌日。午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。

 酒井優香から館内電話が入った。酒井は電話の向こうで言った。

「大曲くんの持ち帰ったPCね。木縄県の事務所と共有している。そして、隣国にハッキングされていた。一方的な指令を受けていた。知事再選後、ヒットマンを連れて上京、総理を亡き者にせよ、という指令メール。何か特撮ドラマのボスみたいね。で、神道課長がガサイレした事務所のPCから、南野宛てに指令メールが来ていた。落選したら、仲間と丹波に消させるから、被害者を装え、と。」

 続いて、大仏課長から電話が入った。

「ダンプですが、Nシステムで見つかったので、所有者に連絡しました。所有者の松本は、友人の仲間に貸したけれど、まだ返っていないようだ、と暢気なことを言っています。松本は、今入院中なんです。仲間っていうのは、友達とういう意味の仲間じゃ無くて、苗字です。木縄県に多い。」


 午後3時。捜査一課横の大会議室。『コンビニ死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、新垣課長、大仏課長、倉田課長、酒井優香、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 新垣課長、大仏課長、倉田課長、酒井優香はすぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、北側の友人南野紋太、隣国のヒットマン丹波悦郎、仲介役の仲間雪也。ガイシャのゼニー北側は、大陸に渡って、隣国巨額党信者になった。知事再選後は、政府中枢の要人を丹波や仲間を使って始末していく算段だった。ところが、ゼニーは隣国との関係を隠そうともせず自慢をした。日本巨額党もだ。雨国基地建設反対運動に、修学旅行と称して政治活動に利用し、とうとう転覆事故まで起こした。木縄県住民は、心を痛めた。SNSの過激な拡散・政府の過剰な干渉と嘯いたことも逆効果になり、落選した。隣国は、落選した場合、ゼニーを始末し、関係を一掃する計画を立てていた。隣国人であるヒットマン丹波は、仲間と共に奔走して、惨殺した。政府に送り込む筈の南野も消される運命だったが、空港警察が捕えた。お前も消される筈だったと言ったら驚愕していた。尚、ハッキングしていた相手のURLは、とっくに無くなっていたようだ。村松。今回もご苦労だが、お嬢さんに話してくれるか。」

「了解しました。」

「では、警視監と記者会見に臨む。後は頼む。」


 午後6時。眩目家。

 ピザを焼いた村松は、さっさと帰って行った。


「幸子さんは、いつか私が殺していたかも知れない、と言っていたそうだ。ゼニーは、隣国にも『家族』がある。日本の為、木縄の為、は念仏に過ぎなかった。」


 ピザを食べ終わった、蘭子の目が光った。


 ああ、神様。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 溝内健児・・・生活安全課課長。

 大仏(おさらぎ)俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。


 名越基子・・・警視庁警務部監察官。

 井関一郎・・・警視庁警視監。


 ========== あくまでも、フィクションです ===========



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