↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
237/297

236.落ちた政治家

「いえ、第一発見者は、この子です。甥の多部伸吾。」

「荷台から血が垂れてるから変だな、と思ったんです。」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ====================

 午前11時。ある市道沿い。

 朝イチは、曇り空だった。

 三田村造園の多部五郎と吉名誠一は、市役所から委託された剪定を行っていた。

 雨が激しくなった頃、荷台に葉っぱを載せ、事務所に一旦帰った。

 昼過ぎ、食事を取っていると、近所の男の子が通りがかり、事務所のチャイムを押した。

「おじさん。荷台から血が出ているよ。」

「そんな馬鹿な。」

 シートを捲った。

 男の子の言う通りだった。


 多部は、110番通報をし、吉名は社長に連絡した。

 30分後。機捜と鑑識が到着した。

 雨は、止みかけていた。

「110番通報をしてくれたのは、多部さん。第一発見者ですね。」

「いえ、第一発見者は、この子です。甥の多部伸吾。」

「荷台から血が垂れてるから変だな、と思ったんです。」

「そうか。ありがとう。現場で葉っぱを積んだ時は異常無かったんですね?」

「ええ。この2tトラックで満杯だし、先に乗ってた・・・そうか。刑事さん。踏切ですよ。」

「踏切?」

「上り線で人身事故があったらしくて、ずっと渋滞。ウチのクルマは先頭だし、身動き取れない。40分位だったかな。やっと、遮断機が上がって。」

「詰まり、後続車が来る迄の間に放り込まれたんですね?」

「赤井、無理ないよ。ゴミ袋に包んでるのを放り込んだんだ。後続車が近づいて来たとき、ホシは、何か合図するポーズでもすれば、多部さん達の仲間だと思う。スーツでも着ていれば不審に思うだろうが、多部さん達と同じような格好じゃ分からない。雨だし。」

「済みません。俺がちゃんとシートを括っていれば、雨で気が急いて。」

「おじさん達は悪くないよ、悪いのは犯人。だよね、刑事さん。」

「その通りだ。おじさん達は確認だけで、捜査は違う担当だけど、ちゃんと捕まえて、って言っとくから、えっと、伸吾くん。」

「はい。よろしくお願いいたします。」

 赤井警部補は苦笑した。


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『トラック死体遺棄事件』本部。

 溝内課長がいる。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、先日来、行方が分からなくなっていた大川兵庫。違憲大連合の元代表だ。元・・・で良かったかな?とにかく、2つの政党が合併して新政党を立ち上げたものの、打算を許さなかった有権者の票が消え、他の党に票を取られて惨敗。責任を問われていたが、若手議員を中心に離党。党首1人の党になってしまった。夏期休暇を取っていた筈が、帰って来ない。事務所職員と家族が失踪届を出した。その矢先の事件だ。井関さん。死因は?」

「恐らく果物ナイフ。浅いが三箇所。アルコール反応があるから、酔わせてから殺害。あ、拘束バンドの跡もありましたね。」

「大曲達は、大川家へ。辻さん達は、事務所へ。関口係長のチームを、離党した議員の聞き取りに回します。」


 午後2時半。クルマの中。

 運転している横で、大曲先輩は言った。

「金、だな。怨恨じゃない。政党交付金の会計してたのは、大川だ。国会で派手なパフォーマンスしていたが、証拠のない週刊誌ネタばかりで、国民にも党員にも嫌われていた。離党した連中は、『分け前』貰う筈だったが、まだ精算していない内にドロン。村松。口コミ担当な。」

