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239.お風呂殺人事件

「ママ、あんな所に、お風呂が。」

子供の言葉に浴槽に母親が近寄り、慌てて元の路地に引き返した。

「見ちゃいけません。」と言った後、丁度、隣家の主婦花田光代が通りがかった。

「奥さん、ゴメン。110番して。」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 午前10時。ある市道。

「ママ、あんな所に、お風呂が。」

 子供の言葉に浴槽に母親が近寄り、慌てて元の路地に引き返した。

「見ちゃいけません。」と言った後、丁度、隣家の主婦花田光代が通りがかった。

「奥さん、ゴメン。110番して。」

「どうしたの?」

「そこに、死体が入った浴槽が・・・。」

 花田は、平静を装って、110番通報をした。

 夫は町会議員だ。落ち着かなくては、と自分に言い聞かせて。


 30分ほどで機捜と鑑識が到着した。

「えーっと、発見者の澤田さんと、通報者の花田さん、ですね。不審な車両を見かけませんでした?」

「私達が来た時は、1台も自動車は通ってません。向こうの方は今工事中で、『袋小路』状態なんです。」

「死体の2人に見覚えは?」

「あります。北別府吟子さんと、お嫁さんの春江さんです。」


 =================

 ====================

 午1時。捜査一課横の大会議室。『バスタブ死体遺棄事件』本部。

 管理官は説明した。

「今回のガイシャは、北別府吟子さんと、お嫁さんの春江さん。発見者及び通報者の澤田さんと花田さんによると、ご近所の嫁姑で、仲が良いので良く親子と間違えられるらしい。バタフライナイフで向かい合いで心中・・・のように見えなくはないが、他殺だ。井関さん。」

「計ったように、同じ位置にナイフが刺さっていて、凶器は刺さったままだった。ヤク入り件のドリンク剤の成分が検出された。2人は、朦朧とした状態で、相打ちさせられ、バスタブに入れられた。バスタブが大きいのと、ガイシャ2人が背が低いのとで可能になった。」

「どうして心中のように見せかけたのか、が問題ですね。」と、辻さんが言った。

「澤田さんの話によると、姑の吟子さんは出版社檜と杉社社員、嫁の春江さんは、先月までヨケレバヨーグルトの販売員をしていた。妊娠が分かって退職したそうだ。」

 管理官の言葉に、「詰まり、3人殺したのね。許せない。」と、智子が涙し、村松が、そっとハンカチを渡した。

「春江さんの夫伸吾は、大阪からの出張中だったが、お昼過ぎに新幹線で東京駅に到着。今、溝内課長と面談中だ。」

「よし、辻さんたちは吟子さんの会社に、春江さんの元勤め先には、餅屋係長のチームに言って貰う。大曲達と村松は、春江さんの夫伸吾さんと一緒に北別府家に向かえ。」

「「「了解。」」」


 ==================

 午後2時。捜査一環。蘭子のデスク。

 皆が出掛けた後。セクシー映画のアポローンの天野社長から、蘭子に電話が入った。

「何ですって?」

 ==========================


 午後3時。北別府家。

「お疲れのところ、申し訳ないですが・・・。」

「いえ。課長さんから伺っています。どんな難事件でも短期間で解決する特別チームだとか。母や妻に手をかけた犯人を捕まえて下さい。こちらが、母の書斎、こちらが妻の書斎。私は出張が多いので、妻に譲りました。」

「お仕事、何をされているんでしたっけ?」

「ああ。」と言って、俺達に名刺を配りながら言った。「画商です。年賀状の方ではなく。リトグラフですね。」と言った。

 笑えない。

「えーっと、眩目さんは、クローゼットや私物担当でしたね。それなら階下です。」

 俺は、伸吾さんに連れられ、一階の衣装部屋に行った。

「こっちは母の分、こっちが妻のぶ・・・あれ?」

「どうしました?」

「この衣装、白く汚れている。」

 もしや?

 俺は、バスルームに急いだ。

 バスタブが。。。ない。

 確か、現場のバスタブは・・・。

「北別府さんのオウチは、埋め込み型でなく、西洋式のバスタブ、『置き型(フリースタンディング)タイプ』だったんですね。大胆な方法だなあ。」

 俺は、先輩に連絡するより先に、蘭子に報告した。

「詰まり、自宅が第一現場ということか。でかした。今夜・・・。もしもし、それでなあ。アポローンの天野さんから連絡があった。この事件の状況に似た企画を持ち込んだ奴がいるそうだ。今、酒井にモンタージュ作らせに行かせた。」