「了解です。」


 午後3時。大川家。

 母親の大川静子は、ヒステリックに「なんで、なんで・・・。」と、言い始めた。

 先輩は、例によって『逆恨み』説で宥めた。

「そう・・・ですよね。取り乱して、済みません。」

「いえいえ。お気持ちは、よく分かりますよ。それで・・・。」

「息子の書斎は、こちらです。アルバム要るんでしたね。葉書ホルダーは何故?」

「名刺ケースだと、頻繁でない人の分が多いですよね。葉書ホルダーだったら、息子さんが親しくしていたお友達のデータがありますよね。」

「ああ、成程。」

 クローゼットを確認の上、アルバムを見せて貰った。

「この人と、この人と、この人。雨宮さんは、お年始に来られたわ。」

「他の方は、学校時代のお友達ですね?」

「ええ。よく遊びに来られたけど、息子が政治家になってから疎遠になってしまって。」

「成程。」

 大曲先輩が呼ぶので行ってみると、先輩は静子さんに尋ねた。

「お母様、室井華子さんって、ご存じですか?」

「小学校の同級生です。」

 俺が持っていたアルバムを受け取ると、指さした。

「この人です。」

 俺は、葉書ホルダーを確認した。

「あ。今年のはないけど、一昨年年賀状を送ってくれていますね。」

「その人が、失踪直前に会った人です。」


 午後4時。クルマの中。

「家から少し離れた所でクルマを降りた女性を数回見た人がいました。」

「それが、この室井華子さんかな?」

「そうです。大川さんが、静子さんって言っていたそうです。」

 その時、蘭子から俺のスマホに連絡が入った。

 俺は運転しているので、村松が出て、スピーカーをオンにした。

「進展があった。大川氏の名刺を持った女性が、目黒川で発見された。遺体だ。」

 午後5時。捜査一課。第二応接室。

「遺体は、有坂千尋。茫茫テレビのアナウンサーだ。反総理派で、悪口ばかり言っている。大曲が言っていた、室井静子氏とは、別人だ。」と、蘭子が言った。

「有坂氏は、大川氏の政党の同期の雨宮氏の愛人です。遺体確認は、雨宮氏がしたそうです。」と、関口係長が言った。

「雨宮氏は、離党してすぐ政党本気ですを立ち上げています。遊説に出発する直前でした。」

「雨宮氏は、大川氏の死に関しては?」と、蘭子が関口係長に問いただした。

「喧嘩別れしてしまったので、落ち着いたら遺族に連絡する積りだったそうです。」

「大川氏のPCは、サイバー犯罪対策課に一応チェックして貰っている。後は明日にしよう。」


 翌日。午前10時。捜査一課横。第二応接室。

 倉田課長が報告した。

「大曲くんの勘はやはり正しかった。大川氏のPCは、何度もハッキングされています。隣国に。メールは、室井さんだけでなく、反総理派としての指示も直接メールでやりとりしていました。」

「詰まり、指示通り動いているかどうか監視されていたんですね。じゃ室井さんと親しい事も筒抜けだった訳だ。」と、大曲先輩は言った。

「狙われるな。拷問で吐かなかった何かが存在し、大川が殺され遺棄された、となると。」と、神道課長が言った。

 大川さんの葉書ホルダーの、古い葉書に、『電話番号変わったから』と書いてありました。」と、村松が言った。

「電話してみたら、留守番電話でした。留守番電話センターでなく、本人かと思われる声でした。」

「それで、管理官からケータイキャリアの会社に通話記録を提出するよう、要請した。何か掴めるといいが。」と、蘭子は言った。


 午前11時。捜査一課。蘭子のデスク。

 志摩管理官が、蘭子に差し出したのは通話記録だった。

「熱海の旅館の番号があったから、問い合わせたら、本人は、ずっと宿泊しているらしい。外出しないように伝言して、所轄に動いて貰った。それと、神道課長が、半グレに雨宮が借金していることを突き止め、ガサ入れに向かった。」


 午後3時半。。捜査一課横の大会議室。『トラック死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、関口係長、皇係長、神道課長、倉田課長、溝内課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 関口係長、皇係長、神道課長、倉田課長、溝内課長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「大川コロシのホシは、雨宮晴喜、有坂千尋、半グレの仲川照会の大石徹、村崎喜助。仲間割れして、有坂は殺害された。彼らが躍起になっていたのは、党の裏帳簿だけではない。隣国の組織の人間の名前が入ったデータだ。カマをかけたら、ゲロした。そのデータは、熱海に逃避していた、室井さんのコンパクトから出て来たSDだ。大川氏の実家には、村松が報せてくれ。記者会見では、捜査中、としておく。半グレは『痛い腹』が多いだろうしな。」


 午後7時。眩目家。

「人間、死んだらホトケさん、かな。」

「何、悟ったようなことを言ってる。室井さんは、葬儀の手伝いを申し出たそうだ。」

「いい友達だね。」

「違う。いい元カノだ。政治家になるとき、別れたそうだ。」

 そう言いながら、1枚ずつ、俺は脱がされた。

「いい嫁だろ?」

「はい。」


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 ※題材になる事件はありません。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。