「つまり、ホシ候補?」

 俺は、壁や天井をざっくり点検した後、2階に上がった。

 先輩は、春江さんのPCを点検後、吟子さんのPCをチェックしていた。

 取り敢えず、下の様子と、蘭子の連絡を報告した。

「成程な。春江さんのタブレットはメールくらいしかなかった。吟子さんの方はハッキングされていた。北別府さん、専門家に詳しいことを調べさせたいのですが・・・。」

「どうぞどうぞ、お持ちください。」


 午後4時。クルマの中。

 先輩は、村松とも情報共有した。

「花田さんは・・・怪しいです。」

「勘か。」

「はい。」

 ドラマなら、『馬鹿野郎』って叱責を受けるところだが、先輩も蘭子もそんなことはしない。当たることの方が多いからだ。

「どこで、勘づいた?」

「隣家の事情に詳しすぎるから。眩目先輩。西洋式のバスタブ、なんですよね。」

「うん。第一現場・・・ん?」


 先輩は、伸吾さんに『現場検証』を鑑識にさせて欲しい、と依頼した。

「了解しました。今夜はホテルに泊まります。隅々までお調べ下さい。」

 快く引き受けてくれた。

 当然だろう、ホシでも無い限り、妻と母を殺したかも知れない現場だ。

 そして、蘭子と電話で打ち合せをした。


 翌日。捜査一課。第二応接室。

 井関が報告した。

「あの家が、第一現場であることは間違いない。眩目くんが見付けた衣類には、件のヤクの跡があった、浴室にもだ。ホシは、いや、ホシ達は、遺体ごとバスタブを運んだ。シートを被せれば、軽トラでも可能だ。お湯、というか水は、ポリタンク1個あればいい。」

「あの服は、春江さんのお気に入りだったそうです。」と、俺は報告した。

「その服は、職場で制服に着替える前に何度も目撃されています。」と、餅屋係長が言った。

「吟子さんの会社の方ですが、作家さんに付随する、所謂『編集さん』ではなく、事務職だそうです。そして、所謂『お局様』だったらしい。評判よくないですね。威張っている割りには、定時に帰るらしいし。」と、辻さんは報告した。

「先ず、吟子さんのPCですが、ハッキングされていました。会社の『二重帳簿』は筒抜けですね。そして、吟子さんが『妓人会』に入会していたこともばれています。そして、アポローンに企画を持ち込んだ青年のモンタージュが出来ました。」と、倉田課長が報告した。

「天野社長の所に行った青年と『妓人会』は関係があるかも知れないな。神道、何か情報は?」と、蘭子は神道課長に尋ねた。

「NPO法人伝統芸能振興会という組織がある。実態は半グレだ。最近は、闇サイトを通じて『妓人会』の募集をしていた。『妓人会』の実態は、要は『変態セッ〇ス』の会だ。ここから芋づるになるかも知れない。今、別件でパクリに行かせている。」

「それと、、村松の報告では、澤田さんは普通の奥さんだが、北別府家の隣家の花田さんは普通の奥さんではないようだ。隣家なら、バスタブを搬送するのを目撃していて、不思議はない。今、奥さんと言ったが、未亡人だ。」と、蘭子が言った。

「課長。私からも報告が。」と言って、皇係長が立った。

「中小の出版社が隣国に乗っ取られたケースがありました。吟子さんの会社は狙われていたのでは?」


 午後1時。

 NPO法人伝統芸能振興会から、被疑者が出て来た。


 午後3時半。捜査一課横の大会議室。『バスタブ死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、倉田課長、酒井優香、餅屋係長、皇係長、大仏課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 神道課長、倉田課長、酒井優香、餅屋係長、皇係長、大仏課長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、花田光代、NPO法人伝統芸能振興会の磯谷真之介、大北栄太、最上俊哉、睦美六郎。計画犯は、花田。以前から北別府家を破滅させようとしていた。自分が入会した『妓人会』に、吟子さんと春江さんを入会させ、我流AVを作成した。これに関わったのが、睦美だ。お遊びだと言い聞かせ、吟子さんと春江さんを『愛し合う姑と嫁』としてドラマ撮影したが、これは、出版社を乗っ取る為の『強請りのネタ』だった。奸計に気づいた2人は、こともあろうに花田に相談した。花田は殺害を計画した。北別府が出張中に、NPO法人伝統芸能振興会に協力させて。ドリンク剤を『妙なドラマを作ろうとしたお詫び』として提供。朦朧とした2人を浴室で殺害、お互いの胸を突いている格好にして、バスタブ毎夜中に搬送。翌日、花田は発見者の一人になりすませた。ヤクの入手経路は捜査中。ハッキングしたいたURLは、もう存在しない。。北別府さんには、村松から報せてくれ。」

「了解しました。」

「解散。」


 午後6時半。眩目家。

「天野さんは、企画を一蹴したそうだ。レ〇ものは、キャスティングも難しく、売れないそうだ。やはり、男女カップルでないとな。」と、もう衣類を脱ぎ始めた。

「夕食は?」

「お預け。」

「ワン!」

 とほほ。

 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 大仏(おさらぎ)俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。

 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。


 ※題材はありません。全てフィクションです。

 クライングフリーマン


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